佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
脳卒中後のリハビリに関して、どのようなリハビリに取り組めばよいのか、その意味や方法についてブログでご紹介してきました。
今回は、少し視点を変えて、ダメージを受けた神経の修復に関わると言われている神経栄養因子「BDNF」について、話題提供したいと思います。
脳由来神経栄養因子「BDNF」とは
BDNFは、脳や脊髄などの中枢神経や、手足の末梢神経に作用します。
今ある神経細胞を維持したり、神経の成長を促すために必要な神経栄養因子です。
このBDNFは、脳の成長期に関わるだけではなく、成長が完了した脳内の神経や脊髄内の神経の変化に作用することがわかっています。
下の図は、脳卒中によって神経経路にダメージを受けた後、脊髄内で新たな神経経路が形成され、運動機能の自然回復を認めたというものです。
脊髄内で新しく生まれた神経回路にBDNFが関与していると報告しています。
出典:脳の障害による麻痺が自発的に回復するメカニズムを解明(大阪大学ホームページ)
BDNFの機能性
BDNFの機能性について、文献1より引用しています。
1 記憶力が向上する
2 うつ病が予防または改善される
3 糖・脂質代謝が改善する(インスリン感受性、糖尿病の改善)
4 食欲を抑制する(過食や肥満の抑制)
5 脳卒中による脳傷害、および、後遺症が低減する
6 慢性疼痛を抑制する
7 網膜を保護し、視力を増強する
8 脳卒中後の運動機能(熟練行動)の回復を促進する
脳内のBDNFが低下した場合についても、文献1より引用します。
1 記憶力が低下する
2 うつ症状を呈し、気力が低下する
3 不安(攻撃性)が増す
4 肥満、過食、メタボリックシンドロームをもたらす
5 寿命を短縮させる
6 虚血後の脳梗塞体積が増加する
BDNFは、活動量に依存されるタンパク質です。
中高度の有酸素運動によってBDNFが上昇し、認知機能が改善すると報告されています。
有酸素運動については、脳卒中治療ガイドラインで推進されているので、持久力の向上だけでなく、脳の可塑性につながる可能性も示唆されています。
脳卒中モデルの動物実験でも、中等度の有酸素運動は、多くの脳領域でBDNF、神経再生が増加するという報告があります。
脳卒中後の神経の回復について、有酸素運動で回復を促す物質が増えるという知識は、リハビリの組み立てによい影響があると思っています。
引用・参考
1) 柳本 広二 他:脳機能を高める分泌性タンパク質、脳由来神経栄養因子:BDNF. 洛和会病院医学雑誌 Vol.28:7−24, 2017
http://kintore.hosplib.info/dspace/bitstream/11665/1537/1/MJ2805.pdf
2) The Effects of Poststroke Aerobic Exercise on Neuroplasticity: A Systematic Review of Animal and Clinical Studies.
☆*:.。.最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆