佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
前回は、「字が書きにくい理由」について、関節可動域や筋力だけでは指の操作機能を考えることは難しいという点についてまとめました。
今回は、実際に相談を受けることが多い、字が書きにくい理由について、動画を用いて説明します。
動きがスムーズな書字動作
親指・人差し指・中指でペンを固定しながら、操作することが出来ている動画です。
手首の形も安定しています。
横線・はらいともにペンと手指の関係性を保てています。
人差し指が固定出来ない書字動作
動きがスムーズな書字動作と異なって、字を書き進める時に、人差し指が滑るという相談を受けます。
人差し指に麻痺由来の筋肉の強張り(痙縮)があると、動作に伴って指が曲がりすぎたり伸びすぎたりします。
また、人差し指の指先の感覚がわかりにくいと、ペンから指が滑りそうな感覚が入りにくくなり、力の無意識での調整が難しくなります。
さらに、手首の麻痺由来の筋肉の強張り(痙縮)があると、動作に伴って曲がっていて欲しい指が伸びてしまうことがあるでしょう。
親指が固定出来ない書字動作
親指は手指の麻痺の中で、影響を受けやすい指です。
バンザイ運動をする時に、無意識に親指が内側に曲がってくる方も多いでしょう。
親指でペンを固定することが難しくなると、動画のように親指と人差し指の指の横でペンを挟む形になってしまいます。
この場合、ペンをどうにか固定するだけで精一杯になり、肩や肘で代償しながら字を書くことになるでしょう。
たくさん肩や肘を使わない程度の書字動作時に、指先でのペン操作が行いにくいために、肩や肘を使わざる得なくなります。
普段よりたくさん肩や肘を使うので、動作の負担が増え、筋肉の強張りが強まることがあります。
スムーズな書字動作(小さな文字)
小さな文字を書く場合、手首は比較的固定的に働き、手指で小さく動かしながら文字を書いているのがわかると思います。
また、手指が小さく動きながらも、ペンを持つ親指・人差し指・中指の3本の位置関係は安定していますね。
横書きを例にしてますが、次々と文字を書きながら、次に書く文字の配置を考えた手自体の横移動も確認できます。
親指が固定出来ない書字動作(小さな文字)
親指でペンを固定することが難しいと、親指と人差し指の間でペンを固定する必要があります。
本来認めるべき、親指の細かい動きをつくることは出来ません。
また、手首で代償するようなぎこちない動きも認めます。
代償動作が入ると、他の手指に影響を与えるでしょう。
なんとか字を書くことが出来ても、書いた文字のバランスや形に満足できない書字動作になりやすいです。
全体をまとめて
スムーズに文字を書くための必要条件がみえてきたのではないでしょうか。
□ 親指・人差し指・中指の配置を保つ
□ 文字を書きすすめても指が滑らない
□ 代償の動きを認めない
これらの必要条件を満たすための手指や手首の機能は昨日のブログにもまとめていますが、以下が必要でしょう。
✔ 指それぞれ独立して動かすことができる
✔ 指それぞれ目的に合わせて協力し合える
✔ 物の感触や圧迫する感じや滑り落ちそうな感じを指で感じ取れる
✔ 指が自由に働くために、手首や手のひらが役割を果たせる
□ 手指・手のひら・手関節の痙縮(筋のこわばり)のコントロール
□ 手指・手のひら・手関節の不随意運動(知らずに動いてしまうこと)のコントロール
□ 脳卒中後の手指や手関節・肘や肩に出現しやすい動きのパターンのコントロール
□ 手指や手首が必要に応じた力を発揮することができる
したがって、字が書きにくい理由には、痙縮のコントロールや不随意運動のコントロールが難しいことが根底にあるでしょう。
また、麻痺した時に出現しやすい手や肩などのパターンのコントロールや、手指などの力の入れ具合の調整が難しいことも、字が書きにくい理由の根底に存在しているでしょう。
字が書きにくいというお困りの相談を受けた時、動作を観察して原因を見極めて、痙縮のコントロールや力の入れ具合に対するリハビリテーションを行なっていきます。
具体的な内容については、後日まとめる予定です。
☆*:.。. 最後まで読んでいただきありがとうございました .。.:*☆