生え方の特徴（ステロイド注射編）

こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。

円形脱毛症は同じ場所が同じような形状に抜けてしまうという抜け方のパターンもある一方で、

治療法による生え方のパターンと云うものもあるように思えます。

本日の記事は治療法の中でも病院でおこなうステロイド注射によって生えてきた産毛の特徴に焦点を当ててみます。

まず基礎知識としてステロイド局所注射で使用するステロイドは『ケナコルト』というお薬です。

このケナコルトは注射した場所に基本的に留まりますので、注射した場所で効果を発揮する仕組みです。病院でステロイド注射をした後は「頭皮を揉まないでください」と指導をされた方も多いと思います。揉んでしまうとケナコルトが注射をした場所から分散してしまい狙い通りの効果を発揮できない為と思われます。

この局所に留まるというのがケナコルト注射で生えてきた産毛たちの様子に明確に現れます。

では早速ケナコルトで生えてきた脱毛部の様子を見てみたいと思います。

場所は左のオデコです。画像に黄色い丸を付けましたがおそらくここにケナコルトが注射されたものだと思います。注射をしたであろう黄色丸の部分のみ産毛が集中して生えているのが特徴と言えます。通常の自力で生えてくる場合も産毛が集中して生えてくる場合もありますが、上記の画像の様に濃い産毛群が狭い範囲内で一気に乱立するようなことは稀です。どちらかと言えば脱毛部の外縁からジワジワと脱毛部中心へ向かって触手が伸びる様に生えだすか、丸い形状の物であれば脱毛部の中心に産毛群が生えだして結果としてドーナツ状の脱毛部を形成しながら生えて来ることが多いと思います。産毛の濃さも産毛群の根元が濃くあり、産毛群の伸びていく先端に向かってグラデーションを描くように薄く（毛が細い＆短い）状態が通常です。

ケナコルト注射をした部分には薬剤が２～３週間程度残留するようです。その間、ケナコルトの粒子が溶け出しながら毛包に対して効果を発揮する訳です。効果を発揮している部分は周囲の産毛に比べていきなり黒い髪が生えていることもあります。ケナコルトはアンプルの中に粒状に存在しています（詳しく記載されている美容外科のサイトがあるのですがリンクしてよいかどうかわからなかったので検索してみて下さい）。

では注射した部位は必ず発毛するかと言えばそうとも言えないようです。

この画像をご覧ください。

この頭皮の方は病院にてケナコルト注射を受けておられました。黄色丸の部分は産毛群です。想像ではありますがこの部位に注射した医師はおそらく等間隔に近い感じで注射していたのではないかと思われます。そうなると赤丸を付けた部分にも注射をしていたであろうことが予想されますが産毛が黄色丸の様に生えていません。この現象は同じ脱毛部であっても病状の強さが部位により異なるので反応の違いではないかと思われます。黄色丸のところは比較的軽く、赤丸の部分はそれに比べて重いと予想されます。

一方で注射で生えてきた髪はこれもまた症状の強さによるのだと思うのですが治療を中止してしまうと抜けてしまう事も多く観察されます。下の画像は４か月ぶりにご来院いただいた方の頭皮の変化です。左側の画像はご来院いただいていた時の画像です。同時にケナコルト注射を皮膚科で受診されていました。その後４か月程度ご来院が無く、次にお越しに成られた時の画像が右側の物です。

画像の説明として水色丸は注射で生えて来ていたと思われる産毛群です。一方で黄色丸はケナコルト注射開始以前から生えていた産毛です。４か月間注射をお休みされていた後（当院での鍼灸施術もしていません）注射で生えて来ていたと思われる部分の髪が抜けてしまっています。一方で黄色丸の自力で生えていた産毛は少しですが増えているようです。実際の状況としてはこの方は全頭型脱毛で髪のある部分はごく一部に限られていました。注射によってその他の部位も注射継続中は水色丸の様な感じで産毛が生えていたのですが最終的には自力部分を残して抜けてしまいました。

この現象からこの方の場合はケナコルトによる発毛は化学的な強制力で髪を生やせていたと思われます。

そしてこのケナコルト、円形脱毛症以外でも使用されています。特に円形脱毛症に関連深く興味深いのは瘢痕の治療です。

瘢痕（はんこん）とは傷跡の事です。よく大きなケガをしたり手術をした場合、傷跡や縫い目が身体に刻まれることがあります。その傷と糸の痕は身体の傷を閉じるために増殖した線維芽細胞と云うものなのですが、増殖した結果盛り上がってしまいます。これを改善するためにケナコルトが使用されています。ケナコルトは細胞を萎縮させる作用があります。故に膨張した瘢痕組織にケナコルトを注射することで細胞を萎縮させ盛り上がった瘢痕の厚みを減らすことができるのです。

それ故に円形脱毛症の治療においてケナコルト注射をした頭皮が凹む事例も多くあります。

この凹む現象は外見上で見分ける事はやや難しく、実際に触ってみて感じられる状態です。凹んだ場所は周囲の部分と比べて「ふにゃ」「へにゃ」としています。まるで頭蓋骨が少しだけ陥没しているような感覚です。時間経過で凹みかたはマシになるようですが完全に消えるという説明は医師から聞くことはできないようです。とは言え実際に脱毛部に髪が生えて通常に戻るとご本人もほぼほぼ気にならない・忘れてしまう状態となるようです。

実際に注射後触ると陥没したように感じられる脱毛部の画像はこちらです。