『パンとスープとネコ日和』 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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『パンとスープとネコ日和』(著/群ようこ)

名前はよく拝見するのだが、群さんの作品を読むのはこれが初めて。

もっと言えばずっと「ぐんようこ」さんだと思っていた(;'∀')

失礼、「むれ」さんと読むのですね、ギリギリ恥かく前に知れたわ~。

 

お名前も曖昧だったくらいだから作品についても知識があまりなくて、エッセイが主軸の方だと思い込んで著作を自ら読もうとすることはなかった。

図書館の棚を眺めていた時、並んだタイトルを見て「エッセイだけではなく小説もけっこう書かれてる」 ということにようやく気が付いて借りてきたのが本作。

最近ミステリーばかり読んでいて違うジャンルも読まなくてはと考えていたところだったのので良いタイミングだったのかも。

(もう一つの私が選びがちジャンル『飲食店関係』の作品ではあるが)

 

五十路にして転職しカフェの経営に挑むアキコが主人公。

過酷だけど遣り甲斐を感じて現場で仕事を頑張って来たのに、急に経理部へ人事異動されてしまう。

年齢的にも現場には戻れないと悟ったアキコは、母の残した食堂を自分のやりたい店にリノベーションし、新たにサンドイッチとスープの店として再出発するのだった。

しまちゃんという頼もしいパートナー(アルバイトさん)を得て順調なスタートを切った、かのように見えたのだが、経営はスムーズでも口を挟んでくる人は多いようで、その度にアキコの心は乱される。

飲食業経験者の私としては、外野の声で上手くいってる経営方針をブラつかせるなんて勿体ない!今の飲食店は『差別化』が大事なのだがらコアなファン向けの食堂だっていいんですよ、とアドバイスしたくなる。

まあ、それくらいアキコが真面目で普通の人の感覚を持ってるということなのだろうけど。

 

自分と同世代が主人公なのだが、読んでいるともっと若い人の日常のように錯覚してしまう。

けれど今時の五十路ってこんなものかももしれない。

人生の道半ばで残された年数はまだまだこれからなのに、いろんなことが削られはじめて寂しかったり空しかったり。

そのくせ経験値もそこそこあるから能天気にもなれず、他人の眼や失敗を恐れて及び腰になってしまって。

そんなアキコの奮闘ぶりと迷いが詰まっている。

同年代の私も彼女に負けずに真面目に真摯に生きなければ、と気持ちを引き締められた。