『食堂のおばちゃん』 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

『食堂のおばちゃん』(著/山口恵似子)

筆者の存在を知ったのは松本清張賞を受賞したときだ。

昨今マスコミで話題になる文学賞は芥川賞・直木賞、そして本屋大賞くらいである。

文豪の名を冠している文学賞ではあるが、松本清張賞はイマイチ注目度が低い。

しかし彼女が写真食堂に勤務しながら執筆活動をした作品、ということで受賞した際にちょっと話題になったのだ。

だが、彼女への注目度はそれだけで終わらなかった。

私の記憶が確かなら、彼女は受賞の賞金を全て飲み食い(職場の人に奢ったり同窓会を開いたり)して消費してしまったのだ。

まさに、宵越しのかねは持たない気風の良さ!

なんと格好の良いおばちゃん(失礼)なのだろうと鮮明に私の記憶に刻まれた。

 

それから十数年後、コロナ禍以降習慣になった図書館通いでこの本と出合う。

タイトルを読んで「まんまやんけ」と心の中で突っ込んだのは私だけではあるまい。

ちゃんと読んだことはないものの、山口さんのイメージがサスペンス作家だったのでこの牧歌的なタイトルには驚いた。

読んでみればタイトルの予想通りに食堂人情物語・・、いや食堂日常物語だ。

それぞれの生活と事情を持つ人たちが、実家の居間で食事をするようにこの食堂に集う。

ただし登場する食堂のおばちゃんもおばあちゃんも、ドラマに出てくるような型どおりのおばちゃんではなく、今を生きる瑞々しさを滲ませるおばちゃん達なのである。

主人公の二三(ふみ)は私と同世代。今時の五十路はこのくらい若さがあって同然だ。ドラマや人情小説に出てくるおばちゃんたちみたいに達観していない。

自分と縁遠くなっても恋愛の感覚は覚えているし、お客の内情が気になってもしまう。

だからこそ、今を生きている息吹を感じるしおばちゃんの言葉に真実味が生まれるのだ。

 

またこの本には沢山の食堂レシピが出てくる。

それが全てさりげない料理で確実に美味しいことが分かる。

食卓に定番の物から少しの創意工夫を加えたものまで。

さすが本職、料理のリアルさは説得力が違う(経費の問題含めて)

この食堂が地元の商店街に欲しい!と日本人の9割は願うだろう。

 

おまけとして巻末に人気の高かったメニューのレシピが掲載されている。

作ってみたいとは思ったが、想定外に10人前も出来てしまったら怖いので未だ手を付けてない(理由はレシピの最後に書かれてます)

 

調べてみたらこの『食堂のおばちゃん』はシリーズ化しており11作続いており、さらに『婚活食堂』シリーズなるものまであった。

ぼちぼちと読み進めていけば料理のセンスは上がるだろうか、と無茶な期待を抱いてみる(^▽^;)