注意1
以下の文面はフィクションです。
実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。
似てる人が居ても、それは偶然の産物です。
妄想と現実を混同しないように気をつけましょう。
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なんとか車のバッテリーも直り、地元に戻って車も片付け、ようやく腰を落ち着けれたのは雄輔とっておきの居酒屋に入ってからだった。
乾杯までは付き合ってくれたけど、そのあとはノンアルコールのドリンクに切り替えてしまうあいつ。
今更そんなことは気にしないけど、珍しく一気にジョッキを呷ったとき、露わになった喉元がビールが通り過ぎるたびに綺麗に上下する、その様子が妙に目に焼き付いてしまっていた。
沁み込むって感じがするよね。
半分以上を飲み干して一息入れて爽快感丸出しで笑っていたけど、なんだかちょっと落ち着かない。
弟分な彼には勝手に自分よりも幼いってイメージを押し付けていたので、妙に男っぽい仕草を見せられるとその成長に驚いてしまう。
お互いにいい年なんだから当たり前だろ、って笑われそうな話なんだけど。
「雄ちゃん?」
ノースリーブから覗く彼の逞しい肩のライン。
店に入って上着代わりのシャツを脱いでから、逞しくなった(ごつくなった?)体型が強調されてるみたいで・・・。
相変わらずストイックに身体を鍛えていることがよく分かる、綺麗な体つきだった。
「ねえ、何ボーってしてんの?それとももう酔っちゃった?」
と、なぜか額に手を当てられる。
それ、熱を測るときにすることで、酔っているかどうかは分からないと思うんですが。
「こんぐれーじゃ酔っぱらわないよ。それよりノックのほうが足りてないんじゃないの?
中途半端に呑むのって物足りなくなんない??」
ああ、と小さく直樹が笑った。
ちょっとすました、わざと大人っぽく見せる笑い方。
これは何か小難しく言ってくるぞ、と身構えたときだった。
「俺のビールは雄ちゃんだから。だからもう、充分に酔ってるよ・・・?」
目元に堪え切れなくなった甘い笑みを浮かべて、すぐさま顔を背けられた。
彼の言いたいこと、が、即座に理解できない。意味していることが判明しない。
だけど何故だろう、大して飲んでもない直樹の頬が、ほんのりと紅らいでいるのは。
「もう、ほら!のんびりしてるからせっかく頼んだものが冷めちゃうよっ。
温かいうちに食べないともったいないじゃん!」
急に叱られる勢いで、豚の角煮の皿をぐいっと押し寄せられた。
それが照れ隠しだなんて、雄輔は露ほども気が付かなった。
いつもの世話好きの直樹のすることだと、そんな風にしか受け止めれなかった。
なのに。
ふいに頭に蘇った、昼間手にしたラムネの澄んだ香り。
なんだかとても懐かしい顔をして直樹が見ていたのは、あの時のラムネじゃなくて、俺のこと・・・?
「これ、全部食べちゃっていいの?」
「俺はもう肉はいいや。こっちの食べてるから」
「ったく、男だったらタンパク質をしっかり採れよぉ」
「雄ちゃんに栄養のことを言われたらお終いだ~~」
クスクスと笑いながらの直樹の発言に、俺だってそれくらい気を付けてるよ、と雄輔が言い返した。
丁々発止のリズムで繰り返される会話は、下らない話を大声で笑いあえるいつもの二人のものだった。
まだ早い。
酔いに流されるのも、懐かしさに捕らわれるのも。
今はまだその時じゃない。
雄輔が店員に向かって、おかわり!とビールのジョッキを掲げた。
それだけで直樹は高音の笑い声をあげて喜んでいる。
何が楽しいのか何が嬉しいのか、よく分からなかったあの頃と同じように。
彼が笑顔で居てくれればそれで充分だった、あの頃に気持ちを戻すように。
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いつの間にか参加者が増えていた『ビールとラムネ』のお題シリーズ。
直Verと雄Vreを書いてくれたM姉さん、ちょっと亜流にアレンジしてくれたRーん♪さん。
ありがとうございました。
また皆様にお題を振って楽しいたいと思います!
ではみなさま、素敵なフライデーナイトをお過ごし下いまし~ヾ(@^▽^@)ノ