『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』42 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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奪われた雄輔のパネル、太陽光エネルギー転換利用のシステムの造り直しは、予期していたよりも早期に終了した。

一度は作り上げたシステムだ、ノウハウが残っている同じものを作るだけなら問題はない。

ただ、システムの表面に加工されていた鏡盤と同等位の物が手に入らない、という別の問題が持ち上がった。


「実はあれは元々ここで開発されたパーツじゃなかったんだ」


別室チームの作業に加わっていた石井が、困り果てた様子でそう切り出した。


「太陽光というか、エネルギー集積能力に長けたクリスタル盤のようなものだったんだがね、別の場所で開発されたものを譲り受けたシロモノだったんだ。

我々は盤の持つ特性を生かして、バトルスーツに応用できるパネルに仕上げたに過ぎない。

太陽光の力を増幅させて機動力に変える、というシステムは我々が開発したものだが、効率良くエネルギーを集めるというのは、あの盤自体が持っていた要素なんだ」

「・・・、つまり、分かりやすく言うと?」

「同じ技術を応用して同じ物を作っても、初代のパネルよりも性能が落ちる、ということになる」


だいたいの答えを予測したいた雄輔だったが、それでも石井の言葉には肩を落とさずにはいられなかった。

剛士ほど戦闘センスに長けているわけではない雄輔は、意気込む気力とそれに比例して湧いてくるパワーで窮地をムリクリ乗り越えてきた。

この『火事場の馬鹿力』的なものが使えなくなる、というのは雄輔には痛手の話なのだ。


「出来るだけ初代と同じパワーが引き出せるように、これからも分室チームと研究所の博士たちで協力して改良してもらうから、あまり気落ちするなよ」


雄輔を励ましながら、品川はコトはそんな単純なことじゃないぞ、と気が付き始めていた。

先に奪われたリアンの勾玉。狙いを定めて持っていかれた雄輔のパネル。

これは共にとんでもない力を秘めたシロモノであったが、公にしてから奴らが奪取を仕掛けるまでの時間は異様に短い。

パワーの源が何であるか、予め知っていたかのような早さだ。


『雄輔のパネルに関しちゃ、一回見ただけで警告を入れられたもんな』


偶然街中で雄輔とサンが出会った時にはすでに言及していたのだから、相手の解析能力は尋常じゃない。

いや、もしかしたらあいつらは最初からこの驚異的な力を知っていて、狙い通りに奪いに来たということは有り得ないか?


考えすぎかもしれないが、妙な符号があることも気になる。


テラが以前、初めて見た剛士の剣を譲れと言い寄ったことがあった。

あの時は大海と一緒に、などという言い回しだったので冷やかしの一端かと思ったが、雄輔のパネルも持っていかれたとなると強ち(あながち)冗談で言ったたことでもないだろう。

それを踏まえての話だが、サンがパネルのことを仄めかした時に『鏡のような』という比喩を使っていた。


リアンの勾玉、剛士の剣、そして雄輔の鏡。

これらを総合して見えてくるのは、神話の時代から珍重されている三種の神器って奴だ。

この形をとっているのは偶然か、それともまとめて意味があるのかそれさえも分からない。

全てが出所不明で、強力な力を発生させる性質があるってのを考えると、何かしらの含みがあるとみて間違いなさそうだが・・・。


いや、出所不明と言えば、カオスたちはどこであんな力を手に入れた?

ユエが超能力者なのが天性として、どこで戦士としての特訓を施された?

そして彼らが身に着けているバトルスーツは、誰が開発して与えたモノなんだ?

大海が捕えられたとき、奴らのアジトにはほかに人の気配はなかったというが、バックに何かしらついてなきゃ、あんなこと出来るわけない。


考え込む品川の神妙さが感染するように沈む空気の中、真っ赤な警告灯とサイレンが鳴り響いた。

緊張のままに身構えるメンバーを横目に、品川が指令台に滑り込みシステム回路をフルオープンにする。

次々と入電される指令台の動きを追いかけるように、新オペレーターの加藤綾子の声が響いた。


「緊急出動要請です!

謎の男が都市部に侵入、破壊行動に及んでいる模様。情報を総合する限り、カオスと判断して間違いなさそうです」

「画像、入るぞ!」


スクリーンに映し出された映像には靄がかかり、一見では何が起こっているのか判断しづらかった。

が、次第に晴れていく画面に、三人のシルエットが浮かび上がる。

まるで安っぽい西部劇のようだと、剛士は徐々に鮮明になる三人の姿を眺めながら皮肉を込めてそう思った。


彼らが足場としているもの。

その名にも似た混沌とした物が、今まで何と呼ばれていたのかはもう判断がつかない。

すでにそれは、瓦礫とした言いようがなかったから。


「・・・建設中の高層ビルを破壊したそうです」


躊躇が含まれた加藤の押し殺した声に、ヒヤリとしたものが背筋を辿っていった。

とうとう彼らは、公共物にまで手を出してきた。

ただ喧嘩を売られたときとは違う領域に、そのまま侵入してきたのだ。


「雄輔、崎本、行くぞ」


剛士の瞳に、熱く、そして震える輝きが宿っていた。

カオスが本気を、本性を出してきたのだと、そのまだ見ぬ脅威への覚悟を決めた瞳だった。


ピンと背筋を張ったまま進む剛士の背中を、雄輔と大海が追いかける。

それぞれに秘めた思いを胸にしまって・・・。





続く