『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』②後半 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆



どうも雄輔はあのボイスチェンジャーが気に入ったらしい。
博士たちを相手に、どーでも良いことを楽しそうに話しかけている。
その行為事態に罪はないのだが、なんだか神経を逆撫でされてる気がするのは気のせいだろうか?

「剛にぃ、眉間に皺が・・・(^^;」

直樹に注意され、渋い顔のまま眉間のあたりを解すようにさすってみる。
まったく、いい年なんだから少しは躊躇しやがれ。

「ほら、雄輔、博士たちにそれを返しな。お前のおもちゃじゃないんだからな」
「ええ~~、もう少しぃ~~しょぼん
「だから、その声で甘えるな!」

剛士がグイっと襟元を掴んだのと、基地中に緊急警報が鳴り響いたのと同時だった。

「何事だっ!」
『緊急事態発生です。イッパツヤが現れました。羞恥心のみなさんは至急出動の準備をして下さい』

崎本の緊迫した声が一斉放送で響き渡る。
それが合図であるように剛士と直樹の表情が一変し、眦の力強い光と共に顔を見合わせて頷いた。
が、しかし、雄輔だけは困惑したようなどっちつかずの表情を浮かべている。

「つーのさん・・・」
「雄輔、お遊びはここまでだ。出動態勢に入るぞ」
「それは分かってんだけど・・・、今のショックでボイスチェンジャーが虫歯に引っかかっちった☆」



・・・・。

「はぁぁぁ?、お前、何やってんだよっっ」
「だから早く歯医者さんにお行きなさいって言ってたのに・・・!」
「おらっ、口開けろ!!俺が取ってやる!!」
「いらいいらいっ、つーひゃん、むひゃひにゃいれ!!あせる
「その声で騒ぐなーーーっ」

・・・・ズンズンズン!!
バダンッ!
バシーンッ!ベシッ!パチン☆

「三人とも、なにじゃれてんですかーーーっ!
緊急事態ですよ、さっさと出動して下さい!!」

ハリセン片手に怒りのオーラを背負った崎本のご登場である。
ナルキャラを経験したサッキーは、以前よりも逞しくなったのだ。

「って、いってぇ・・・。」
「敵にやられる前にサッキーにやられちゃうよ。あせる
てか、ノクのときだけ叩き方が違う~~」

「・・・文句あるならもう一度気合入れ直して差し上げますが?」

必殺の流し眼でパンパンとハリセンを打ち鳴らすサッキーに、誰が反抗できよう。
三人は引き攣った愛想笑いのままで立ち上がり、そそくさと出撃準備に向かったのであった。



今回の敵が陣取っているのは、日比谷公園の草地広場だった。
公園内に出没と書くと牧歌的に思えるが、ちょっと引いて周りを見れば人の多い繁華街の目と鼻の先だったり皇居が近かったりと、派手な戦闘シーンを繰り広げるには何かと問題がありそうな場所を選んでくれた。

「まずはここの大音楽堂と日比谷公会堂を占拠する!そしていずれは武道館だぁ!!」

新しく加入したと思われる恰幅の良い男が豪快に息巻いた。
悪の組織が狙う場所としてはピント外れな気がするが、どこにしろ力で奪って良いわけがない。
この事態を鎮圧すべく、お馴染みの羞マッハ号に乗った羞恥心が駆け付けたのだった。

「そこまでだ、『イッパツヤ』!」
「なにやつ!!!」

轟いた声につられて振り返ったイッパツヤが見たものは、売店の建物の上に並ぶ3つの影だった。


「天が呼ぶ地が呼ぶ風が呼ぶ、悪を倒せとオレを呼ぶ」
「この世に悪がある限り、正義の心が火と燃える!」
「悪行三昧の悪者ども、これ以上お前らの好きにはさせん!」
「無敵艦隊羞恥心、只今さん・・」
「ちょっと待てい!」

自己紹介のポーズを決める直前に突っ込まれて、羞恥心のメンバーは危うく建物の屋根からズッコケ落ちしそうになった。
ただでさえ足場の悪いところでやってるんだから、定番通りにやらせてほしいもんである。

「おいこら!正義の味方が名乗ってる間は手を出してはいけないという黄金ルールを知らんのかっ」
「そんなのが良く知っとるわい!そっちが先に驚かせたのが悪いんだろーが!!」
「僕たちが?」
「そうだよっ。なんだ今日のイエローの声はっっっ。バカにしてんのか!?」

あ・・・、と思い出すような間があってから、レッドとブルーは渋々というくらいのテンポでイエローを振り返った。
引き攣った愛想笑いのイエローを一顧して、どちらともなく深いため息を漏らす。

「なによっ!その反応なくない?!プンプン

キャンキャンとイエローが叫ぶが、それすら頭痛のタネという反応だ。
結局、雄輔の奥歯に引っかかったボイスチェンジャーの回収は諦め、そのままで出撃してきたのだが、やはりあの声では気勢を削がれる。
いっそ歯医者の前で雄輔だけ置いてくるのが正解だったのだろうか?

「とりあえず、降りて戦おうっか」
「そうですね」
「もーー!なんで無視なの!!」

騒ぐイエローには介せずにレッドとブルーは軽やかに地面に飛び降りた。
対峙するイッパツヤの面々に、見慣れない男が一人増えている。
一見すると、一番悪役っぽい。

「見慣れぬ顔だな」
「ふふん、気が付いたかっ!こちらは新たに、いや、この方こそ元祖イッパツヤのケイ兄貴だっ!」

ヨシオン(小島よしお)の解説に伴って、その男がにじり寄る様に近寄ってくる。
身構えるレッドとブルーに遅れまいと、イエローも売店の屋根から慌てて飛び降りて来た。
が、慌てたのがいけなかった。
目測を若干誤って、思い切りケイの目の前に降りてしまったのだ。

「きさま・・・」

押し殺した声とサングラスに隠れた威圧的な視線に、さすがの雄輔も委縮して動けなくなってしまった。
こんな本格的に悪そうな人は初めてだ。
ふてぶてしいまでの視線を投げつけて雄輔を睨みつけてる。


やべぇ、マジガン飛ばしだ・・・。


一瞬にして相手の眼光に飲まれそうになった雄輔の手を、その男はギュっと捕まえた。

あっ、と思った瞬間に、男がズイっと雄輔に近づく。

それは射程圏内とかいうレベルの問題ではなかった。


不味いことになったと剛士と直樹が身構えた、その時だった。


「キミ!良い声してるね!!音楽とか歌とかに興味はないかな?」


喰いつくような勢いで、イッパツヤ・ケイがさらにギュっと顔を寄せてきた。

・・・きらきらの笑顔を浮かべて。


「え?歌は好きだけど、カラオケとかそんなレベル・・・」

「好きならそれでじゅーぶん!どうだ、おじさんと一緒に歌の世界で羽ばたいてみないか?

君のその声さえあれば、水樹奈々や初音ミクだって恐くないぞ。

目指すは日本レコード大賞だっっっ!!」


目標ラインが確実に昭和です。という突込みはお断りします☆

雄輔のチェンジした声に無限の可能性を見出してしまったのか、ケイは溌剌とした笑顔のままで雄輔の肩を抱いて明日の目標に向かっていた。

雄輔の意向なんて全く無視で。


「ちょっ、オレは世界を守るヒーローの仕事が・・・!

つ・・・、レッドからもなんか言ってやってよ!!」
「お前の歌声で悪人が改心するなら安いもんだろ?

戦って力づくで言うこと聞かすより、よっぽど平和的解決方法だ」

「すごい、ゆうち・・・、イエローの歌声が世界を救うんだね!!」


完全に、レッドもブルーもイエローを身売りする体(てい)で話している。

それどころかケイとしっかり握手して、イエローを頼みますとか言ってやがる。


「こらっ!勝手に人の未来を決めるんじゃない!!」

「達者でな。デビューが決まったら教えるんだぞ」

「そこらへんはおじさんに任せておきなさい。似合いの可愛い曲を書いてあげるからね」


そうして気分ノリノリのケイに引き摺られて、雄輔は無理やりに連れて行かれてしまったのだった。

残りのイッパツヤも、リーダーのケイが退却するなら撤退せざるを得ない。

こうして、日比谷公園の平和は取り戻されたのであった。


「これにて、一件落着、ですね♪」

「おう、たまには雄輔のイタズラが役に立つもんだな」


呑気に話しながら、二人も羞マッハ号で基地に戻って行った。





数日後。

ケイの特訓に耐え切れず、雄輔が基地まで逃げ帰って来たのはまた別のお話☆




続く(次回は来週の水曜です)