本作はフィクションです。
実在する人物・団体・法人等とは一切関係ありません。
すべて妄想の産物と理解してお読みください。
・・・・、なにげにBLです。
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「雄ちゃん・・・」
一人きり残された部屋で、直樹は小さく膝を抱えて泣き続けていた。
どこにこんなに涙があるのだろうかと疑うくらい、壊れた涙腺から涙が零れる。
泣きすぎて脱水症状、なんてことも起こりそうなくらい、涙が後から後から溢れてきた。
知りたくなかった、気が付きたくなかった。
こんなにも雄輔のことを想っていたなんて。
傷付くだけだから、虚しくなるだけだから、いくら心を許せる相手でもノーマルな人はその枠から外して接していた。
友達は友達、想い人は想い人。
そうやって区切りをつけていたはずだった。
・・・・、いや、違う。
そうやって区別をしていたつもりで安心していたのだ。
自分は雄輔には絶対に恋心を抱かない、だからいくら気安くしても平気だ、と。
人の感情が、そんなに簡単に割り切れるものではないのに。
彼の微笑みは勇気だった、彼の声は励みだった。
そっとくれる温もりに、どれだけ救われたか数えたらきりがない。
そうやって無意識に与えてくれるものだけで満足していたはずなのに・・・。
『ノック♪(*^-^*)』
胸が、押しつぶされそうだよ、雄ちゃん。
こんなにこんなに辛いのに、苦しいのに、雄ちゃんのことしか考えらんないよ。
ボクなんかが、雄ちゃんを想って良いはずがないのに・・・。
もしも、と思う。
もし自分が女の子だったら、雄輔は振り向いてくれただろうか?
決して直樹は性同一性症候群の人たちのように、自分の性別に違和感を感じているわけではない。
男性に生まれたことに、なんら不服は感じてない。
だけど、初めて思う。
女の子に生まれていたら、真正面から彼に想いをぶつけられたのに、と。
次に生まれ変わって女の子になれたら、雄ちゃんはおまじないじゃなくて本気で抱き締めてくれるかな。
肩に背中に胸に、雄輔が抱き締めてくれた最後の温もりが残っている。
忘れたくないと思った。
だとえ誰にこの身を委ねることになったとしても、誰かの手に落ちる事があったとしても、
この温もりだけは身体に心に刻み付けて、決して無くしたくはないと、そう思った。
続く。