『はじめての・・・』21 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

逢海司の「明日に向かって撃て!」

ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

季節遅れの夏風邪が治っても、頭沸騰中で~~す♪

イカレタ話を書いてますが、秋の夜長の幻と笑って許して頂ければ幸い。


いや、笑って許してくれ・・・。

石を投げつけたりカミソリを送ったりしないでくれ・・・。


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ナオのことを思ってと距離を置いていたつもりだったが、それでは逆効果だったのか。

容赦なくズイに突っ込まれたおかげで、ショウも待ちの姿勢を変えなくてはと考え改めていた。


意味ありげな雰囲気を醸し出しながら黙って相手が動くのを待っているだけでは、第三者から臆病風に吹かれたと言われても仕方ない。

傷付く覚悟も傷付ける覚悟も出来ていたはずなのに、いざとなると平和な手段に傾いてしまう。

それでは彼女の頑なな心を開けるはずが無いことなど、とっくに分かっていたはずなのに。


「悪いけど、あとでちょっと時間を作ってくれる?」


率直にそう伝えると、ナオは一瞬何のことだか分からないように目をぱちくりとさせ、それから思い当たる事が多過ぎて混乱しかけた感情を抑えて、今日ならいつでも大丈夫、と愛想笑いで返事をくれた。

大丈夫じゃない、今日は午後から外勤が入っているだろう。

余計な事を言うとさらにナオが動揺するだけなので、昼休みを開けてもらう約束を取り付けた。


その昼休み、せっかくだからと連れ立って外に出た。

こうして二人きりになるのは、あの夜以来である。

会社から少し離れた店を選んだのは、余計な人間に見付かると後の説明が面倒だからだ。


注文を済ませ、軽く午前の仕事の進行状況を話したりしていたが、ナオは本題がいつ始まるのかと構えた固い表情のままだ。

気分がその通りに顔に出てしまう。分かりやすい反面、難しい相手でもあった。


「イギリス行きの話だけど」


まずはそこからと話題を切り出す。

ナオも無意識のうちに身を乗り出していた。


「塁さんからの了承は降りたよ。他の奴らも、行ける時に行ったほうが良いって進めてくれてる。

で、肝心のナオはどう思ってるの?仕事だから行くって言うんじゃなくて、本心を聞かせてほしいんだ」


真顔で問い掛けられたナオは、口をキュっときつく結んだ。

短い時間の仕草だったが、その間に自分の中での確認を終えたようだった。


「みんなには迷惑をかけるかも知れないけれど、私はイギリスへ行ってみたい。

少しでも何かを吸収して、ショウたちの役に立てるようになりたいの。

今のままではすぐに自分の限界にぶつかってしまうから、だから今のうちに沢山のことを経験して自分の中の蓄えを増やしておきたい」


言葉に淀みはなく、ショウの虹彩をしっかりと捕らえたままの視線で答えた。

ズイに躍らされるままにイギリス行きを決めたのではないと、態度から物語っていた。

逃げるためではないのだと。


「ナオにその覚悟があるなら、俺も止める理由はないな。

こっちじゃ見れないこと、体験できない事を沢山味わってくると良いさ」

「うん、頑張ってくる。少しはショウに追いつけるようにならないとね。

いつまでも甘えてるわけにはいかないから」


屈託ない笑顔で、本心でそう言ってくれるナオが、自分をどれだけ頼っているか知っている。

仕事に関することについては、彼女の眼には最終的な目標くらいの大きな存在に映っているのだ。

信頼されることは有り難いし、そこまで思われてることは喜ばしいことだ。

だが、誰か一人を過信しすぎるということは、逆に視野を狭めることになる。

ましてや、自分の実力は正味どれほどに値するモノなのか・・・。


「ナオが思っているほど俺は出来る人間じゃないよ。俺がしているのは定石に準じたことばかりだ。

その枠の中で、可能な限りのことに手をつくし抜かりないように気をつけている、それくらいだよ」


だから、どうか理想を投影した目で見ないで欲しい。

本当の自分だけを、ちゃんと見て欲しい。


「そんな、謙遜しないでよ」

「だったら尚更、広い世界を先入観無い眼差しで見ておいで。

ナオだったら素直な気持ちで、沢山のことを真っ直ぐに受け入れられると思うから」


どうしてもショウの伝えたい本質が読み取れなくて、ナオは曖昧な気持ちのままでうん、と頷いた。

確認したいことはそれだけ?ショウは私がイギリスに行くのに何の注文もないの?

何をどう問い返したら良いのかまとまらないまま、ランチが運ばれてきてしまった。


当たり前のように食事が始まると、話題も自然と切り替わってしまう。

もしかしたらショウが上手にはぐらかしたのかも知れない。

何かが胸につっかえたまま、短い昼休みが終ってしまった。


いいのかな、このままイギリスに行ってしまって本当に良いのかな?


ショウは相変わらず冴えた、そして寡黙な横顔のままで隣を歩いている。

この横断歩道を渡ったらもう会社だ。

信号が青になり、先に彼が歩き始める。


「ねえ!もう少しちゃんと話がしたいの。今晩は空いてる?」


瞼を僅かに動かしただけで驚きを表す。

物静かで冷静なイメージは、こういったことの積み重ねで根付いたのだろうか。


「俺は予定は無いけど・・・」

「私の外勤もそんなに時間は掛からないはずだから。どこか適当なお店にでも入ってて」

「分かった、店に入ったらメールする」


約束、と小指を差し出すと、今度こそショウは目を見開いて驚愕の色をはっきりと見せた。

困ったように、それ以上の照れを隠して小指を組むと、ナオの顔に鮮やかな色味の笑みが広がった。


「じゃ、頑張って早く終らすから、待っててね!」


慣れないことに硬直したショウを置き去りに、ナオは元気に駆け出して行った。

追いかけてその背中を抱き締めたら、今度こそ自分の物になってくれるだろうか。


出来もしない事を考えながら、やはりナオに捕らわれているのだと痛感させられた瞬間だった。





続く



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そういや、今日の『王様のブランチ』、午後ゲストがオードリーだったんだけど、そのときに春日くん(なんか、彼は呼び捨てにしたくなるね(^^;。相方さんはちゃんと『くん』とか『さん』とか付けても違和感無いんだけど)が、潜水で日本8位の記録を持ってるって話になったの。


Qさまレギュラーの優香ちゃんが、覚えてる!ってちょっと興奮気味に反応して『まだ貴闘力をしてたころだよね!』『いえ、力道山です(-"-;)』と盛り上がっていた。


私はその頃のQさまって見たこと無いんだけど・・・。


話しながら一瞬でも野久保さんのことを思い出してくれたかな、って思ったのでした。


それだけ。