品川祐は、こう見えても立派な『お台場戦隊』の一員である。
むろん『羞恥心』や『Pabo』のように敵と表立って戦ったりはしない。
彼の役目は悪の組織の実態解明を目的として、巷に溢れる情報を収集することだ。
小さな変化、当たり前の景色に紛れた異変、不自然な兆候。
そういった取るに足らない、けれど見落としがちな情報を己の足と人脈だけで集めてくる。
彼のアドバイスから基地のコンピュータシステムの抜本的見直しがされたこともあるのだ。
さて、今日はどこら辺から回っていこうかな。
駅の改札から出て、眩しいだけの太陽を見上げた。
この時間は良いが、夜になれば放射冷却で冷えそうだ、早めに成果を出したいもんだ。
「・・・、なんだあれ?」
品川の願いを叶えるがのごとく、怪しげな人だかりが出来ているのが目に入った。
さてさて、どんな面白いことが飛び出してくれるのやら・・・・。
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「お?大将から電話だ」
携帯に流れる名前を確認して、剛士は珍しいなぁと思った。
大抵のことはメールで入れてくる人なのに。
「大将?何かありましたか?」
『おう、つるの。今三人とも大丈夫か?』
「朝のメンテが終って、これから午前の特訓っすよ」
『じゃその特訓は今日は休みだな。今すぐに信濃町まで来い。出来れば羞恥心の格好でな』
「何かあったんですか?」
『昨日話したニセ羞恥心が、子供用の公園を占拠してる(-"-;)』
(_△_;〃 ドテッ!
「な、なんすか、それ!!」
『どー見ても大人のやる所業じゃないんだが、一度決着をつけたほうがいいだろう?』
「分かりました、すぐに直樹と雄輔と一緒に向います」
『おう、期待通りの奴らだぞー』
何が期待通りなのか分からないが、品川の口調からは緊迫感のようなものは一切感じられなかった。
それどころか笑いを堪えているような節がある。
占拠してる場所が子供用公園ってあたりで、すでに笑い話か。
「ちゅーわけで、雄ちゃん直ちゃん、出動しますよ」
内心、面倒くさい特訓がお休みになってラッキー♪などとリーダーらしからぬ理由で浮かれて気味の剛士であった。
「なになに品川さん、なんて?」
「出来れば羞恥心の格好で来いってさ。変身してから出るか」
今日のスケジュールの書き換えをしていた崎本が、その一言に血相を変えた。
「駄目ですよ、正規の出動要請が来てないのに勝手に変身しちゃ!」
「そーゆーもんなの?」
「変身後の羞恥心は人間兵器と変わらない存在なんですから、お上が煩いんですよ。
独断で変身することは禁じられてるんです。キチンと職務規定にも書いてあったはずですけど」
その言葉に、新規加入の直樹や雄輔のみならず、剛士までが首をかしげて記憶を辿っていた。
やっぱりあんな分厚い規定書を真面目に読んでる訳がなかったか。
「ああもう、規定内容に関しては簡潔にまとめておきます。
どーしても羞恥心の格好で行くなら、営業用の衣装で行ってください。
あれならただのコスチュームなので問題ありませんから」
「ホントォ!サッキーありがとう♪(=^▽^=)」
「どれ着て行く?初代のやつはこの時期だと寒くねえか?」
「剛にぃってば寒がりですね。じゃ、最新版の白いモコモコにしましょう」
「あれ、すっごくあったけぇよな。ノックにめちゃくちゃ似合うの!」
「雄ちゃんもお似合いです♪クリスマスっぽいデザインで、この時期には良いですよね♡(o´冖`o)。って、剛にぃ?」
「ボキにはイマイチ似合わないもん・・・イジイジ( ´・ω・`)σ"l」
・・・・・・。
「いやいやいや、つーのさんもそれはそれなりにそれしてたよ??」
「そーですよ、4人の子持ちには全然見えないですよっ!」
「二人とも、それは慰めてんの?トドメさしてんの?!
いーよ、もう。あんな可愛い衣装はチミたちとサッキーで着ればいいでしょ!」
プイ!と珍しく不貞腐れてる剛士に、雄輔と直樹はどう宥めたものかと顔を見合わせた。
剛士はけっこうなお洒落さんなので、自分が着こなせない服が衣装というのが気に喰わないのだ。
「つるのさん!」
この事態に果敢にも入り込んで来たのは崎本である。
彼はガシっと剛士の手を握り締めて目一杯な力説を始めた。
「大丈夫です、自信を持って堂々とファンシーな世界に嵌って下さい!
三十路も半ばになってあんな可愛い衣装が着れる人なんて、広い日本につるのさんしか居ません!
モコモコでもふわふわでも、つるのさんが着れば格好いいですから!」
「サッキー、ありがとう!!俺、頑張ってアイドルしてくるよ!!」
「はい、ボクもペンライト振って応援しますからね!!」
しっかりと両手を握り締めて熱く語り合う二人を、遠巻きに雄輔と直樹が眺める。
いつもと逆のパターンだ。
「ぁのさ、サッキーってつーのさんに関しては、なんか視界にフォルダーが掛かってるよな?」
「雄ちゃん、ソレを言うならフィルター」
「あ、そか☆(・∀・)」
この際フィルダーだろうがフォルダーだろうがデフェンダーだろうが、剛士が出動する気になってくれれば問題はない。
崎本の偏った盲愛に手を合わせて感謝する雄輔と直樹であった。
ちーーーん☆(ちょっと違う)
ニセ羞恥心が現れないまま、さらに続く☆