摂食障害は精神疾患ですが、どの精神疾患にも共通して言えることは、

どこからが『病気』でどこまでが『気の持ちよう』なのかが分からない、という点なのではないでしょうか。

 

 

だから本人が少し生きにくいと感じていても病院に行くまでにいかなかったり、

逆に周囲が病院に行くべきだと言っても本人が病院に行くほどのものではないと感じていたりして、

結局治療を始めるのは重症化してからのことが多くなってしまうのだと思います。

 

 

殆どの病院のホームページには、精神疾患を受診する目安は『日常生活に支障が出るほどの症状になったら』とあります。

 

しかし『生活に支障が出る』の目安が明確に提示されているわけではありません

 

 

 

学校や職場場に行けない・BMIが明らかに足りない・歩けない・倒れた……などは生活に支障が出ていると言えるのかもしれませんが、

 

家族と喧嘩が多い・我慢すれば食べられるけどその後しばらく気持ちが落ち込む・人前で食べられなくもないけどストレス……など、生活はできなくもないけれどそれなりに辛い場合、

 

「こんなの誰でも起こりうるから」「心の持ちようだよ」

 

と病院に連れて行ってくれなかったり、逆に本人が行きたがらなかったりするのではないでしょうか。

 

 

 

事実、私は摂食障害の治療に入る前は自分が生活に支障をきたしているという自覚が持てず、

いくら家族におかしいと言われても私が納得できる明確な症状がないので病院にかかる必要はないと思っていました。

 

それどころか、そうやって家族が何かと理由をつけて私の本気のダイエットを順調に進めているのを邪魔しようとしているのかとも考えてしまっていました。

 

 

 

 

私が摂食障害になったきっかけはダイエットだったため、どこから摂食障害になったと判断できるのかに関しての個人的な見解は【摂食障害とダイエットの境界線】という記事に書いているのですが、

 

そこでは『日常と特別な日を分けられなくなったとき』という結論に至っています。

 

 

 

 

しかしこれは当事者が自分で

 

「もしかして、私って今やばいかも」とか

「病気として捉えてもいいのかもしれない」

 

と思える基準という話であって、

 

周囲だけが摂食障害かもしれないと心配になっている場合、まず当事者が自覚しなければ病院に行くという段階に持っていくことはできません。

 

 

 

当事者家族の方々のSNSを見ていると

 

「もう少し早く気づいていれば軽症で止められたかもしれない」

「早く病院に連れて行ってあげられたら」

 

という声もたびたび見かけます。

 

 

 

そこで今回は

  • 本人の周りにいる多くの人が明らかに摂食障害だと感じていて、当事者を病院に行かせたいと思っている場合はどうしたら良いのか?
  • 摂食障害になりそうな子に対してどういった対応をすればいいのか?

について当事者の目線から綴っていこうと思います。

 

 

 

 

【本人の病識がないとき】

 

初めに本人の周りにいる多くの人が明らかに摂食障害だと感じていて、当事者を病院に行かせたいと思っている場合ですが、

この考察に入る前にまず私が病院へ罹った経緯についてお話しします。

 

 

 

最初に言うと私は病気の自覚がなかったにも関わらず、家族に受診を勧められてからは全く抵抗することなく病院へ受診しに行きました

 

 

 

家族が私に受診の話を持ち掛けたきっかけは、

家族で外食をしたときに私が食べない事から、割と大きめな喧嘩に発展したからです。

 

ただ自分ルールをしっかり守って絶対成功させると決めたダイエットをやっているだけだと思っていた私は、お店で

「なんでみんなダイエットの邪魔をするの!?」

と泣きながら反抗しましたが、

 

「これくらいは食べなさい」

と言われ注文したもやしとゆで卵を一口ずつ食べさせられて終わりました。

 

そして、その翌日くらいに

「もやしと卵を食べるだけで泣くのはおかしい」

と半ば強制的に電話されました。

 

 

 

その時はお互い頭に血が上っていたのもあって、

「病院に罹ってみてどっちが正しいか白黒つけようや!!!」

というような勢いでいたので、私自身、病院に行くのが嫌だというよりはお医者さんに「これくらいで来ないでください」って言われて

家族に「ほら見たことか」という顔をする気満々でした。

 

 

結果的に私が「ほら見たことか」と言われることになったのですが、

白黒ついたからには私に拒否権はないと思ったので、予想外に本格的な治療が始まった後しばらくは「こんな軽症の私がここに通っていて良いのだろうか」という気持ちもありつつ、通院をすることにしました。

 

 

 

だから入院のときも

 

「入院するほどじゃないだろうに」

「マニュアルでこういうのしなきゃいけないのかな?」

 

くらいに思っていたほど病識は薄かったです。

(この時はさすがに摂食障害であることは自覚していましたが、軽症だと思っていました)

 

 

 

 

私たち家族の場合は喧嘩して電話した形になってしまいましたが、「判断を第三者に委ねてはっきりさせよう」という流れだけは良かった点なのかなと感じます。

 

なぜなら、お互いに自分の意見をぶつけているだけでは摂食障害だという保証もできず、しかし摂食障害じゃないという保証もできず、いっこうに解決しないからです。

 

 

だったら、専門的な第三者(=お医者さん)に現状のジャッジメントをしてもらって明確にさせる方が、

どちらか一方が抑圧した、ないしは抑圧されたように感じる確率は低くなるのではないでしょうか。

 

 

 

具体的には

 

「あなたは違うと言うけれど、私はあなたが摂食障害の域に達してると思う。だから病院に一緒に行って欲しい。これで本当に違ったら謝る。」

 

というような感じです。

 

 

 

人それぞれなのでこれが絶対に良い!とは言い切れませんが、一つだけやっていて損ではないポイントがあります。

 

それは、“穏やかに言う”という事です。

 

 

私は自分の負けず嫌いな性格から、喧嘩した流れで“じゃあ受診して試してみようや!”という風になりましたが、

まず喧嘩自体心地よいものではないですし、最悪言い負かして無理やり連れていくという形にもなりかねません。

 

 

そうするともし一度は受診してくれて診断が出たとしても、信頼関係が築きあがっていないので敵視される割合は高くなってしまいますし、継続して通院してくれない可能性も大きくなります。

 

 

 

過去に何度も書いたように、精神疾患の治療において信頼関係はとても重要なポイントだといえます。

 

 

そのため頭から相手がおかしいと決めつけるのではなく、

あくまで“お互いに間違っている可能性はあるよね”というニュアンスで言われると、少なくとも私は受け入れやすく感じます。

 

 

 

 

【摂食障害と断定はできないとき】

 

次に摂食障害になりそうな子に対してどういった対応をすればいいのか?についてですが、

 

これも自分の体験から入ると、私が徐々に体重が増えてきて回復期に入っていたころ、

学校の先生から「下の学年に摂食障害の傾向がある子がいるのだけど、どうしたら良いと思う?」という質問を受けたことがありました。

 

 

 

当時は精神的にも一番酷かった時よりはだいぶ安定していたのですが、まだ自分についてもしっかり考えられていない状態だったので、たくさん迷った末にとりあえず

 

「心配事がないかこまめに聞いてあげるとか、干渉しすぎず様子を見るとかくらいの具合が良いかもしれないです」

 

としか言えませんでした。

 

 

 

だから「協力してあげたい」「先生が私を頼りにしてくれているのだから当事者の私が正解を言わなければ」という気持ちとは裏腹に、

明確に私が “これが良い!”と思える答えが出せない自分に無力感を覚えていました。

 

 

 

 

そもそも、直に私がその子を見たことがないし、その先生も体重が急に減り始めたことだけしか情報がないみたいだったので、本当に摂食障害だったのかというのは定かではありませんが、

 

いま改めて考えてみても、事実がどうであれ心配である生徒に対して“こまめに声をかける”。これに限ると思います。

 

 

 

なぜなら、もしその子が摂食障害だったとしても、コミュニケーションをとっておくことで体型や体重・食生活などの相談をしやすくなるかもしれないからです。

 

 

 

また、摂食障害ではなかったとしても声をかけた後の相手のリアクションによっては、

その子の体重減少が別の病気が原因なのか、はたまたストレス性のものなのか、ただ急に運動するようになって減っているのか、さらには本人自体が体重減少を気にしていなかった、なんてことだって考えられます。

 

 

しかし、相手とコミュニケーションをとっていない時点では、こちらは憶測でしか判断することができません。

 

そのため、コミュニケーションをとる前にこちらの解釈だけで「摂食障害じゃないの?」と問いただすような声かけは、逆効果であると私は考えています。

 

それに、もしそうだったとしても何だか責められているような気がして普通に嫌ですよね。

 

 

 

 

もし私が摂食障害になりつつある時点で声をかけられるとすれば、

 

「体重が減っているのが少し心配なのだけど、どこか苦しいところとかない?」

 

というスタンスの方が嬉しいなあと私は思います。

 

 

 

また、声をかけてくれた人が学校の先生でも親でも専門家だったとしても、その人に相談するか(頼りたいか)否かは本人次第であることも前提として忘れてはならない事だと思います。

 

 

 

 

【ダイエットを中止させたいとき】

 

さて、ここからはもし私のようにダイエットで体重を急激に減らしていた場合のお話をします。

 

 

 

 

私は極端なダイエットで給食を欠食していたときに、担任に

 

「食べないのは良くないよ!その分夜食べちゃったりするし……。」

 

などのように頻繁に声をかけてもらいました。

 

 

それでも私が欠食を続けるので、欠食を始めてから数週間後には母に電話もしてくださったほど心配をお掛けしてしまいました。

 

 

 

当時から担任が私のことを心配して極端なダイエット(減量)をやめさせようとしてくれたのはわかっていましたが、

私はその声掛けに対して「ダイエット(減量)を止められている。本気でやろうとしているのに。」と思ったり、「ちゃんと夜も食べてないから大丈夫です。」と言ったりして欠食をやめようとはしませんでした。

 

 

なぜならこの時も私は『高校に入学するときは絶対痩せた状態になるんだ!』という頑固たる強い意志を持っていたからです。

 

 

 

 

皆さんの中にも部活・趣味・勉強・仕事・遊びなどなど……

「周りに何を言われようが絶対やって(行って/見て)やる!」という強い意志を持って、やり続けたいと思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

思い浮かばない!理解できない!という方のためにひとつ例を挙げてみますと、

 

あなたは今、ゲームセンターでUFOキャッチャーをやっていると仮定します。

 

取ろうとしていた商品はあなたが今最も欲しい期間限定&数量限定の大人気グッズ。

探し回ったあげくやっとのことで出会えたそれを取るために何回か挑戦したのち、どう考えてもあと1回で取れるでしょ!というところまで来ます。

 

そこで同伴していた家族からあきれ顔で一言、

 

「もう随分つぎ込んだのだから、もう終わりにしなさい!」

「そんなにつぎ込むのは良くないよ!」

 

と言われたとします。

 

 

それであなたはすんなり「ああ、そうだね」と言って終わりにすることはできますか?

 

 

 

家族のお金だったらまだしも、自分がバイトをして稼いだ自分のお小遣いであれば

 

「いや、自分のお金だし!」

「今しかチャンスはないんだよ!」

 

となるのではないでしょうか?

 

 

私だったら辞められないだろうし、

もしそれで強制的に辞めさせられて次に並んでいた人が1回で商品を取ったのなら、一生その悔しさは消えないでしょう笑

 

 

 

ダイエットもそれと同じで、私も自分の体は自分の責任として「高校までに痩せなければ!」という強い意志でダイエット(減量)に励んでいるので、

いくら周りが「これ以上は良くない」と言おうが「今頑張って減量するタイミングなの!」となって全くやめようとしませんでした。

 

 

 

結論、本人が強く痩せにこだわっている状態に「極端な減量は良くない」「体が心配」などの主観を相手に突き付けるような声掛けは意味がないと思っています。

 

 

残念ながら、病識がない時点から病気の進行を止めるのはあまり現実的ではありません。

 

私だったら当時の担任のように相手を敵視して「絶対言いなりにならない」と、さらに意志を強く持ちますし、もう何か言ってこないようにその人の目につかない方法を探します。

 

 

 

相手を思っての行動が裏目に出てしまうのは周囲としては不本意な結果でしょう。

 

だから私は、病気の進行を止めるのに意識を向けるのではなく、

本人が苦しくなったときにいつでも受け口になれるように普段からコミュニケーションを取っておくことが重要なのではないかと考えました。

 

 

私もまた、誰かにとってそういった存在であれるよう、ひとりひとりとの関係性は大事にしたいなと思っています。

 

 

 

 

そしてもう一つ大事だと感じることは“相手がおかしいのだと言わない事”です。

 

なかなか「あなた、おかしいよ」と言われた相手に対して相談に乗って欲しいという人はいない気もしますが、

少なくともまず否定から入る相手に私は絶対に相談したくないですし、心配されていたとしても素直に受け入れられません。

 

 

 

逆に、自分の意見も一意見としてしっかり聞いてくれて、普段からコミュニケーションもとっているような信頼できる人であれば、同じ心配する言葉でも受け入れやすい気がします。

 

 

 

 

【おわりに】

 

家族でも友人でも生徒や先生でも、大事だと思っている人が病気で苦しんでいる姿を見るのは嫌だし、不安でいっぱいで早く止めなければ!となるかもしれません。

 

 

でも過去の記事で何度も言っているように、

根本的に考え方・価値観の理解から始まる根本的なコミュニケーションの土台ができていなければできていないだけ、思わぬすれ違いが多くなっていきます。

 

 

まずは今自分と相手が立っている位置(見えている景色)が互いに共有できているかを考えて、

心の距離を縮めてみる事から初めてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

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