前回は、私が言われて嫌だったことを3回に分けてお話ししましたが、

(『言われたくなかった言葉①』)

 

今回は逆に、私が周囲の支援者に言われて嬉しかったことや、有り難かった思うアプローチについてお話していこうと思います。

 

 

 

今回お話ししていく内容は、私の一番近くで最も良く治療に関わってくれた支援者である母からのものを4つと、学校や友人などからのもの2つをご紹介します。

 

 

 

【1:「この子、病気で食べられないんです」】

 

最初に母から言われて嬉しかったことや有難かったアプローチの4つからお話しします。

 

 

まず1つめは前々回にも書いたように「この子、病気で食べられないんです~」と代わりに説明してもらう事です。

 

 

なぜなら、このときはまだ私自身が自分で病気を周りに公表することに抵抗があったり、過度にプレッシャーを感じてしまって断れなかったり、「食べなくちゃいけないんだ」「太る」という不安で頭がいっぱいになったりして、

なかなか「食べられない(食べたくない)」という意思表示をするのが難しかったからです。

 

 

そこで母から私が摂食障害だと知らない人や、私が病気であることを知っていても摂食障害の知識が薄い人に対して「病気で食べられない」と説明してもらい、事前に私の目の前に抵抗のある食べ物が来ることを防いでもらえた場面は、私にとってとても安堵する瞬間でした。

 

 

 

またこれは後で聞いた話なのですが、どうやら母は私の目の前でなくても、例えば家族に対してや親戚の集まりに行く前などに、私の見えない所で私の病気について説明してくれていたようで

私がその場の雰囲気に合わせて自由に食べられないことや体型が痩せすぎていることを事前に理解してもらっていたそうです。

 

 

 

そのため私は実際、ガリガリの状態で親戚の集まりに行っても親戚に奇異な目で見られたり、びっくりされたり、病気のことに触れられたりすることなく、

ホッとする気持ちで一日を終えることができていました。

 

 

また、それを母が当時のネガティブ全開の私に「言っておいたから大丈夫だよ」と報告することも無かったのも、今考えるとベストな支援だったなあと感じます。

 

なぜなら、上にも書いたように当時は私が摂食障害であることをはっきり知られることに抵抗があったからです。

 

 

さらに、もし周囲に病気のことを知られていると事前に知っていたとしたら、

母が人に説明しているところを私は見ていないので『もしかしたらその時の反応が軽蔑するような感じだったかもしれない……』などの過剰な心配をして、当日までに鬱や摂食障害などの症状に悩まされていた可能性もあるし、

いざ当日になったら「行きたくない」となっていた気がします。

 

 

 

【2:感情を受け止めてもらうこと】

 

“感情を受け止める”の具体例としては

  • パニック状態や泣いている私をハグしてくれたとき
  • 「食べられた」と報告したときに全力で褒めてくれたとき

などが挙げられます。

 

 

1つ目の例がなぜ嬉しいかと言うと、

 

症状が出た時に一番私が求めていたのは

「私が今感じている辛いという事実を肯定してもらう」ことや

「病気ではなく私自身を見てもらう事」だったことから、

 

私がどんなにネガティブになっても、泣きじゃくっても、変わらず傍にいてくれるという安心感は私が症状から落ち着くために大きな助けの手となるからです。

(当時は自分でもどうして欲しかったのかが分からなかったので、今だから言えることですが……)

 

 

 

母もそうでしたが、たまに支援者の方の中で「何をしてあげたらいいか分からない」「何もしてあげられない」と言う方がいらっしゃいます。

 

 

しかし、ありのままの自分を奥に押しこみがちな傾向や、なかなか摂食障害の症状をあらわにできる存在(ストレスを打ち明けられる存在)がいなかった私にとって、

私の完ぺきではない姿を見せることができたり、病気関係の話を聞いてくれたり、その話をしたあとも一緒にいてくれること自体が何よりも私の救いになっていました。

 

 

 

2つ目の例に関しては「食べられた」と報告したとき、という部分がポイントになります。

 

 

どういう事かというと、

「食べてしまった」と報告するときは大体、食べたことによって自己嫌悪に陥っているときなので、私自身は “褒められるようなことはしていない” “自分ルールを破った罪悪感” のベクトルが大きい状態です。

 

そのためそこで褒めてもらったとしても「私は良くない!!!」となることが多かったです。

 

 

対して「食べられた」のように、自分で少し罪悪感はありつつも「食べることに成功した」というニュアンスの強い報告のときは、

自分でも「え。もしかして今日、良い感じじゃない!?」と思っている場合が多いので、そこで褒めてもらえると「食べて良かったかも」と思う事ができました。

 

 

さらに言うと、褒めるときの言葉は「ママ嬉しい!」という言葉よりも「頑張ったね!」の方が個人的には嬉しかったです。

 

なぜなら、「ママ嬉しい!」は感情の主体が“母”であり、「頑張ったね!」は感情の主体が“私”なので、

「頑張ったね!」の方が“私自身の行動や感情”を肯定してくれる意味合いが強いように感じたからです。

 

 

 

 

【3:気分転換】

 

これは具体的に言うと

  • エンターテイメントに触れる事(テーマパーク・劇・ショーなど)
  • 楽しい(もしくは楽しかった)写真や動画を送ってきてくれた

ことなどです。

 

上記に書いたようなことは今までの記事でも何度か出てきているように、

ほんのひと時でも心身ともに病気から離れる時間になっていたことがポイントで、病気に囚われて24時間苦しんでいる私にとっては、かなり救われる時間でした。

 

 

 

 

しかしこの場合、気分転換しようとしてくれるアプローチが本当に気分転換として機能するのには時間がかかったというのが現実で、

 

実を言うと、最初の方は私自身が気分転換しているというよりも“病気以外のことを考えている母を見るのが嬉しかったから”母の薦めてくれる動画やショーを観ていました。

 

 

 

一方で、私が徐々に母につられてエンターテイメントにハマっていった頃は、

“楽しかった”写真や動画をパニック状態になったり不安になったりしたときに母が送ってくれることがあって、

それで一瞬でも心が『フフッ』と満たされる感覚(当時は表情として笑うことができなかったので)は、病気から少しでも気を逸らすためには最も有効な方法でした。

 

 

もちろん、摂食障害もそんな一気に気分転換できるようになるほど簡単に切り離せるものではないので、写真や動画や楽しかったと感じる思い出があっても気分転換できない時もありました。

 

それでも比較的症状が軽い瞬間から効くようになって、そこから少しずつ、上手く気分転換できるようになっていったように思います。

 

その点、根気強く私に“楽しいもの”をいろいろと薦め続けてくれた母には感謝です。

 

 

 

 

【4:真剣に話を聞いてくれること】

 

ここからは、学校の先生や友人など、母だけでない支援者からの嬉しかったアプローチになります。

 

 

 

これは摂食障害に限った話ではないのですが、

 

やはり、私が心の準備をして重要なことだと思って話す際に、同じ気持ちで真剣に話を聞いてもらえると当事者としては「話してよかった」と思う事ができます。

 

 

 

「うんうん」と聞いてくれるだけで「引かれるかもしれない」「軽蔑されるかもしれない」と言う不安は徐々に薄れていきますし、

 

カミングアウトするときの不安が大きい分、そのように聞いてもらったときの安心感や嬉しさも大きいです。

 

 

 

 

また、このように真剣な話としてしっかり聞いてくれるだけでもかなり嬉しいのですが、

 

そこでさらに

  • 「どんなことに困ってる?」や「私にできる事があったら言ってね」などの心強い言葉をかけくれる
  • 実際に私がやって欲しいと言ったことを実践してくれる
  • 摂食障害の問題について関心を持ってくれる

のような対応を支援者の方にして頂けたときは、もっともっと嬉しかったし

「話してよかった」と心から思う事ができました。

 

 

 

【5:支援しつつ、いつも通りに接してくれること】

 

これは主に学校の担任の先生がお取り計らいして下さった印象がとても強いです。

 

 

具体的な場面を挙げると、

 

  • 学年が変わるときに私が相談していたことを次の担任になる先生にしっかりと引継いでいただいたこと。
  • 体脂肪が少なくエアコンや冬の寒さに弱い私に配慮して下さり、席替えのときに「お前らが一番集中できる席にしてやる!」と先生がクラスの席を決める方法を取って、さりげなく私の席をエアコンが近い席や冬の窓際の席から遠ざけてくれたこと。
  • レクリエーションの際にドクターストップがかかっている私に「審判係ね」と椅子を用意しつつ、参加させて下さったこと。
  • 修学旅行のとき、みんなで食事を摂らなければならない場面で、一緒に写真を撮るついでにこっそり「大丈夫そう?」と聞いて下さったこと。

 

などなど、挙げ始めると数えきれないほどあるのですが、

 

私の病気による弊害に対して配慮をしていただきながら、他の部分は基本的にクラスメイトと一緒の扱いだったことに私は何度も救われましたし、そのおかげで高校生活が過ごしやすくなったと断言できます。

 

 

摂食障害の症状が一番ひどかった時期に担任をして下さった先生には本当に感謝しかありません。

 

 

 

 

このアプローチ方法で最もポイントになるのが“ほかの生徒と基本的には同じ対応”であることです。

 

 

しかし、上記した場面の例で何となくお分かりになるかもしれないのですが、“ほかの生徒と基本的に同じ対応”とはいっても、病気について考慮せずに他の生徒と(ある意味で)平等に接してもらっていた、という意味ではありません

 

 

定期的に担任と保健室の先生を交えながら個別相談をして一緒に対策を考えていったり、保健室の先生がこまめに気にかけて下さったり、学校からは特異的なサポートを沢山して頂きました。

 

また、あとから母から聞いた話では、担任の一人は私の教室での様子を手紙にしてこまめに母に知らせて下さったそうです。

 

 

 

 

つまり、私が言いたい“ほかの生徒と基本的に同じ対応”という事の意味は

 

個として困難な部分を丁寧且つさりげなく支援して頂きながら、クラスメイトの前では私に対して“病人”ではなく“一人の生徒として”接してくださった

 

という事です。

 

 

 

これは、学校の先生に限った話ではありません。

 

私が回復するきっかけにもなったコミュニティでは、誰もが私を“病人”ではなく“生徒”や“友人”の一人としてほかの人と変わらない対応をして下さいました。

 

でも、今思えば『こういうところ配慮してくれていたのかもしれないなあ』と感じるところがいくつかあって、それをはっきりと出さずに居てくれたことに、さらに頭が上がらない思いです。

 

 

 

 

【おわりに】

 

私がブログを書く理由の一つには“当事者と支援者の溝を埋めるお手伝いをする”という目的があります。

 

 

そのため、当事者として言いにくかった事だったり、当時は考えを整理できなかった事だったり、分析する余裕がなかったりしたものが中心の内容になってしまうのですが、

 

この前ふと『感謝していた事ってあまり口に出さなかったなあ』と思い、この記事を書きました。

 

 

 

また、いま改めて支援者になってくれていた人たちから話を聞いてみると、

当時は配慮してもらっているのだと感じきれていなかった部分にも気づかされ、

改めて今、あのとき様々な支援があったからこそ、その瞬間瞬間を当たり前のように過ごすことができていたのだと痛感することが多くあります。

 

 

どうしても“支援する”側になると、なかなか改善しているような傾向がみられない時や本人に響いている感覚が全く感じ取れなかったりする瞬間に気持ちが滅入ってしまうこともあるかもしれません。

 

 

しかし、もし本人が気づいていなくても、気づいていて口に出すことができなかったとしても、支援者の存在やさりげない言動に救われている瞬間が私には沢山ありました。

 

 

 

だから当時に比べて「ありがとう」を言えるようになった今は、

これまで変わらず傍に居てくれた人にいっぱい「ありがとう」を言いたいと考えながら毎日を過ごしています。

 

 

 

現在進行形で当事者との関係が上手くいっていないと悩んだり、このブログを読んだり、(変な言い方ですが)試行錯誤しながら辛いと感じて下さっている事は、何よりも当事者を愛してくれている証拠なのだと私は思います。

 

だから支援者の存在が当事者にとって大きいことを忘れずに試行錯誤を続けていただきたいし、

私も何か協力できることがあれば全力で協力したいと心から思っています。

 

 

 

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