今回も前回の続きで『言われたくなかった言葉』についてお話していきます。
今回ご紹介する言葉は
- 「あなただけじゃないよ」
- ダイエットや体型に関する話
- 「あなたは食べないもんね」
- 「ちょっとだけでも食べてみようよ」
の4つです。
「言われたくなかった言葉」を考えた時にぱっと思いついたものでも10個あったことから、こうして何度かに分けてご紹介しているのですが、
既に前回3つご紹介していますので、良ければ是非そちらもご覧いただけると嬉しいです。
リンクはこちら→『言われたくなかった言葉①』
【1:「あなただけじゃないよ」】
これは、相談に乗ってもらったりカウンセリングだったり、主治医の先生だったりがよく私にかけてくださった言葉です。
きっとこの言葉は、
「あなた以外にもこういう症状が出る人がいて、一人だけおかしいことをしているというわけではないから安心して」
という意味を込めて、安心させるために言っていたのだと今では思います。
しかし、そこまで考える余裕のない当時の私としては
「あなただけじゃないのだから、それくらいでピーピー言わないの!」
と言われているように感じてしまっていました。
それはまるで、
何も特別騒ぐようなものじゃないのだからわざわざ言ってこないで、と目の前でシャッターを閉められたような感覚です。
だからその言葉をかけられるたびに、
「私だけじゃないかもしれないけれど、この“私の”苦しみは受け取ってもらえないんだ……」
と悲しい気持ちになってしまっていました。
確かに、自分でも異常行動をとっていると自覚するようになってからは
「私は人として最低なのだ」「私みたいな異常者は軽蔑される」
などのような不安にひたすら苛まれる日々が続いたので、そのなかで
“摂食障害の「症状」なのだからそこまで思いつめなくても良いのだ”
と思わせてくれるような声掛けはありがたいものです。
しかし「あなただけじゃない」という言葉が曖昧であるが故に、その後に続く言葉がなければ、マイナス思考をしてしまう私はどうしても悪い意味で捉えてしまいます。
そのため、もし「あなただけじゃない」という言葉を使うのであれば
「だから安心して」のような意味合いを込めた言葉を続けること、
そしてまずは「苦しかったね」などの辛さを受け止める言葉をかける、
というような言い方をしてもらえたら、安心の度合いがかなり違ったのかなあと思いました。
【2:ダイエットや体型に関する話】
これは前回お話ししたような私自身への「痩せた」「太った」などの評価以外、
つまり周囲の人が自分の体に対して発言したものや、女子同士のコミュニケーションのためにあるような所謂“本気ではないダイエットトーク”も当てはまります。
摂食障害が関係していると考えなければ、日常でよくある他愛もない話ですが、実はこの何気ない話題が摂食障害の症状の引き金になることがかなりの確率でありました。
ダイエットや体型の話題は、私の主な症状が拒食症で体が痩せていたというのもあって、私自身の体型がきっかけでそのような話になることが多く、かなり苦労した思い出があります(^^;)
特によく言われた、
「痩せてるね~。いいなあ。私もダイエットしなきゃ!」という言葉や
「私の足太いからさ~。もう少しやせようと思うんだよね~」という言葉は、
“誰よりも痩せている”ことに安心感を得たい私にとっては、周囲が瘦せる事への抵抗感が大きく、(今思えば、なんて自己中な考え方!)
“周囲が痩せることを阻止しなければ” という気持ちや “自分ももっと痩せて追いつかれないようにしなければ” という気持ちが助長されてしまい、拒食やチューイング※などの症状が出ることが多くありました。
※チューイング:食べ物を口に含んでも飲み込まず、そのまま口から吐き出してしまう行為を繰り返すこと。
また食事をサラダだけにしたり、食事を残したり、食べなかったり、「○○制限」のような偏ったダイエット方法をしている友人がいてもストレスになっていました。
その理由は2つあって、
1つは「私と同じ道を辿るかもしれない」という不安、
そして2つめは「私よりも痩せている(=周囲が気にかけてくれる)人が増えてしまう」という不安。
2つ目は上記したものと同じ心理です。
体型に依存しているからこそ、表では相手の身体を気にかけているふりをして、心の奥底では自分よりも痩せている人を増やしたくないという気持ちがありました。
もちろん、そんな自分はめちゃくちゃ嫌いでしたし、自分で自分に嘘は付けないので、その自分の真っ黒な本音に気づくたびに罪悪感でいっぱいになりました。
そして、私はその不安と罪悪感から出てくるストレスをごまかすように拒食やチューイングや過食をします。
なぜなら、症状に夢中になっている間は他に何も考えなくてよくなるし、拒食やチューイングをすれば“カロリーを摂取していない自分”に安心感を覚えるからです。
とはいえ、摂食障害は見た目では殆ど判断がつかないので、当事者かどうかわからない時にダイエットや体型の話をしないで欲しいというのも無理な話です。
しかし、摂食障害当事者と分かっている場合に限っては、少なくとも食事や体型に何らかのこだわりがある事を把握していると思うので、そういった関連の話に触れることはあまりお勧めできません。
【3:「あなたは食べないもんね」】
この言葉はよく家族や親戚と食事をする際に言われた言葉で、
例えば誕生日ケーキを食べるときなど、みんなが食べる中で私が食べ物を頑なに断って食べないことを見越した誰かがぽろっと口にする場面が多かったです。
この言葉が嫌だった理由は、
この言葉をかけられた私が“場の空気を読んで一緒に食べない私”を責める言葉のように聞こえてしまっていたからです。
実際、食事のシーンでこの言葉をかけられたときは毎回、急にその場が気を使うような空気になったし、私自身も肩身が狭く感じ、申し訳なさで押し潰されそうになっていました。
そのような経験から、みんなで一つのものを食べる(自分で食べられるものを選べない)時間になりそうだと察知したらその場を離れるようにしようか、とも何度か考えましたが、
そうすると家族の輪の中から急に一人いなくなるという事になり、それはそれで気を使わせてしまいそうだったのでその選択はできませんでした。
きっとこの言葉を使っている本人からすれば、みんなで食べるものを私だけ配膳しないわけにもいきませんから、
誰かが私に食べ物を勧める前に「あおいは食べないもんね」と言う事で、この子に配膳しなくても良いという雰囲気にするための気遣いの言葉だったのかもしれません。
結局、私が摂食障害に足を取られている時期は解決するための良い方法が浮かばず、ずっとこの言葉に悩まされることになったのですが、
いま改めてどのように対処してもらいたかったかを考えてみたところ、
「あおいは食べないもんね」と私に向かって呼びかけるのではなく、
配膳する人に「この子の分はいらないよ」とさりげなく声を掛けてもらえたら私は嬉しかったなと思います。
この理由に関しては次のお話と通ずる点があるので、次の言葉と一緒にお話ししようと思います。
理想は自分からさらっと「私、いらないよ」と言えるのが一番良いのですが、そうすると
「なんで食べないのー?」とか「おいしいのに!」とか返ってくるのが分かっていたので、なかなか言い出せずにいました……。
美味しいのはわかってるのよー!!
【4:「ちょっとだけでも食べてみようよ」】
これは圧倒的に病院や家族、学校の先生など、がっつりと支援してくださっていた方々から言われる確率が高い言葉でした。
まずこの言葉の何がいけないのかというと、
食事面でコントロールすることが難しい摂食障害当事者に対して、「ちょっと食べる」ことを勧めるというのは、精神的にかなり厳しい言葉である点です。
私がこの言葉を厳しいと感じる理由は大きく分けて3つです。
- 症状の引き金になってしまうかもしれないという不安があるから
- 自分にとって「食べられないもの」が目の前に差し出される辛さがあるから
- 自分のペースで食べられない恐怖があるから
①については、最初にも書いたように
「ちょっと」を食べることで過食のスイッチになったり、うつ状態になる原因になったりするのが自分で分かっているので、その「ちょっと」に対してのハードルが私にとってとても高くなってしまっているのが原因です。
②の感覚についてはひとつ前で言った「あなたは食べないもんね」にも通ずることがある理由で、こちらは別の例で考えていただくと分かりやすいかもしれません。
例えば、子供会でみんなでケーキを食べよう!という雰囲気になった時
アレルギーの子が1人いたとして、その子にだけ配らないわけにはいかないからと、その子に「食べる?」とケーキを差し出す行為は、あまりにもむごい事に感じませんでしょうか。
私は、このような感覚で「ちょっとでも食べてみようよ」という言葉を捉えてしまっていて、「知ってるなら聞かないでよ!!」と毎度考えていました。
ここで “アレルギーは命に関わる事だけど、摂食障害は気持ちの問題でなんとかなるかもしれない”。そう思う方もいるかもしれません。
しかしそこに根本的なすれ違いがあって、摂食障害を罹患してる人に対して本人が抵抗のある食べ物を差し出すことは、過食やうつ状態を誘発するなど、重大な症状につながる可能性があります。
私にとって食べ物を目の前に差し出されるという行為はアレルギーの人にアレルゲンのある食品を差し出すのと同等な重大なことでした。
そのため、相手が摂食障害当事者であることが分かっている場合は、この言葉を使わないで頂きたいと思うのです。
③をよく感じる場面としては、治療の一環でお米を食べる練習をしているときが多く、
まだ恐怖心の方が大きいのに「もうちょっとでも食べてみようよ」と言われ、増やそうとされるとかなりプレッシャーに感じたし、急かされているようで怖かったです。
また学校に相談に行ったときも、この言葉をかけてきた先生にいろいろ相談しようとは思えなかったし、「学校の先生にまで言われたくない」という気持ちと、「その“ちょっと”ができていたら苦労しないんだな……」という気持ちが、もう相談したくないという思いを助長しました。
私が痩せすぎで“命の危機があったから”というのもわかりますが、
私は「できない」「怖い」「嫌だ」など、マイナスな気持ちがある物事に取り組む時は、自分のペースで進めたいし、あまりにも自分の気持ちを汲んでくれないと(自分はこうしたい…など)もっと嫌になった挙げ句にやる気がなくなってしまう傾向にありました。
その経験がトラウマになることもあるし、私だったらこの言葉をかけられたら“この人は信頼できる人だ!”とはどうしても思えません。
苦しい・痛い・怖い・気持ち悪い・だるい・難しい・簡単・嬉しい・面白い……
これらのような感覚は人によって全く違います。感じ方の違いというものです。
病気の治療に関しても同じことが言えて、当事者には当事者のペースや考え方がありますし、人としての尊厳もあります。
私は、この言葉をかけられたときに「ちょっと食べてみようかな」と心がプラスの気持ちに動いた経験はありません。
寧ろ、せっかくその気になっていたときに「ちょっとでも食べてみようよ」と言われると、急かされたように感じて気持ちが萎えてしまっていました。
もしかしたら当事者の中には最後の一押しが欲しいという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし私の場合は人に説得されるよりも、自分が納得したタイミングの方が踏み出しやすかったです。
また、疎外感を感じないための気遣いよりは、ひとつ前にも書いたように「この子は病気で食べられないんだ💦」と言ってもらえた方が
「みんなと食べなくちゃいけない空気だ......どうしよう......」という不安を払拭してくれるようで私は安心できました。
実際、母が親戚や試食の販売員さんに「ちょっとこの子、病気で食べられないんです~」と言ってくれた時は心の中で「ありがたや〜!」って思っていました笑
【おわりに】
今回は“嫌だった言葉”に加えて“嫌だった場面”も交えたお話になりましたね。
次回は
- 「なんでそうなったの?」
- 「また?」
- 「治す気あるの?」
の3つです。
次の記事で10個すべてお話しできる予定です!
みなさんもぜひ、こんなこと嫌だった!という事があればコメント等でシェアしてくださると嬉しいです。
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