摂食障害は数々の精神疾患の中で最も死亡率の高い病気とされていて、原因は “痩せ症の低栄養による衰弱” “不整脈” “感染症” “自殺” など様々です。
私の症状のメインは拒食症だったので、衰弱や不整脈・感染症(甲状腺機能が低下し免疫が弱い)のリスクは高く、
また前回書いた記事のように、精神的にもかなり追い込まれていた状況です。
そこで今回は、当事者である私にとって周りからの支援がどれほどに重要なものであったのかという事をお話ししようと思います。
【決められた支援と正解のない支援】
最初にあげた死因の中で“衰弱・不整脈・感染症”の3つに関しては、病院の専門的なサポートや家族の協力などによって、私(当事者)の命が危機にさらされないような、一般的に確立された予防・治療を行うことができます。
具体的にいうと
体重減少と低栄養による衰弱・不整脈のリスクは、少しずつ食事の摂取量を増やし体重増加をしていったり、体重が減り続けた時は入院してみたりして何とか防ぐことができました。
またこれは最初に説明を受けただけで私は体験していませんが、どうしても食事が摂れずに命の危険が迫っていると判断された場合、点滴で栄養を補給したり、
もっと症状が重い場合は身体拘束治療をしたりするという方法も、強制力が強い治療にはなりますが命を確保するための治療として存在します。
事実、同じ摂食障害の患者さんで管を入れて栄養を補給する治療を受けていらっしゃる方も見かけました。
感染症に対しては、甲状腺機能が落ちていることが分かった時点で主治医の先生から注意を受け、感染症への対策を自分はもちろん家族にも協力してもらって、基本的な感染予防(手洗い・うがい・マスク・消毒など)を徹底していました。
甲状腺機能は体重の増加とともに改善していきましたが、一度おかしくなってしまった機能を治すのも簡単ではないようで、
ある程度体重が戻ってきてからもなかなか良くならず、紹介していただいた甲状腺機能を専門で診てもらえる病院を受診しながらしばらく用心する日々が続きました。
一方で、冒頭に書いた摂食要害の死亡要因の中で防ぐ方法が確立されておらず、最悪周囲の力で何とかなるような問題ではないのが“自殺”なのだと思います。
しかも自分も周囲も「まさか私(あの子)がそんなことできるはずない、そんなことする私(子)じゃない」と思っている場合、どうしてもこのリスクに関しての危機意識が薄れてしまいます。
前回の記事にも書きましたが、当事者である私は病気の苦しみと周囲に迷惑をかけているという自己脅迫の毎日で、本気で実行するつもりはなかったものの常に『消えたい』という願望はありました。
いざ『いけるかもしれない』という瞬間が訪れた時も、その前日までは『そんなこと自分にできるはずがない』と思っていました。
しかし、頭痛や怪我を痛み止めで止めたりするような、摂食障害の症状を一時的に緩和する薬はありません。もちろん治す薬もありません。
“こうすれば改善する”と保証してくれるような方法もありませんし、
そもそも人それぞれ状況に合わせた対応が必要になるので、どれが正解になるのかは誰にもわかりません。
寝れば考えるのをやめられるかもしれないけれど、日によっては夢の中でも過食をしたり、友達にお菓子を差し出されたりして、うなされることもあります。
つまり、24時間毎日摂食障害から逃れることはできないのです。
それならば、生きることをやめたくなる気持ちがいつ本気になっても不思議ではないと感じていただけるのではないでしょうか。
また私は“躁うつ状態”であったため、自殺に走る可能性はゼロではない精神状態だったとえいます。
【支援者も24時間逃げられない】
そんな私が日々“生きる選択”を選び続けられたのは母(私の傍にいてくれる支援者)の存在が大きかったと思っています。
学校では友人は周囲から消えるように離れていき、ほかのクラスメイトともどこか壁があり、ほかに友人や頼れる人がいなかった私にとって、
病気を理解しようとしてくれて、症状が出ても情緒が不安定になっても人間関係を絶たないでくれて、何度も一緒に悩み試行錯誤してくれる母は、重いかもしれないけれど唯一の拠り所であり、心の依存先でした。
それゆえに母に甘えて症状が出た時に母に泣きついてしまったり、自分から泣きついたにも関わらず八つ当たりしてしまったり、食事のことで毎日のように喧嘩してしまったり……
たくさん負担をかけてしまっているというのは当時からずっと感じています。
その度に私は
『普通の女子高生のように過ごせていれば』とか
『みんなが罹っていないような厄介な病気に罹っているというだけで迷惑をかけているのに、さらに感情の矛先を向けるなんて申し訳ない』
と思っていましたし、いつ母に愛想を尽かれてしまうのかという恐怖と隣り合わせの毎日でした。
実際、母にとって当事者の私と過ごす毎日は計り知れないほどの負担だったと思います。
食事をするたびに同じようなことで喧嘩をし、食事はろくに摂らず、八つ当たりはされ、欲しい言葉がもらえない(当時どういう言葉が欲しかったのかは自分でもわかっていませんでしたが)と怒って泣き、私が自分ルールを守れない条件下になればソワソワしだして最終的にイライラして……
母も仕事をしている中、送り迎えやこだわりの強い私にお弁当を作ることも大変の一言では済まないくらい大変だったと思います。
そんな毎日が続けば、投げ出したくなったり、離れたくなったり、目を背けたくなった日もあるでしょう。
「どうして私だけ(私の子だけ)が」と思った日も、
「いつ終わるんだろう」と出口の見えない戦いに不安でいっぱいになる日もたくさんあるでしょう。
今聞けば、母は
“進んだように見えて進んでない(ように感じる)瞬間”や
“同じことを繰り返して全く前に進めていない(ように感じる)瞬間”
は特にしんどかったと言っていました。
でも、介護でいうデイサービスのように、一瞬でも誰かに“当事者に最も近い支援者”の立場を変わってもらうことはできません。
ましてや、「今日はいいや」という風に一時的に投げ出すこともできません。
そうなると当然支援者も毎日当事者のことで気が休まないと思います。
つまり、ずっと病気に囚われた状態であるのは支援者の方々も同じなんですね。
さらに私の場合、家族のなかで母にしか自分のことについて詳しく相談していなかったため、家族や親戚に母の代役がいるわけでもありませんでした。
私は病院から卒業するまでの期間が2年で済みましたが、
摂食障害という病気は基本的に長期間の戦いで、人によっては5年や10年、20年......と長い戦いになり、当事者も支援者も忍耐の連続です。
一方で私が唯一の拠り所である母に“切り離された”と感じてしまえば、生きる理由がなくなってしまいます。
それがもしキャパオーバーによる一瞬の爆発だったとしても、
常に迷惑かけているという自覚で自分を追い込んでいて神経がピーンと糸を張ったようになっていた私にとって、一度その瞬間を見てしまえばその糸はプチンと切れて「やっぱりそう思っているんだ」という最後のトドメにとなってしまいます。
【支援者の重要性】
持論ですが私は
人は誰かに必要とされていないと生きられない、もしくは生きていて良い理由がなければ生きられないと言っても過言ではないのでは、と考えています。
そういうことでいうと
私は母との人間関係が生きる理由になっていて、さらに母の言動から「自分の存在が迷惑だ」という決定打は打たれなかったことから、母の存在が消えたいと思う毎日のストッパーになっていたと思います。
だからこそ、厳しい言葉ですが、支援者の皆様にはどんなに辛かったとしても最後通牒を突き付けるようなことは避けて欲しいと願うばかりです。
とはいうものの、支援者も人間なので放りだしたくなったり余裕がなくなったりするのは当然のことです。
そのため私は、第二の患者である支援者にも、心の拠り所や一瞬でも病気と闘うストレスから解放される瞬間が必要なのだと考えていて(当事者は勿論のこと)、
今私がやっているバルーンアートやオンライン対談室の活動はそれが目的でやっています。
また、このブログや質問箱・対談室は、私の経験が同じ摂食障害に苦しむ方々の日々の不安や疑問を少しでも解消したり軽減したりしてもらえるきっかけになれれば良いなと思って活動しています。
自分や母の経験したことが誰かの苦しみに役に立つのであれば、私や母の苦しんだ時間は無駄にはならないと思えます。
だから私は摂食障害で苦しむ当事者や支援者へ向けて活動を続けます。
もちろん必ずしも私である必要はないのですが、
どんな人・ものでも心の健康を維持するために、頼れるものはすべて頼っても全く問題ないと思っています。
「そこに居るだけでいい」と言われると何だか何もできないと言われているように感じるかもしれません。
でも、見捨てずに近くに居てくれることが生きることを諦めないための最後の砦になるのです。
しんどい思いに耐えぬいてくれた母に感謝を、
そして今、病気という最大の敵と出口の見えない不安に立ち向かい頑張る人たちへエールを込めて。
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【バルーンアート】
閉鎖病棟入院経験とエンタメに力をもらった経験から、子供から大人まで幅広い年齢を対象に、入院生活に非日常なひと時を届けるべく、師匠に習ってバルーンアートを修行中です!
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