少々・しっかり・だいたい・いい感じに……

 

曖昧表現は様々なものがあります。

 

 

 

『摂食障害は真面目な人がなりやすい』という中の『真面目』もその一つ。

 

何をすれば『真面目』になれるのかはわかりませんし、

真面目じゃないからと言ってみんな『不真面目』であるわけではありません。

 

 

 

私はもともと上記に挙げたような曖昧表現は苦手の方だったようで、治療の段階でもたくさん投げかけられる曖昧表現にたくさん悩みました。

 

 

そこで私は今まで、治療時に特に多く言われたと記憶している『頑張る』『無理しない』『最近どう?』の3つをピックアップして、

果たしてそれらの言葉はそういう意味で捉えるべきか?という部分をそれぞれ自分なりの解釈として書いてきました。

 

 

 

そして今日は、それらの解釈を通したうえで改めて『曖昧表現』全体について考えてみようと思います。

 

 

 

 

【診察で曖昧表現を使うリスク】

 

曖昧表現すべてに共通して言えることは、人によってその言葉の解釈の仕方が違うという事です。

 

 

 

例えば、『いい感じにやっておいて』という曖昧表現では、

その『いい感じに』がどれほどの程度なのかによって完成したときの質に違いが出てきます。質が変わってくるのであれば、もちろんそれにかける時間や労力も変わってきます。

 

そうした曖昧表現を通して指示したがゆえに、指令する側と実行する側が『いい感じに』の捉え方に差が出てしまった場合、「ここまでしなくてもいいのだけど」とか「もうちょっと丁寧につくれなかったの?」などと言われることになるのです。

 

 

つまりこれは、お互いに前提として考えているものが同じか否かという点が確認できていない状態になります。

 

もっと簡単な言葉に言い換えると、コミュニケーション不足です。

 

 

 

 

このように曖昧表現によってコミュニケーション不足が生じるのであれば、私は問診において曖昧表現を多用することは良くないのではないかと考えます。

 

 

コミュニケーション不足が生じてしまうと、曖昧表現でのやり取りで前提の違いによるすれ違いが起きりやすくなります。

 

普段の会話ならちょっとした思い違いくらい、悪くても認識の差によるトラブルで済むかもしれませんが、

問診でそれが起きてしまうと、医者と患者の間で論点がずれてしまって患者の正しい情報を引き出せなかったり、せっかく病院に通っているのにすっとんきょうな対応をしていたりなんて事態にもなりかねません。

 

しかも摂食障害は心の病なので、ちょっとした認識の差で出た、すれ違ってしまったがゆえの言動が容態の悪化や、最悪の場合はそれが命取りになる可能性も無きにしも非ずです。

 

 

 

特にそれがエスカレートしていってしまった結果が、『解釈の強要』になります。

 

これは『真面目な子②-2「無理しないで」とは』で出てきたような

“無理をしない”の基準を私に強要して、しつこく休むことを勧められたなどの場面がそれに当てはまります。

 

 

あれは、私と音楽の先生がどの程度を“無理をしている”と感じるかどうかに差があったために、音楽の先生の基準で話されたときに自分がそれについていけなくなってしまっています。

 

 

2人の間の会話なのに最初から置いて行かれたような、押し付けられたような印象を受けると“もう相手に自分の話をしたくない”と思ってしまうのは、私だけではないのではないでしょうか?

 

 

そしてそれが心療内科や精神科、カウンセリングの問診で起きてしまうと……

と考えると、もうそのコミュニケーションの大切さが伝わるのではないかと思います。(家族や友達間でも同じことが言えます)

 

 

 

 

【相手を『知る』ということ】


ではそうならないためにはどうしたら良いのかというと、

やはり大きいのはコミュニケーションをとって相手のことを知ることだと考えます。

 

 

ここでポイントなのが、相手を『知る』という事です。

私は『知る』というのは『共感する』や『理解する』というのとは少し意味合いが違うと考えています。

 

 

私にとってそれぞれの言葉は

 

『共感する』=相手の感情と同じような感情を自分も抱くこと

『理解する』=相手の言動を受け入れ許容すること

『知る』=お互いが相手のことについて納得すること

 

です。

 

 

 

少しわかりにくいと思うので例えを使って説明すると、

互いの考え方や価値観・言葉の捉え方を「好きな食べ物」つまり「味覚」に置き換えます。

 

味覚は人それぞれ違いますから、自分が苦手な食べ物が実は相手の大好物だったり、同じものが好きでも感じ方が違ったりします。

 

 

 

私が唯一苦手とする食べ物がパクチーなのですが、主治医の先生は逆にパクチーが大好物な人だとします。

 

 

ここでいう

 

『共感する』とは、

パクチーの美味しさを語り合い「そうそう!ここが良いんですよね!」と言い合う事で、

 

『理解する』とは、「へえ、あなたはパクチーの香りが良いんですね。そう言われると分かる気がします。」という事。

 

そして『知る』とは、「その感覚はまるでわかないけど、あなたはそういう味が好きなんですね」と知る事。

 

 

 

できることなら『共感』や『理解』の方が良いかもしれませんが、必ずしもそういう人に出会えるとは限らないし、医者は患者を選ぶことができません。

家族も患者の考え方を思うように操ることはできません。

 

しかし、患者の感覚を『知って』納得することはできます

 

 

 

そして納得することができればまず、互いに相手の意見を否定することも期待外れになることも無く、信頼関係が築き上げやすい土台が出来上がります。

 

 

一方、曖昧な言葉でぼやかして納得したふりをして、ガタガタなその場しのぎの土台であれば、

 

いざすれ違いが起こってしまったときに余計に

「あの時わかったって言ったじゃん!」となって、患者側としては主治医に裏切られたように受け止めてしまいます。

 

 

これが前回書いた『医者のことを敵対視する時期がある』というのに当てはまる部分なのだと思います。

 

 

 

 

『相手がこういう考え方なんだ』という事を知るだけで、

互いに妥協点を作ったり、根本的に土台が作れそうにないから違う人に頼ったり(主治医や病院を変えるなど)、相手のような考え方になりたいと自己を変えようとしてみたり……

 

土台を作った次に自分が何をすべきかが自然とある程度定まってくる気がします。

 

 

 

【コミュニケーション の土台づくりを省かない意識】

 

ここで忘れてはいけないのが、『自分の意見や考え方』を自分で説明できるようにしておく大切さです。

自分が普段どんな考え方をしているのか?曖昧な表現をどういう意図で使っているのか?

それが分からなければ、相手とのすり合わせはできません。

 

また、普段から自分と相手との考え方の違いを意識していれば、『こういう考え方の人もいるんだ』という受け取り方がしやすくなるというのは私の実体験です。

 

 

 

こうして考えると、この相手のことを知る段階は『土台作り』なだけで、土台作りができて初めてコミュニケーションを始めることができると言えるのかもしれません。

 

 

 

相手がどんな人か、どんな考え方か、なぜそう思うのか、自分との違いはどこか、相手はその言葉で何を伝えようとしているのか。

 

それを互いに考え納得した形からのコミュニケーションをする。

 

こうして考えるとだいぶ信頼関係が出来上がりやすく思えてきますよね。

 

同じ言語を使っていれば、同じ単語を自分と違う意味で言っているかもしれないなんて思う事はめったにないですが、少し意識するだけで天と地の差があります。

 

 

 

土台ができあがったら、次はコミュニケーションの段階です。

 

前回の記事でも書いたことですが、

このコミュニケーションにおいてのポイントは一方的にならないことだと私は考えています。

 

理由はわかりませんが(誰か知っている方がいらっしゃれば教えてください)

医療従事者が患者に対して自分の話を持ち出してはいけないというルール(?)があるのは担当の主治医の先生や管理栄養士さんのお話をしている中でわかりました。

 

 

でも一方的に“こちらが喋らされている”という感覚を感じた時、相手がどんな人なのかもよく分からない時、互いの中で信頼関係が築きあげられるとは思えません。

 

実際、それが私にとっても相手(医療従事者や家族)を疑うという行動や思考になりやすくさせていました。

 

だから尚更、人の心を治すには、人が人の中に飛び込む必要があると私は思っています。

 

 

 

 

【曖昧表現の対策】


話は振出しに戻りますが、

コミュニケーション不足によってすれ違うことを避ける方法として、私が過去3回で書いた記事の中の“曖昧な言葉に対しての対策”もその一つと言えます。

 

ざっくりと今までの対策をまとめると

  • 言葉の意味や考えを相手にはっきり聞く
  • 曖昧な言葉に対しての定義づけをする(ブログのように考察する、ルール決め、メモするなどしてどういった返答をするか決めておくetc.)

です。

 

細かいことを言えば、

1つ目は土台を作る段階で相手を知るために使って

2つ目はコミュニケーションをとる中で投げかけられた曖昧表現や相手視点の考え方を上手くかわす方法なのですが……

 

 

 

 

また、もう一つ新たに曖昧な言葉を上手くかわす考え方として、

『一時の感情と同じように考える』という方法もあります。

 

 

この考え方は私の師匠の受け売りですが

 

例えば『真面目』『頑張っている』という言葉はその人本人の性格を指している言葉だというよりも、

「あの時は真面目にやったな」「あの時は頑張ってたよ」などその人の一定期間のこと、いわば感情のようなものだと捉えるというものです。

 

 

そうすると、ただそういった“感情”がその人の前にいた時にたまたま見えていただけなので、

実際自身のことをどう思っていたとしても、誰かに自分が真面目だとか頑張っているだとかいう声をかけられたときに『本当に私は真面目なのかな』『頑張れているのかな』と罪悪感にも似たような感覚になる必要はなくなります。

 

 

師匠は「人は多面体だから、真面目な部分もあれば不真面目な部分もあって、頑張っている時間も頑張らない瞬間もあるのは当たり前の事。」とよく仰いますが、

私はその時にストンと自分の中に腑に落ちた感覚があって、本当にその通りだと思いました。

 

 

「嬉しい・悲しい・楽しい」と同じような感覚で「真面目・頑張る」を受け止める。

嬉しい時間を少しでも多く過ごしたいと思うように、そうでありたいと思える時間を増やすように心がける。

 

それだけで、私はこの“真面目”や“頑張る”という言葉に納得することができました。

 

 

 

 

【曖昧表現との付き合い方 ーまとめー】


ここまでいろいろ書きましたが、きっと中には『はっきり言われるのが苦手』『寧ろぼんやりした言い方の方が柔らかくて好き』という方もいらっしゃると思います。

 

 

今回書いたことも曖昧表現が苦手な私が、私の知っている視点の中で考えた故に

『治療において曖昧は如何なものか』という向き合い方になっているというだけなので、一概にそれが良いはずだ!というわけではありません。

 

 

互いに“人”ですから、土台作りの段階で相性が合わないことも当然あります。

 

そんなときは過去に『摂食障害と病院』というブログでも書いたように、

自分に合う頼れる誰かに出合えるまで点々としても全く問題ないのです。

 

 

 

繰り返しになりますが、最も大事なのは相手と『土台作り』をすることです。

 

『共感』できるのか

『理解』してくれるのか

『知って』受け入れてもらえるのか

根本的に『合わない』のか……

 

それを見極める力と、

曖昧な表現は特に、自分が当然だと思っていることが実は全く違う捉え方である可能性が高いという意識を、当事者も医療従事者の方々も家族も支援者も、忘れてはいけない気がします。

 

 

『十人十色』という言葉があるように、一人一人性格も違えば考え方も違い、それと同じように言葉の捉え方だって違います。

 

だからこそ、特に問診や治療に関わる話題をする際に曖昧な表現をするときは、相手との意思の疎通が取れているか確認する配慮が必要になってくると私は思っています。

 

 

 

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