以前、摂食障害は食事以外にも様々な合併症や困難が起こるということをお話ししました。
私の体験したものとしては、
気温過敏・ほてり・むくみ・脱毛・体毛増加・皮膚の乾燥・低血圧・低体温・不 眠・抑うつ(のようなもの)・集中力低下・軽度の自傷行為・生理不順・筋力低下・脳の萎縮
などが挙げられます。
もちろんこれだけ様々なところに支障をきたせば日常生活もままならず、毎日それぞれ対策をしながら何とか生活を送っていました。
とはいっても体が不調であるとか、ずっと身体的に苦痛に思うという感覚だとかははっきりとは自覚しておらず、
それよりも食べ物のことと太りたくないという思いでいっぱいいっぱいだったので、いちいち気にしてられないというのが正直なところです。
しかし、そんな中でも食べ物のことと同じように毎日はっきりと苦痛に感じることがありました。
それは”不眠”です。
睡眠障害は、不眠症・睡眠関連呼吸障害・睡眠関係運動障害・睡眠時随伴症・レストレスレッグス・中枢性過 眠症......など様々ですが、
私の場合は“不眠症に近い症状”でした。
※冒頭に書いた合併症のなかもそうですが、私は主治医の先生から『摂食障害』以外の診断を受けていないので ここはあえて曖昧な表現にします。
具体的には、途中覚醒と熟眠障害の症状が出ていました。
また、日中は気づいたら寝ていることや逆らえない眠気に襲われることが多くありました。
ということで今回は、
・睡眠障害の症状
・(途中覚醒、熟眠障害)それぞれの対策
・5つの原因(と対策方法)の考察
・今でも残る支障
・現在の問題に対する対策
・終わりに
と言う流れでお話ししたいと思います。
■睡眠障害の症状
途中覚醒というのは、眠りが浅く夜中に何度も起きてしまうという状態です。
私は大体1時間毎に起きては眠り、を繰り返していました。
一般的には一度起きたらすぐに寝付けないようですが、私は昼夜問わず目を瞑っていれば数分後には眠れるようになっていたので、ストレスを感じるのは目が覚めた時だけでした。
また私は大通り沿いに建っているマンションに住んでいるのですが、私の地域柄、
夜になると外は退勤する方だけでなく酔っ払った人たちや所謂“不良”と言われる人たちが多く通り、暴走バイクなども走ります。
そのため叫ぶ音や車の音、会話の音までにも敏感になって、ひどいときは数分ごとに起きたり睡眠覚醒する間隔が1時間未満だったりするときもありました。
さらに、一度起きるとストレスなのは「眠った感じがしない」というもの以外にもう一つ要因があります。
それは、私がやせ細っていたために骨が床と擦れて床ずれが起きていたということです。
床ずれとは、布団などにあたる部分の皮膚が長い間圧迫されることでそこの血流が悪くなり、炎症を起こした後にそれが進行して傷になってしまう現象です。
介護をしたことがある方は『褥瘡(じょくそう)』と言う言葉の方で馴染みがあるのではないでしょうか。
おそらく全身の筋力が低下していたのが原因なのではないかと考えているのですが、
私は当時、寝返りを打つことがなく、寝ている時は全く動いていませんでした。
つまり、夜に寝たら朝(もしくは途中覚醒時)はその格好で起きるということです。
そのため、ずっと一緒の姿勢でいるが故の全身の痛みで起こされることもしばしばありました。
そして、骨と皮だけの私が寝返りもできず長時間同じ姿勢で寝ていると仰向けになったまま一晩、床が背骨や尾てい骨に当たっている状態になります。
私はベッドではなく布団で寝ていたので直更、床と全身の骨が当たり痛くてとても寝られる状態ではありませんでした。
こうして、その部分に長時間の圧迫が生じて床ずれになってしまったのです。
睡眠障害の衝動で出ていた2つ目の熟眠障害というのは、
言葉の通り熟睡感がないことで、朝起きても寝た感じがせずいつの間にか朝になってしまった、という感覚です。
最初は疲れを感じていた時期もありましたが、それが毎日続くためか、いつの間にか慣れてきてきてしまって、それが当たり前になった頃には疲れは感じなくなっていました。
感覚のイメージでいうと、徹夜をした時に途中までは眠くてもいつからか目が冴えてきて眠気が飛んでしまった時の感覚に近いです。
徹夜での覚醒体験をしたことがあった方ならば、そういった状態がほぼ毎日続いている状態と言えば大体ご想像していただくものは間違っていないと思います。
眠りが浅いからなのか、私のこだわりが強いからなのか、
どんなに途中覚醒しても寝るのが遅くても必ず朝の5時には起きて、ストレッチと軽い準備運動、軽い筋トレを行っていました。
ただ人間である以上、何か不足があれば別のところでバランスを取ろうとします。
したがって、朝起きた時は眠気を感じていなくても、じっと動かずにいる送り迎えのときや登校してすぐのとき、授業中や集会の時間などは
自分でも寝てしまっていたことに起きてから気づくような居眠りをしょっちゅうしていました。
そうすると授業はまともに受けられないし、やりたいことも終わらないし、テストも時間ギリギリになります。
テストに関してで言うと、酷い時はあと15分のところで起きて8割も問題が残っているなんてこともあ利ました。
もちろん休み時間はクラスメイトのようにわいわい過ごすことができず、ずっと自分の席で伏せて寝ていました。
■それぞれの対策
一つ目の途中覚醒の対策ですが、残念ながら騒音や寝返りに関しては問題自体をすぐに解消することはできません。
なぜなら、個人の力で治安を良くするのができないのは言わずもがな、寝返りができるようにすることや骨が出ない程度に脂肪をつけることというのも現実的ではないからです。
そこで私は、騒音は仕方がないにしても、せめて床ずれに対する対策だけはやってみることにました。
具体的に言うと、床が各箇所の骨に当たるのを防ぐために、背中や腰の下にいくつもの柔らかくて比較的厚めのクッション、尾てい骨辺りにはドーナツ型クッションを敷いて床に体がつかないようにしました。
その効果は絶大で、寝るときの痛みにはあまり悩まされることなく、床ずれも悪化せずに済みました。 今では床ずれの跡もすっかり消えています。
次に熟眠障害に関してですが、日常生活で自分の計画通りにいかないイライラはともかく、さすがに学校生活で授業やテストなどに影響するのは見逃せませんので、こちらも何かしら対策が必要です。
そこで私がまず行ったのは睡眠薬を処方してもらって途中覚醒してしまう夜寝る前に1錠飲んでみるという方法です。
しかし睡眠薬の効果はあまりなく、途中覚醒してしまうことには変わりはありませんでした。
効く時間がずれてしまっているのかもしれないと飲む時間を早めてみても効果を得られることはなく、薬の数が無駄に増えるのもよろしくないとのことで睡眠薬での治療は早々に断念しました。
■5つの原因(と対策方法)の考察
薬で睡眠が確保できないとわかった後は、薬の治療をしない代わりに睡眠がうまくできない原因や対策を主治医の先生と考えてみて、薬ではないアプローチをいろいろと試してみることにしました。
ざっとあがったものは
夜更かし・骨が床に擦れることでの痛み・エネルギー不足・体温・カフェインの5つです。
まず“夜更かし”ですが、
当時私は睡眠時間や起床時間に関してのこだわりも強く、自分ルールでは『夜遅くに寝ると太る』『毎朝同じ時間に起きて日光を浴びないと太る』『体内時間が狂うと太る』と思っていたので夜は11 時には必ず布団に入るようにはしていました。
そのためこの可能性は除いて考えて良いものとなります。
※補足
夜更かしが肥満の原因とされているのは普段の食事に加えて夜食を食べる機会が増えるからであり体重増加と 直接的に結びついているわけではありません。また、体内時計も自律神経が乱れて日中の活動意欲低下→運動 不足→消費エネルギー量低下という間接的な影響になります。
2つ目の"骨"に関しては、先ほど言ったようにクッションで対策することで解決することができました。
3つ目の"エネルギー不足"ですが、これは“食べないことで体が省エネモードに入っている”という可能性を考えたものです。
これは食べないことには確かめようがないので直ぐに実践するのは難しかったのですが、活動するためのエネルギーに変換されやすい糖質を摂っておらず、予備燃料の脂肪さらには最後の手段である筋肉もないとすれば、自然と消費エネルギーを少なくしようと体がバランスをとっているという可能性は高い気がしました。
4つ目の"体温"は、たしかに熱のもととなる食べ物を食べていなかったり、脂肪や筋肉が殆どなくて血行が悪くな っていたりしたことから私の体は常に低体温でした。
体温は睡眠の質に影響するので、適度な体温で寝床に入ることが効果的だと思われます。
そのため私は、夜は必ず湯船につかって温まる・首元や目元や腰を温熱シートで温めながら眠る・靴下を履く などの対策をして体温を逃さないように意識していました。
中には靴下を履いて寝ない方が良いとされる方もいらっしゃるようですが、私の場合ははかないと血行が悪すぎて爪が紫色になったり足がくすんだ暗い色になったりしてひどいときは動かしにくくなることがあったので、冬は必須アイテムでした。
最後5つ目の"カフェイン"に関しても、覚醒作用や利尿作用があるため寝ている間に起きる原因になっている可能性が高いということを言われました。
確かにその時の私はコーヒー(カロリーを気にして毎回ブラックでした)にハマっていて、一日3杯以上は飲むし、加えてペットボトルのコーヒーも飲んでいたのでかなりカフェインを摂取していたと推測できます。
またイライラの原因にもなるそうで、母娘ともにコーヒーばっかり飲んでいたからか喧嘩することがたくさんあった原因の一つになっていたのかもしれません。
コーヒーは好きなのもあり、すべてをやめるのはしなくていいとのことで“1日1〜2杯を意識してみよう”と主治医の先生と決めました。
これのおかげかどうかはよくわかりませんが、カフェインに関しては眠りに関しての効果はあまりなかった一方、イライラや喧嘩に関してはかなり緩和されたように感じます。
もし同じようなお悩みを抱えていたらぜひ参考にしてみてください。 (主治医の先生と相談するのが一番だとは思いますが......)
■今でも残る支障
人が睡眠をする目的は
疲労回復・怪我回復・体の成長・記憶固定(嫌なことがあったら眠れないのは人の本能なんですね)・ストレス発散......などです。
疲労はエネルギー不足で常に力の抜けた感覚だったのでよくわかりませんが、
集中力の低下や『寝たい欲求』『日中に寝て計画通りに進まない』というストレスにはかなり影響していたと思います。
皆さんも薄々お気づきではあると思いますが、一番の大きな原因はやはり『食べること』だったのだと思います。
体重が増えれば血行も良くなるし、エネルギー不足にもならないし、体温も維持できるし、体も痛く無い。
私自身、そのことには最初から気づいていましたが、
そこが私の一番超えたくても超えられていない壁であり、 目をそらしてしまっていた部分でした。
主治医の先生はそれを見越していたのか(は分かりませんが)、「体重を増やせば良いんだよ」とは一言もおっしゃいませんでした。
寧ろ睡眠と食事を分けて考えて、私と一緒に“今の状態でできる対策”を考えてくださいました。 最も見たくない壁である「一番の原因」をわかっていて、少しずつしかそれと向き合うことができない私にとって、その対応は救いでした。
体重が平均的になった今では、夜は一度も途中覚醒することなくぐっすり眠ることができています。
家でクッションをいっぱい敷いたり出先にクッションを持ち出したりする必要はないですし、外の音に影響される事も殆どありません。
しかし困ったことに、一度おかしくなってしまったものは取り戻すのが大変なようで、 体の冷えや睡眠の悩みは今でも少し残ってしまっています。
未だに比較的体温は低めで、お店で検温するときなんかも体温が低くてエラーが出て、スムーズにお店に入れない時もしょっちゅうあります。
睡眠前に体温が低いと眠りの質が悪くなりますし、起きてすぐに体温が低いと感じると、意欲の低下や気持ちが憂鬱になるなどが起こります。
また日中に急に寝落ちる現象もまだ解決しておらず、気づかないうちに数時間(ひどいときは半日相当)寝ていたとか、授業中に何の前ぶりもなくいつの間にか寝ていたなんてこともよくあります。
今は通院もしていないし、以前よりひどくはないので大学側に対応をお願いするほどではないと思っていますが、 授業中の寝落ち・オンライン授業に遅刻しそうになる・(会議やプライベートで)約束時刻に遅れそうになる、などは良くない事として見逃せません。
しかし、前と違って何も支援のない中で生活することを選んだ以上、そのような状況下でこの問題と向き合う必要があります。
■現在の問題に対する対策
実は去年から今にかけて、私は手強い急な寝落ち問題に対して抗う実験を重ねてきました。
私が今までやってきた方法は
朝起きて日光を浴びるように意識する・G〇TSBY やハッカ油を顔に塗る・強い刺激の目薬をする・冷えピタを 使う・ペン先で指に強めの刺激を与える・炭酸飲料を飲む
などです。
しかし現実はそう簡単ではなく、すべて毎回うまくいく訳ではありません。
よっていろいろと試行錯誤した結果、私自身が根本的に日中に眠気が来ないような体質になることが最も目指すべきゴールなのだという結論になりました。
※なお、ペンで刺激を与える方法はやりすぎると自傷行為につながるので、正直やらない方が良いです。 私は普通に痛いだけで効果がないのなら、きれいな手になれるように努めた方が良いと判断しました。
今は課題やらなんやらで夜更かしすることも多いですし、自分が自覚していないだけでじっくり考えればそれ なりにストレスの原因は溜まっているのだと思います。
これといった原因はまだわかりませんが、とりあえず『周りの迷惑にならい且つ学校に影響が出ないレベルに持っていき維持する』が今の目標です。
今はこれほど睡眠に悩まされている私ですが、実は中学校までは一切睡眠のことについて考えもしていなかったほど苦労していませんでした。
どれくらいかというと、
どれだけ部活や駅伝や陸上で運動していたとしても、自習や授業でクラスメイトのみんなが寝ているのを見て 「なぜみんな眠くなれるのだろう?」と思っていたくらいです。
そんな私がたった一度体のバランスが崩れることによって、大きな問題が解決したと思っても バランスが崩れたままなかなか戻らない、という状態に陥っているのです。
体重が標準体重になったら、普通に食事がとれるようになったら(今でも糖質は積極的には取れませんが)、 熟睡できるようになったら、自然と睡眠も治るはずだと思っていた私は甘かったです。
■終わりに
睡眠のみならず食事に関しても完全に元通りなわけでは無いですし、 体の機能に関しても他のところでまだ安定していないものがあるのでこれは来週にお話します。
こう考えると、摂食障害の『回復』の基準ってどこになるのかって疑問に思いますね。
“摂食障害は回復するのに数年〜数十年かかる”と言われていますが食べ物のことから回復したから戦わなくてよくなる わけでは無く、病院の卒業は過程でしかないことを思い知らされました。
病気の影から抜け出したように思えても、摂食障害というストレスの逃げ道を手札として持ち合わせてしまった以上、それを知識や教訓として持っておくか、また手段として使ってしまうかの戦いが始まります。
これからも自分自身が負けないようにもっと強くなる必要がありそうです。