【日常生活の困難〜暮らし編〜】の最後にお話しした”睡眠”の問題のように、

どうしても体に出る影響は食事と同様、自分でコントロールできないので、学校では担任や各教科担当の先生にその旨をお伝えして大目に見てもらっていました。

 

とはいっても成績に関しては数値を不正に上げることは不可能なので(できたとしても、してもらいたくないので)、勉強にはかなり熱心になりましたし、テストの度に出る提出物や体育の見学レポートは一切手を抜くことなく取り組みました。

食べ物のことを考えているとき以外は殆どを勉強に費やしていたし(普段集中できない分それくらいやらないと追いつかない)、食べ物のことを忘れる手段としても利用しました。

 

 

成績以外でも、冬の学校では家のようにストーブを近くに置いたりもできないし、換気で窓を開ける・移動教室・体育の屋外授業などで寒さにさらされる時間はたくさんあります。

また、夏の冷房は一人のために切ることはできません。

 

そのため、担任や保健室の先生とよく相談して冷房や扇風機があまり当たらない席にしてもらったり、冬は窓際を避けた席にしてもらったり、特別に教室内で手袋を着用するのを許可してもらう・移動教室でブランケットの持ち込みを許可してもらうなどをしてもらいました。

 

 

 

最初は自分が病気であることを言うのに抵抗があって、保健室の先生だけに相談に行きましたが、やはり担任をはじめ学年全体・授業の教科担当の先生などにも把握してもらわなければならないという事で、保健室の先生と担任を介して私のことをお話ししてもらいました。

それで授業中や成績に関しては各教科の先生なりに対応をしてくださったので、私も何とか学校に通い続けることができました。

 

一方、その中でもとても辛かった対応もあって、

音楽の授業で発声練習をしようというときに、みんなの前で

「あおいさん、体調悪いなら座ってていいよ」と言われたことがあります。

心配してくださったこと自体はとても嬉しかったのですが、それでみんなの注目を浴びるのが恥ずかしかったし、何よりも私はその時全く体調が悪いとは感じておらず一緒に発声練習をするつもりだったので、そのまま“やる”という意思を示しました。

それにも関わらず「いや、本当にいいから!」と私に座るように促したのでしぶしぶ座った私に「そのまま伏せてていいからね」とトドメを刺しました。

みんなが私を見ているし、みんなと一緒にやりたいこともやれないし……と、とても悔しかったのが鮮明に思い出されます。

 

 

 

他にも理解されにくい病気がゆえに、食事や体型に関する言葉や「病気なのだからできない」という決めつけによる辛さはたくさんありました。

どれも私を心配してくださったり、気を使ってくださったりしているのは分かっていたからこそ、はっきり言い返すことなく抱え込むことも多かったです。

 

 

ではどうすれば良いのか?

それは、その病気のことと当事者のことを「知る」ことです。

しかし、当事者は会う人会う人に事細かに説明することは時間的にも心の余裕的にも不可能です。

インターネットで調べても典型的な症例くらいで、人それぞれ症状は違うので100%当てはまるとも限りません。

 

そんな時に重要になってくるのが”特別な目で見ないこと”です。

つまり、必要以上に力んで身構える必要はないということです。

 

実は、摂食障害は考え方によっては他の病気とあまり違いがありません。

ですから、何か特別アドバイスや言葉をかけて欲しいのではなくて、「今、当事者が何に困っているだろうか?」という部分に目を向けて、補助してほしいのです。

 

 

保健室の先生方(一人目の先生が移動になって二人お世話になりました)には本当にお世話になりました。私がどうしても耐えられなくなった時は自習するための環境を整えたり、雑談をしてくださいました。

かなりの頻度で相談にも行き、そのたびに何か特別どうするでもなく、他の生徒さんと同じように寄り添ってくださいました。

 

私の高校3年間でお世話になった担任もとても良い方々でした。

特に一番症状がひどかった1,2年生の時は感動するくらいスマートな対応をしてくださって、普段は他のクラスメイトと同じような対応をしつつ、さりげなく補助してくださったり、私が困って学校側にやって欲しいことをお願いしに行くときも、どうすれば良いか一緒に真剣になって考えて下さったりしました。

 

 

対して、当事者や当事者の家族の方もしっかり学校側に相談するのは重要です。

症状や診断結果、診断の詳細や日常生活で困ること、対応を考えていただきたいことなどを明確にし、

やれる範囲で協力してほしいという旨を伝える作業は、今後当事者が社会的健康を維持するためにも必要不可欠になります。

そのために主治医の先生にも診断書を出してもらうなども必要です。

 

最初は抵抗があるかもしれませんが、いきなり担任や学年の先生に相談と言わずとも、保健室の先生と当事者とそのご家族で相談することから始める形からで良いと思います。

保健室の先生は学校の校内の先生と連携が取れる、専門知識を持った先生です。比較的理解してくださる確率は高いと思います。

また、学校は生徒のプライバシーを守ることは保証されているはずなので、言われたくない事や言われたくない人はしっかり伝える方が安心です。

 

日常生活を営む上で頼るべきもの・頼れそうなものは最大限に活用した方が当事者の治療環境を整えるのに大きな一歩になります。ぜひ勇気を出して相談に行ってみて下さい。

そして、もしそのような協力を求められたとしたら、当事者自身が困っていることに注目してできる限り協力していただきたいです。

 

 

 

補足ですが、当事者と当事者家族の方は、常備しておくものにお薬手帳と保険証を加えることをお勧めします。なぜなら、当事者は自身の不調に無自覚なことが多いからです。私も人に言われて気づくことや、人に言われても「そんなことない」と思っていたことが多かったです。

 

しかし当事者の体は栄養失調状態なので、体がいつどんな悲鳴を挙げるかわかりません。

急に体調が悪くなったときにどんな病気を持っていてどんな薬を飲んでいるか把握できれば、緊急事態の時に治療がスムーズにいきます。

 

実際、学校で体調が悪くなったり怪我をした時に母がすぐに迎えに来て病院に行くこともできたし、

持ち歩いているのですぐに取り出すことができ夜中に体調が急変してもすぐに出して病院に駆け込むことが可能です。

災害の避難時にも役に立ちそうですね。

 

 

 

栄養失調はいつ何が起こってもおかしくない状態です。また、みんなと同じ環境で何不自由なく過ごすのは至難の業です。そして本人は無自覚だったりコントロールできないので、どうしても周りの手助けが必要です。

 

様々な失敗や試行錯誤を経て、

自分が治療しやすい環境を整えるために、自分なりの対策を見つけることや協力を訴えることは怠らない方が良いと感じました。

 

治療や協力の参考になれば嬉しいです。