今回は私が摂食障害になった大きな原因である『ダイエット』についてお話します。

 

 

私が中学生の時はバスケ部に所属していて、さらに運動部強制参加の駅伝や陸上練習も行っていたために、かなり筋肉質な体をしていました。

食事も脂っこいものや主食を多く摂り、味が濃いものやお菓子、ジュースもたくさん食べたり飲んだりしていました。たくさん食べたくさん鍛える生活は、体を大きくしていきました。

 

中学入学当初は比較的華奢で力は弱く運動が苦手だった私ですが、この数年で同級生の女の子に「あおいが男子だったら彼氏になって欲しい」なんて言って頂けるほど男前女子に育ちました。

激しい競技の一つであるバスケで育まれた精神が影響したのか、当時は攻め気な姿がかっこいいと思っていたので(笑)、その言葉が嬉しくて「私が君を守るぜ!」くらいの勢いでした。

 

 

 

そんな私がダイエットを意識し始めたきっかけは、運動をしなくなった受験期に突然訪れました。

私は多くの場面で周りから「しっかりした体だね」「強そう」「かっこいい体だね」とガタイの良い体を指摘されたり、「女子は40kg台じゃなきゃ女子とは言えない」「前は細かったのに…」「肩幅広いよね」などといったストレートな言葉をかけられたりしていました。

今までは「うるさいなあ」「運動部だから仕方がないじゃん」と、嫌な気持ちにはなっても、さほど気にしてはいませんでしたし、ダイエットをしようとも思っていませんでした。

 

しかし部活も引退し、食事量は運動していた時と同じ量のまま、土日は受験勉強で家にこもる生活が続き、徐々に筋肉質な体に脂肪がついてきた受験期に、その日は訪れます。

それは塾の授業を受けている途中、椅子の背もたれに自分の背中の肉が乗る感覚を覚えた時でした。

その瞬間、今まで言われてきた数々の言葉が頭をよぎり、“ダイエットをしよう”と決めたのでした。

 

まず塾から帰ってすぐに自分の体をチェック。筋肉で太くなった足、服からはみ出たおなかの脂肪や太い二の腕、顔の大きさ……今まで気にしていなかった部分が次々と大きく醜く見えて、その日のうちに母に「ダイエットをする」と宣言しました。

 

 

 

具体的に始めたダイエットの内容はカロリー制限です。

朝はグラノラ、塾の長期講習で食べるお弁当はウィダーインゼリーとソイジョイ1本~2本だけ、夜はコンビニスープを一つ飲むだけ。給食は主食を減らしました。

しかし、大好きだったチョコやジュースはやめられず、

さらに受験勉強に集中するために祖父母の家に住まわせてもらうようになってからは、祖母が出してくれる美味しい食事やおやつをエネルギーにしていたので、ダイエットはいつの間にかやめてしまいました。

 

 

 

受験がひと段落してから、私は実家に帰って再びダイエットを始めます。

なぜ再開しようかと思ったかというと、“高校デビュー”をたくらみ始めたからです。

実家では祖母の美味しい食事やおやつの誘惑もないし(家族の生活リズムの違いや我が家の男性陣の極端な偏食から、食事の内容や時間はバラバラでした)、自分次第でダイエットが成功するか否かが決まる!と思って、当時ガタイが大きかった私は、高校入学の時までに華奢な女の子になろうと決めました。

 

 

ここで危険なポイント1つ目です。

この時点で私は、痩せようというフワフワとした具体性に欠ける目標を立てていました。

どこまでいけば“痩せた”ことになるのか、痩せた時にどうするのか、については全く考えずに行動してしまっているのです。自分のなかで最終的なゴール地点を決めずに周りの評価に頼っていたため、結果的に『自分がどうなりたいのか』という部分を見失ってしまう結果になりました。

 

 

ダイエットを再スタートするにあたり、まず初めに行ったのは情報収集です。インターネットでひたすら『ダイエット法』を検索し、筋トレ・有酸素運動・カロリー制限・グルテンフリー・糖質制限・脂質制限・燃焼スープ・白湯・食べ過ぎた翌日の食事……様々な情報を取り入れ、早く痩せるために沢山のダイエット法を試しました。

ちなみに、上記の中でグルテンフリー以外はすべて試しました。

 

 

ここで2つ目の危険ポイントです。

私がダイエット情報を集めていたのはTwitterやインターネット。(Instagramは無かった時代……)

そこに書かれていたものは、具体的なダイエット方法とその根拠。人の体の仕組みや、食品に含まれる成分などに基づいて解説されていました。

 

その説明は殆どが研究結果や専門的なワードを根拠として説明されていたため、とても説得力がありました。中には著者の肩書が“栄養士”“管理栄養士”“ダイエットインストラクター”など、その道のプロを謳う方々の記事もあり、私は懸命にその知識を自分に反映させようとインターネットに発信されるダイエット記事を漁りました。

 

しかし、ここで気づくべきだったのはその根拠の情報源はどこか、という事です。

『○○の研究結果によると……』なら

“その研究は実際にあるのか?いつの研究か?信頼できる研究所か?”という部分

『○○を食べれば○○反応が起こって……』なら

“その成分はどれほどの効力なのか?その成分だけをとっていれば働くのか?過剰摂取で弊害は出ないのか?どの資料に基づいているのか?”という部分

さらには、そもそもこの人は本当にその道のプロなのか?という部分まで疑うべきでした。

 

その根拠自体が実際にどれほど信憑性があるのかはあまり考えず、「ほうほう、なるほど」と、納得してしまってはいませんか?

 

 

ちなみに、現在私は管理栄養士を育成する四年生大学で栄養を学んでいますが、『○○を食べれば痩せる!』という講義を行う教授はいません。

どの教授も口をそろえて『バランスの良い食事を摂って運動すれば健康になれる』『ある成分だけを多くとっても意味はない』と仰います。実際勉強をする中でも本当にその通りだと思いますし、そんなマジックフードや薬があればメタボリックシンドロームで苦しむ方はいなくなるはずです。開発した人は世界的に称えられて歴史に名を刻めます。

 

だからこそ、栄養士や管理栄養士など食のプロを名乗る人が『○○を食べれば痩せる』などという記事を発信していると、違和感を覚えます。

 

 

でも中には、記事の中に摂食障害への注意を訴える文を入れている方もいらっしゃいます。

私がダイエットの情報を集める中にもたくさん目にしました。

しかし、その時の私は

「前回挫折したし、私はそんなにストイックにできないよ。」「一度ガリガリになれれば、その時に沢山食べて太っても標準体重くらいになれるじゃん!」「食べられなくなれるんだったら苦労しないわ~」なんて思って、自分には一切縁のないこと、寧ろ「なれるもんならなってみたい」などと言って摂食障害を軽視していました。

 

それが後に自分を苦しめるとはつゆ知らず、カロリー制限・糖質制限・時間制限・有酸素運動と筋トレ・月に一度ほどのペースで燃焼スープダイエット、という方法に落ち着きました。

 

具体的には、

カロリーは一食200~300kcalになるように計算。米は一日80gまで。パンはブランパンのみ。イモ類・お菓子は食べない(最初の方は糖類0商品は許可していました)。飲み物は水とお茶、0カロリースポーツドリンク。17時以降食べない。決めた筋トレメニューをお風呂の前にやる。週末はジムで走ったり、駅伝の練習で使っていた公園のコースを走ったりする。体重減少のペースが遅くなってきたら燃焼スープダイエット。給食は欠食。

 

またバスケ部現役時代にお世話になっていた、

バスケがとても上手い大人の方々や、男子バスケ部の先輩方が夜に体育館を借りて集まって試合を楽しむ集まり(バスケ初心者の私がここに通って技術を得たといっても過言ではないほどスパルタな場所)にも引き続き通い、汗だくになることでカロリーを消費しました。

 

 

 

上記に示したものをご覧になればわかるように、目に見える結果とスピードを重視するあまり、かなり極端な制限をしてしまっていました。

さすがに親が心配するだけでなく、バスケの集まりでお会いしていた先輩のお母様方にも心配され、クラスの担任には給食を食べていないことを指摘され、しまいには担任から親に心配の電話を入れられてしまいました。

 

それでも、徐々に減る体重は自分ルールを守れているという快感を覚えさせ、心配の声は「二度と挫折するものか」という頑固さの火に油を注ぎました。

 

そこから徐々にエスカレートしていき、一日の殆どをカロリー計算に使い、献立とカロリーをノートに書いて一日の摂取カロリーを900kcal以内にしていました。

さらに糖質を多く含む野菜なども含めた『糖質』はすべて避けるようになり、家族で出かけるなどで17時以降の夕食になれば、太るから食べたくないと言い、そんな私を見た両親と口論になって泣きました。

 

ここで、さすがにおかしいという事で病院への受診を検討したのでした。

 

 

 

 

ここまで色々と書きましたが、一番皆さんに注目して頂きたいのは、文の諸所にあった赤字の部分です。

運動部でガタイの良い体、受験太り、ダイエットの挫折、摂食障害への偏見やインターネットでの情報収集。

以上のことは、思春期によくあるパターンだと思いませんか?

 

 

 

前回の記事でも触れましたが、摂食障害は“落とし穴”のようなものだと思います。みんなが同じような状況下の中、思いもよらず摂食障害の落とし穴に落ちてしまう。誰もが「自分には関係ない」と思ってダイエットに挑戦します。

 

痩せてきれいになりたいと思い、ダイエットに挑戦するも挫折した自分に甘さを感じ、インターネットで情報源の信憑性は後回しでなるべく早く効果の出るダイエット方法を探す。摂食障害は他人事で、都合の悪いことや耳の痛い部分は見てみないふり。

ここまではよくあるパターンです。リバウンドしてしまう人もいれば、これで見事にダイエットに成功し自信を持った状態で高校デビューできる子も当然いるでしょう。

 

 

 

 

では、落とし穴に落ちる人と落ちない人の違いは何なのでしょうか?

 

 

それは、「結果や形あるものにこだわるか否か」が一つの要因だと思います。

私が摂食障害になってしまったのは、上記にも示したように“具体的な自分ルールをこなせていること”や“体重の減少”というわかりやすい結果が出せる自分に依存したからだと思います。

つまり、誰にでもわかる明確な結果が出せないと意味がない、と考えているのです。

 

「体重減少」はだれもが認めざるを得ない“具体的な結果”です。「毎日のメニューをこなせているかどうか」も、他人が見てもわかる“分かりやすい結果”です。変化が分かりにくい“見た目”よりは、数字という分かりやすい結果に安心を得ていました。そうでなければ、自分を認めることができなかったのです。

体重維持も目に見える結果じゃないか、という方もいらっしゃるかとは思いますが、

 

体重減少という変化が起きた(目標体重まで減らす)=達成

 

になっていたので、体重維持では欲求は満たされないどころか、フラットな結果に納得がいかない自分がいました。

 

 

また、「せっかく○○なのに」という思いが強いのも大きな原因といえると思います。

上でも言いましたが、ダイエットを始めた当時の私は、摂食障害を軽視していて、

「痩せた後に増えればいいじゃん」と思っていました。しかしいざ自分が痩せ始めると、やっているうちにそれまでの努力を無駄にしたくない、という気持ちが大きくなっていきました。

 

 

 

思えば、駅伝練習や部活の時もそうでした。

例えば、コースを5周走るメニューがあったとして、3周も走れば「ここまで走ったのだから」とどんなにきつくても走ることはやめたくない、と思います。そこでやめれば、今までの3周はすべて無駄になるし、そんな自分は許せない・許されない、と思ってしまいます。

ここで、「3周も走れたのだからその分は頑張ったよね」と思える方は、落とし穴に落ちる確率が低くなるのではないかと思います。(あくまで憶測ですが)

つまり、達成したことを細かく評価できるか、「達成したものは通過点に過ぎない」と、受け止めずに先をいってしまうか、という違いです。

 

 

上の例をダイエットに置き換えると、

「今ダイエットをやめれば、今まで減らした分がすべて無駄になる」と思う人と

「ここまで達成できた自分、頑張ったんじゃない?!」と褒めてあげられるかどうかです。

 

 

 

 

達成が通過点になることは、悪いことではありません。しかしそれが悪い方向に働いてしまうと、大きなダメージを食らうことになるのだと思います。

『摂食障害は真面目な人がなる』と言われるのは、この“達成した目標は通過点”という思考が一つとしてあるのではないかと思います。

 

 

 

そんな落とし穴にはまりやすいタイプは、必ず摂食障害になるのか?といったらそうでもありません。

他にも沢山違いはあるだろうし、摂食障害は様々な細かな要因が複雑に絡み合うことで起きてしまう心の病気です。

 

 

だからこれは思考自体が問題なのではなく、それに対しての対策ができているか否か、という点であると考えます。

 

その対策として一つ考えたのは、自分を受け止める作業をすることです。

自分を受け止めずに次のステップに進もうとすれば、満足感はいつまでたっても得ることはできません。満足感が無ければ、承認欲求を満たすためにいつまでもそれを追求し続けることになります。

 

だから、目標を達成したら○○をする!といった、分かりやすいゴールとご褒美を決めておく事が必要だと思います。例えば、家族でお祝いをする・服を買う・焼き肉を食べる・スイーツバイキングに行く……など。

 

 

ご褒美をご飯にしたらリバウンドする!と思った方。

そもそも『ダイエット』とは『日常的な食事』という意味です。正しくダイエットを捉えられていれば、ご褒美を食事にして、それを堪能したところで急にリバウンドすることはありません。

 

 

 

 

 

ご褒美は今までの自分を無駄にする行為ではなく、今までの自分を受け止める行為です。

 

 

これからダイエットをしようという方は是非、自分はどんなタイプかを考えてみて下さい。そして、

信憑性のある情報を集め、耳が痛い情報でも蓋をせず、正しくダイエットと向き合って欲しいと思います。