(※途中 大量出血 に関する
グロテスクな表現、描写が強めに入ります。
写真はモザイク入れていますが、
苦手な方は読まないで下さい。)
中国に戻った私は退職届を提出した。
退職予定は翌年2022年2月末だ。
(今回は少しさかのぼって、コロナ直後。
仕事が一番大変だった時の話をしようと思う。)
以前にも書いたが、
私が中国で勤めていた会社は、
日本人経営者で、
日本式の焼肉を
店舗展開している会社だ。
年商は10億円。
従業員数は120人。
儲かってはいたが、
一気に出店し過ぎた為、
失敗店舗も多く、
吹けば飛ぶ様なCF(キャッシュフロー)で
ギリギリ無借金経営をしていた。
はずだった..
コロナ当時、
私は複数店舗を管理するSV職だった。
深セン市で
コロナの影響が始まったのは2020年2月頃。
丁度旧正月の春節で
街が一週間休みになり、
正月ムードが漂うタイミングだった。
武漢で騒がれていたと思ったら、
もう近くで発生したとの情報が入り、
ゼロコロナを掲げた政策に沿って、
正月休みが一週間強制延長となった。
一回目のロックダウンだ。
そのまま全飲食店は
無期限の営業停止命令が下された。
全店舗売上は0。
家賃は待った無し。
一ヶ月遅れで支払う肉や
野菜の仕入代も押し寄せる。
法律上、従業員120人の給料も補填が必要だ。
すぐに幹部が招集され、緊急会議が開かれた。
幹部と言ってもワンマン社長の組織だ。
社長と本部が五人、
現場管理をしている我々責任者が三人。
計九人。
普段のCF会議には参加権限が無かった為、
あまり把握していなかったが、
CFを見て震えた。
既に1億4,000万円の負債となっている。
いくらなんでもおかしい。
蓋を開けると、
コロナが始まる半年も前からCFが悪くなり、
分割に出来る物は分割にし、
共同経営で出店したが
失敗したいくつかの店舗の補填も
先延ばしにし、
同時に新店舗計画を進めていた為、
その各工事業者にも全て未払いだった。
支払い延期の山だった所に
コロナが重なった事が分かった。
確かに売り上げは下がっていたが、
会社全体でマイナスになる程ではなかったはずが、
管理不足で気づいた時には後の祭りだ。
社長は我々にこう告げた。
「赤字店舗はもちろんの事、
管理コストを差し引いてマイナスになるような
薄利店舗も即時閉店。
今すぐ閉店店舗の店長に通達。
明日より取り掛かる事。
売上を生まない本部は解体。全員解雇。
今、店舗管理をしている3人で全てを回す。
一人は厨房管理、商品開発、メニュー作成、
衛生、味管理に関する事全て。
もう一人は教育、ホール管理、
サービスレベルの安定に関する全て。
settはパソコン出来るでしょ?
中の事全てお願い。
引継ぎは一か月。宜しく。
本部事務所も本日付けで解約。
本店の倉庫を兼本部とする。」
と。
流石に二つ返事は出来なかったが時間が許さない。
ひっきりなしに支払い催促の電話が鳴り続ける。
私はその場で社長と交渉に入った。
「①この三人の役職を部長に任命する事
②この三人の給料を1.5倍にする事
社長の次に権限を持つ3人が
昇格昇給無しでは流石に受けれない。
破壊と再構築をするのであれば必要不可欠です。
不可であれば私も退職します。」
と伝えた所。
社長はすぐさま決断した。
「それでいい。すぐ動いてくれ。」と
(勿論、私以外でそれをやれる可能性のある人間は
どこを探しても居ないという事を分かった上、
交渉にあたっている。)
五人分の仕事を引き受けるのだ。
年商10億企業の
◆総務
全店の許可証、実印、契約書整理と管理
その他全ての雑務
◆経理
経費処理、給料計算、
日々の各支払い確認と実行
各FCオーナーとのやりとり
CFの毎日更新とCF予測作成報告
◆人事
社会保険申請と管理、
社員データ更新と管理
◆情報システム
各店舗&本部PL作成
売上、利益、客数、客単価、
ABC分析数値まとめ。
を一人でこなす事となる。
五倍の給料をもらってもおかしくはないが、
会社が傾いている。
払えるギリギリで判断するしかなかった。
これは自分に対する挑戦でもあった。
恐らく私の人生で
一番過酷な挑戦となるであろう事は見て取れた。
自分の能力の限界を、
自分の精神の限界を、
自分の体力の限界を、
知っておきたかったのだ。
地獄の様な日々が始まった。
整理整頓からだ。
散らかりまくったルールやPC内のフォルダ。
Aというフォルダの中にAというフォルダがあり、
その中にAというフォルダが平気で置いてある。
何度モニターを投げかけた事か。
各店舗2~3ある大量の銀行口座と、
振込み作業にいちいち必要な
セキュリティUSB。
便宜上各店舗、
法人名義と一般名義両方ある。
法人名義に至っては二重認証が必要で、
USBが二つないと振込めない。
申請用と承認用といった感じだ。
しかも同時に挿してると反応しない。
すぐに二十個程挿せるスイッチハブを買い、
各銀行のパスが0.5秒で入力出来る
特殊マクロを組んだ。
文字通り寝る以外はPCに向かった。
集中したい時は何日でも風呂に入らず、
気を失う様に寝落ちし、
目が覚めたらメールが五十件ほど溜まっている。
その殆どが支払い催促の内容だ。
起きたらすぐに作業再開だ。
食事とコーヒーも全て社員に持ってきてもらった。
手を離す時間が惜しい。
慣れない間は
振込みと残高確認だけで一日が終わってしまった。
それぐらい銀行システムがややこしく、
不親切で分かりにくい頭の悪い作りになっている。
FCオーナーや各業者とは
勿論全て中国語でのやりとりとなる。
私が使える単語は小学生以下のレベルだ。
基本的には飲食店の
現場で使う単語をメインで勉強をしてきた為、
取引先との見積りや決済、
振込みに関しての単語力は皆無だ。
その為いちいち翻訳しながら
返事をしなければならない。
お金の事だ。
当然間違った解釈があってもいけない。
日本だと普通に処理できる内容の事も
何倍も何十倍も時間がかかった。
デイリー、ウィークリー、マンスリー
全てのタスクをこなしながら、
平行して、
一人でも業務を回せる様になる為のルール作りと、
一つでも多く自動化出来る様に、
エクセル関数のフォーマットを作り続け、
契約していたVBAを触れる業者と
何百時間も開発を続けた。
来る日も来る日も....
もう何曜日かも何時かも分からなくなっていた....
そんな日々が三ヶ月程続いたある日、
いつもの様に27時頃退社し、
家に帰ってシャワーを浴び、
ベッドに横になった。
いつもなら二秒程で気を失う所が、
何故か寝れない。
次第に心拍が上がり、
全身が熱を帯びる。
何かがおかしい。
とその瞬間鼻血が出だした。
「一秒でも早く寝たいのに
ついてないな。」
そう思ってティッシュを鼻に詰めた。
が、
五秒程したら音を立てて
鼻からティッシュが落ちた。
ボトッ
「え?」
一瞬何が起きたのか分からなかったが、
ティッシュは全体が深紅に染まっており、
これ以上液体を吸えない状態になっていた。
直後に反対側の鼻の穴からも血が出てきた。
雫ではない。
液体をゆっくり注ぐかのような量が
両方の鼻の穴から出ている。
「ヤバイ 壊れた」
すぐに異変に気付き
携帯を片手にシャワールームに駆け込んだ。
ティッシュが意味をなさないのであれば
垂れ流した方が両手が使えるからだ。
後で出血量を聞かれた時に的確な返答が出来る様、
何枚か写真を撮った。
どんな時でも冷静である事が私の能力の一つだ。
やるべき事は二つのみ。
①助けを呼ぶ(救急車)
②1%でも助かる可能性の高い行動を取る
だ。
自分の使える単語数では救急車を呼べない為、
すぐに社長に電話をかけた。
時間は午前四時過ぎ。
確実に寝ている時間だ。
sett「頼む。出てくれ。」
ガチャッ
社長「どうしたん?こんな夜中に」
助かった。
私は一気に生存率が上がった事を確信した。
sett「鼻血が大量に出て来て止まりません。
すぐに奥さんに救急車を
呼んでもらっていただけませんか。」
(奥さんは日本語が話せる中国人だ)
奥さんに住所と現状を伝え、電話を切った。
鼻血は上を向いてはいけない。
というのは聞いた事があった。
だが量が尋常ではない。
一行に止まる気配はない。
流石に恐ろしくなり、
下を向いたまま鼻の頭を手で強く押さえた。
それが間違いだった。
止血のつもりだったが、
出血箇所はもっと奥だったらしい。
鼻に逃げれなくなった血は目から溢れ出てきた。
「しまった。安易な判断をした。」
すぐに手を放し、
鼻から血を抜く様に軌道を戻し、
応急処置を調べた。
【鼻血 大量 止め方】
【出血多量 致死量 何ミリ】
【出血多量 応急処置】
だが目は血で霞んでしまい、
携帯の文字が見えにくい。
血管が直接繋がっている額を冷やすと
鼻血が止まりやすい。
という記事を見つけ、すぐさま
冷凍庫に常備している保冷剤を
額にあて、タオルで縛った。
私の体重だと致死量出血は1.6Lとちょっと。
出血ショックで意識障害が出るのが約1L。
救急隊員を祈る様に待ちながら
ペットボトルに血を溜め、量った。
リミットは500mlが二本。
出血多量が死に繋がる事は当然分かっていた為、
最初の内は無理矢理口の方に軌道を変えて
定期的に血を飲んでいた。
だが調べていると、
血液を飲むと喉の炎症を起こす。
血液を飲んでも直接血液にはならない。
減った水分の方が良くないから水分を取る事。
といった事が書いてある。
水を出血量×二倍ぐらいのペースで
ゆっくり飲み続けた。
点滴の様なイメージだ。
自分で出来る応急処置はここまでだ。
後は心拍数が上がらない様に
深呼吸し、動作はゆっくりと。
無駄に頭を使ってこれ以上考えない。
玄関を開け、
パスポートを握りしめ、
音が鳴りやすいアルミの物干し棒を手に取り、
そのまま玄関で横になった。
エレベーターが着いた音がしたら、
こちらから音を立てて方角を示す為だ。
血で目が霞んでいるせいか、
少しずつだが意識が
遠くなっていく様な感覚がある。
静かに死を覚悟した。
暗い闇の中で死神と
真正面で対峙したであろう数分。
ここは中国だ。
救急車も迅速ではない可能性の方が
当然高いだろう。
だが幸いな事に
私が住んでいた場所は
市民病院に比較的近い住所だった。
なんと意識が無くなる前に
救急隊員が到着したのだ。
奇跡としか言えなかった。
量れていた出血量は500のペットボトル1本と、
その辺りに垂れ流したのを足して
おおよそ700mlだった。
そこからの事はあまり覚えていない。
気付いた時には病院のベッドの上で
止血処置が終わっていた。
生きててよかった。
生きててよかった。
生きててよかった。
そんな夜を探してる。
生きててよかった。
生きててよかった。
生きててよかった。
そんな夜はどこだ。
フラワーカンパニーズの深夜高速という曲が
繰り返し頭の中をゆっくり流れている。
そうだな、そうえばこの日から。
生きて朝、目覚める事に感謝しているし。
生きていてよかった。
そんな夜を、今でもずっと探している。
その後、まともに営業が出来る様になり、
コロナで外食出来なかった反動も助け、
みるみる内に売上が回復した。
治療も一ヶ月程で終わり、
私は部下を一人付けれる様になり、
無理をしない範囲で会社の立て直しを続けた。
努力が報われた。
命を懸けた甲斐があった。
会社が倒産せずCF改善に成功し、
五人の仕事を一人で捌ける仕組みと
システムが完成した。
自分の限界も分かり、
己に課せた試練も乗り越える事が出来た。
返済が終わっていくその速度はすさまじく、
たった二年程で、
1.4億がほぼチャラになるぐらいまで
全社員で戦い、
倒産ギリギリのコロナ禍を乗り越え、
平穏が訪れたのだった。
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これだけで一話いけたぐらいのボリュームになってしまった為、
またまたタイトル変更術を使うます。
中国ラストの話は次回にするとしようかね。
episode7
-完-
次回
青い星の村人〜season0〜
episode8
『プロローグ完成!五年半の中国生活ラスト。ピロリ菌性胃炎に。治療出来ず半年間耐える拷問。』
お楽しみに!
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