最後の単糖、果糖 (fructose) の吸収について。

と、ぶどう糖と果糖の別の吸収経路について。

 

 

果糖はショ糖 (sucrose)に含まれる。

二糖の一種であるショ糖を加水分解するのが、スクラーゼ (sucrase)。

スクラーゼは腸細胞の細胞膜に存在する。

つまり、ショ糖は腸細胞の表面上で、ぶどう糖と果糖に分解される。

そして分解されて出来たぶどう糖と果糖はそのまま、

同じく腸細胞の細胞膜に存在する、輸送体 (transporter) を通って細胞内へと運ばれる。

 

 

ぶどう糖(ガラクトースも)の場合は、この輸送体がSGLT1。

果糖の場合は、GLUT5。

SGLT1がぶどう糖とガラクトースの2種類の違う単糖を運ぶことが出来るのに対し、

GLUT5は果糖専用。他の単糖を運べない。

 

細胞内から血中への運搬は、ぶどう糖と同じくGLUT2を通って。

 

 

果糖のGLUT5やGLUT2を通っての運搬は、どちらも受動輸送 (passive transport)。

つまりは、エネルギー(ATP)が消耗されない。

つまりは、運搬は、濃度勾配に則って行われる。

つまりは、濃度の高い方から、低い方へと流れていく。

 

 

通常時、血中にはほとんど果糖は存在しない。

それは、肝臓が取り込み、変換して、保存してしまうから。

 

だから、何かを食べると、

腸内の果糖濃度が上がり、果糖は腸内から腸細胞内へGLUT5を通って運搬される。

すると、腸細胞内の濃度が上がり、今度は、GLUT2を経由して腸細胞内から血中へと更に運ばれる。

そこから、肝臓に運ばれ、また保管される。

そして、果糖の血中濃度は低く保たれる。

 

 

 

 

ぶどう糖にも果糖にも、もう一つ別の吸収経路がある。

 

それが、GLUT2を通り細胞内に入り、GLUT2を通って細胞外の血中へ運ばれる経路。

通常時は、GLUT2は基底の細胞膜にしか存在しない。

つまり、腸内側とは反対側の細胞膜にしか存在しない。

 

だけど、炭水化物の多い食事を摂ると、

基底の細胞膜に存在していたGLUT2ではなく、

元々、細胞内の小胞の中に仕舞われていたGLUT2が、

腸内側の刷子縁(微絨毛)の細胞膜に組み込まれる。

すると、腸内の高濃度のぶどう糖や果糖がGLUT2を通り細胞内に入り、

GLUT2を通り、細胞を出て血中に入る。

 

 

このGLUT2の刷子縁(微絨毛)の細胞膜への移動が起こる流れが以下。

 

ぶどう糖濃度が高くなり、SGLT1の機能が飽和状態になると、

SGLT1が存在する細胞膜、つまり刷子縁(微絨毛)側の細胞膜が脱分極する。

つまり、通常時の電化状態とは逆になってしまう。

すると、電気に反応するカルシウムチャネルが開き、

細胞内にカルシウムが流れ込む。

流入したカルシウムは、細胞内の骨格の形を変え、

GLUT2を収納している小胞を細胞膜へと運ぶ。

(doi.org/10.3390/nu13072474、DOI: 10.1146/annurev.nutr.28.061807.155518)

 

結果、ぶどう糖も果糖もGLUT2を経由した、受動輸送でも細胞内に運ばれる。

細胞内に貯まったぶどう糖、果糖は同じくGLUT2を経由して血中に運ばれる。

 

 

血中のぶどう糖濃度が上がると、膵臓からインスリンが出る。

このインスリンが、刷子縁(微絨毛)側の細胞膜に組み込まれたGLUT2を

また、小胞内に仕舞う合図となる。

 

 

こうして、炭水化物の多い食事から出た単糖類は、最大限に吸収される。