食べ物の中の脂質の大半は中性脂肪のひとつ、トリアシルグリセロール。

という事で、今日はトリアシルグリセロールの消化について。

 

 

トリアシルグリセロールはグリセロールに脂肪酸が3つくっついたもの。

 

トリアシルグリセロール = グリセロール + 3 脂肪酸 

 

グリセロールに2つ脂肪酸がくっついたものは、ジアシルグリセロール、

グリセロールに1つ脂肪酸がくっついたものは、グリセリン脂肪酸エステル。

 

トリアシルグリセロールのままでは大きすぎる為、

トリアシルグリセロールが体内に吸収されるには、

グリセリン脂肪酸エステルと脂肪酸に分解されなければならない。

(たとえ腸細胞内に入ったら、またトリアシルグリセロールに戻るとしても。)

 

 

トリアシルグリセロールを分解する消化酵素は”リパーゼ”。

  1. 口の中 Lingual Lipase
  2. 胃の中 Gastric Lipase
  3. 小腸の中 Pancreatic Lipase

口の中と胃の中のリパーゼは、

トリアシルグリセロールの分解の10-30%しか担わない。

後は全て、小腸の中のリパーゼによる。

 

大人にとって、口と胃からのリパーゼはそこまで重要でないけど、

赤ちゃんにとってはとっても重要。

これはまた今度。

 

炭水化物を消化するアミラーゼは、

主に口からと膵臓から(小腸の中への)分泌。

一方の脂質分解のリパーゼは、口、胃、小腸で分泌される。

 

 

口の中のリパーゼは、下の付け根あたりの表面にある、

フォン・エブネル腺から分泌される。

(アミラーゼとは違う分泌腺。)

 

炭水化物を消化するアミラーゼは胃の酸性の中では機能せず、

口の中で分泌されてから、胃に到達するまで消化を続け、

胃の中の酸に触れると、機能を停止するけど、

脂質を消化する口内リパーゼは逆に、胃の酸性の中で活性化する。

なので、唾液内のリパーゼは口の中ではほぼ働かず、

胃の中に辿り着いてから、働き始める。

 

 

胃から分泌される胃リパーゼは、

胃底部と呼ばれる、胃の上部のちょっと盛り上がった所を構成する、

主細胞 (chief cells) から分泌される。

口内リパーゼと同じく、胃リパーゼも胃の中の酸性でよく機能する。

それでも、口からのリパーゼと胃リパーゼを合せて、

全体の10-30%程度しか、脂質消化に寄与しない。

 

残りの大半は、膵臓で作られ、小腸の十二指腸に分泌される、

膵リパーゼによる。

 

 

脂質の消化にとっての難関は、

食べ物の中の脂質がほぼ中性脂肪であること。

 

中性脂肪の名前の由来は、

酸性でもアルカリ性でもなく、”中性”だということ。

つまり分子全体的に見た時に、そして部分的に見た時も、電荷を帯びていない。

つまり、水分子と引き付け合う事が出来ないので、

水に溶けない。

 

この”脂”としての一番の特徴、水に溶けないという事。

これが”脂”の消化にあたっての難関。

 

体内の液体は全て水ベース。

水に溶けないものは、その中で化学反応出来ない。

何故なら消化酵素がたんぱく質で出来ており、

つまりはたんぱく質である消化酵素は水溶性で、

水溶液の中でしか機能を発揮できないから。

消化酵素無しでは、消化の化学反応も遅々として進まない。

 

なので、脂質消化の欠かせない課題が、水に溶けて乳化する事。

そして、十二指腸内での脂質の乳化に必要なのが胆汁酸(Bile Acid/Bile Salt)。

胆汁酸は肝臓で製造され、胆嚢 (Gallbladder) に貯蔵される。

十二指腸に脂質が運ばれてくると、胆嚢から胆汁酸が十二指腸に分泌される。

この胆汁酸が脂質を乳化して、リパーゼと反応しやすくする。

 

リパーゼがトリアシルグリセロールを消化、分解して出来た、

グリセリン脂肪酸エステルと脂肪酸は、

小腸の吸収上皮細胞の微絨毛より吸収される。