『カラーでよみがえる軍艦島』
(風来堂 2022年)

 端島(通称・軍艦島)は、石炭を掘削するために明治時代に造営された、長崎県沖にある人工の島。炭坑の発展に伴い何度も土地の拡張工事が行われ、昭和初期に現在の細長い戦艦のような姿が出来上がりました。

石炭が世の中の主要な動力源だった時代には、良質な石炭が採掘できた軍艦島の炭坑は3交代制で24時間稼働、まさに不夜城のような活況を呈していました。海上の炭坑のため、労働者とその家族は島に住み込んでおり、最盛期の1960年には、東京ドームの1/3の狭い敷地に何と5,267人が居住していたそうです(人口密度:83,603人/1㎢)。 
 本書はAI技術によってカラー化された当時の写真を多数掲載しながら、1974年に役目を終えた島の歴史を詳しく紹介しています。人間の活力と暮らしの智恵が凝集されたような風景。無人になってすでに50年が経過し、荒廃と風化が益々進んでいるようですが、たとえ廃墟であってもいつか一度は訪れてみたい場所です。