ストラヴィンスキー:「火の鳥」組曲&「春の祭典」


パリ音楽院管弦楽団

指揮:ピエール・モントゥー

録音:1956年、パリ、サル・ワグラム


1956年、RCAの最初期ステレオ録音。往年の良質なオープンリール・テープを使用した復刻盤を製作しているグランドスラムのCD。
定評あるこのレーベルでも音の仕上がりには多少のムラが出るようですが、当盤は音像の克明さで最も感銘を受けたものの一つです。
柔らかく繊細な音色、場の熱気がダイレクトに伝わり、音楽の真っ只中に聴く者を引き込まずにおかない優秀録音です。マスター音源を所有する本家レーベルでも、CD化によって音の近接感が損なわれる例は多々ありますが、当盤は市販のテープを元にしながらも鳥肌が立つほどリアルな感触を保っており、眼前の演奏がスピーカーから流れる再生音であることを忘れてしまうほどです。
もちろん、名指揮者モントゥーと名門楽団が醸し出す音楽の精気が大元の魅力です。管弦楽の勢いは十分だが、大人の落ち着いた構えを常に崩していないのはさすがで、聴後にも清涼な快い空気を残します。

モントゥーを知らない人、ストラヴィンスキーに興味を持てない人も、ぜひこの復刻CDは一度聴いてみて頂きたい。私にとっても特に「春の祭典」は親しみやすい作品ではないですが、たとえ曲の良さが分からなくとも、その生々しい音響を聴いているだけで冷めた大人の耳を虜にしてしまうCDです。
70年前の音源とは思えない素晴らしい音、と書きたいところですが、よく考えると20世紀末から21世紀の録音でこのような生演奏を凌ぐ生々しさで鳴る盤を聴いたことがない。70年前の1950年代だからこそ収録可能だった優れた音響品質、と見るのが正当な評価かも知れません。