仙台市歴史民俗資料館では11/9まで「特別展・昭和の仙台~戦争と平和・人々のくらし~」が開かれています。

常設展のコーナーも大部分が昭和の暮らしに焦点を当てた内容ですが、今回は追加の展示物が色々ありますので、ぜひ足を運ばれてください。


 私は年に数回の頻度でこの資料館を訪れるのですが、いわゆる大正ロマンとか昭和ロマンと呼ばれる当時独特の風俗を見て、単純に「昔は良かった」という憧れの気持ちが湧いてくることは少ないです。確かに上辺の風景を見れば、和洋折衷の建築物は斬新で美しいし、商業施設の風情にもそれぞれに人間らしい温かみが通っている。現代の街並みにもこんな洒落た美感があったら、町歩きがもっと楽しくなるだろうにと思うこともあります。

 しかし昭和の家庭用品や食事、戦時下の締め付けの厳しい生活を見ていると、過去の映像はかなり立体的な、生々しい姿で我々の前に現れてくる。ぼんやりとしたノスタルジーを感じる人々も、いざこの時代の只中に放り出されたとしたら、おそらく何事にも手間暇のいる不自由さに耐え切れなくなるのではないか。生活水準が安定し日常の苦労が少ないという点において、現代は大正昭和よりはるかに良い時代になったと言えるでしょう。


ところが便利なはずの現代に暮らしている人で、自分たちは何と幸せな世界に生きているのだろうという感激や感謝のうちに日を送っている人は甚だ少ない。一度苦労のない環境に身が慣れてしまうと、楽なことまでが一々重労働に思われたり、些細な障害に直面して人生の大事のように思い詰めたりもする。

 この資料館を出るとき、私はいつも、現在享受している幸せは、決して天から降って来たように自然に得られたものではないのだということを痛感します。昔の日本人が苦労の多い生活の中で、懸命に生きて働いて今の便利さの礎を作り上げたのだという事に気付きます。父祖の時代を知り、我々の生活を謙虚に見つめるきっかけを得るだけでも、この資料館を訪ねる意義は十分にあるだろうと思います。