昔からLPレコードの優位性を伝える場合に、CDでは人間の耳で聴き取れない領域の音をカットしているが、LPは聴取不可能な周波数を削らないため音が肉感的に響くのだという風に語られます。これは音が良い理由の一つとして確かに間違いではないと思いますが、言葉の上から見ると、聴き取れない周波数が加わって音質がよくなるというのはやや不可解な説明に感じられます。

しかし、音楽は耳で、すなわち聴力だけに頼ってきくものという我々の常識的な考えを取り去れば、割合素直に納得のできる話ではないかと思います。平素私は耳への過度な負担を避けるためヘッドフォンやイヤフォンは使わないのですが、これは耳の保護のためばかりでなく、音楽体験は全身の肉や骨への刺激と聴覚の世界が一体になって初めて本来の鑑賞たりうるという考えが根底にあるからです。


皮膚科学研究を専門とする人の話では、人間は音楽を聴く時に、耳からの情報に加えて皮膚からも微細な周波数を感じ取っているそうです。そして厚い衣服を着ているよりも薄着でいる時の方がより皮膚の感度が高まるとのこと。

と言っても良い大人がランニングシャツと短パンでコンサート会場へ出向くわけには行きませんが、自宅での鑑賞ならば多少のラフな格好でいるのも許されるでしょう。


私の実体験では、CD、LPを問わず薄着で聴くと音の膜が取れる、像の立体感が増す、演奏の距離感が近くなる、等々のはっきりした効果が認められました。今は夏の真っ盛り、寒さに耐える苦労もないですから一度お試しになられてください。