このたびDeagostiniから『男はつらいよ DVDコレクション』が創刊されました。全48作が隔週で刊行される予定です。
創刊号はもちろん1969年公開の記念すべき第1作『男はつらいよ』(副題はなし)で、初刊のみ590円(税込)というお手頃価格。高画質HDリマスター版、特典映像付きでの発売というのも映画ファンには嬉しいところです。
適度にユーモアがあり、他人の無知や非常識に寛容でさえあれば、寅さんシリーズは老若男女の誰が観ても面白い映画でしょう。一応喜劇的な体裁を取ってはいますが、生ぬるい娯楽作という訳ではなく、いずれも一級の芸術映画の基準で評価されてよい作品です。山田監督以下のスタッフは、よく練られた脚本と丁寧で美しい映像、名優たちの癖のない芝居によって、大変リアリティの高い人情劇を創作し続けました。人気が持続し息長いシリーズとなったのも、世紀を跨ぎ代を越えて語り継がれるのも人間観察に優れた普遍性があっての事だろうと思います。また、並のファンよりも通になってくると、同じ一作を繰り返し観てもその都度別角度からの楽しみを発見できるようになります。
全48作中、これは私の好きな作品の一つ。松竹の人情喜劇の伝統を受け継ぎながらも、日本映画界に新風を吹き込む事となった本作は、さくらさんの結婚をめぐる騒動と、帝釈天の午前様の娘と寅次郎のロマンスを中心にストーリーが進みます。レギュラー出演陣の平均年齢が若くて絵に動的な雰囲気があり、また後年の作品よりも柴又の町や旅先の風景に古きよき昭和の佇まいが残っているのも見どころです。