本日31日の14時を以て年内の営業は終了しました。
今年も数々お世話になりありがとうございました。年内の趣味ブログはこれで最後とさせて頂きます。

技巧的でクリスタルのように冷たい、あるいは真面目すぎるという意見もあるワイセンベルクのドビュッシー・アルバム。名盤というほどの高評価は与えられて来なかった気がしますが、私には冷たいどころかほっとするような温もりを感じるピアノ演奏で、年の瀬の寒い夜、工房でこのCDを幾度も聴きました。録音のせいで弱音が聴き取りにくい点をのぞけば、静寂感のある高雅なひと時を届けてくれる素晴らしい音盤です。


私にとってはドビュッシーのピアノ曲は、ラヴェルのそれよりも心の深いところに影を留める音楽のようです。ラヴェルも感性の冴えた作家で、技法に優れ、かつ何を言いたいのかが何人にも分かりやすい音楽ですが、それをなぜ曲にして残すほどの衝動に駆られたのかという原点において、聊か共鳴しにくいところがあります。ワイセンベルクのピアノは、技巧だけに注目してもそれなりには楽しめますが、ドビュッシーの感覚的な美しさとともに、背後にある一個の人間の存在、感情の微細な動きに気づかせてくれる優れた演奏だと思います。