約半年ぶりにLP鑑賞。
数年前にスピーカーとプレイヤーを変えてから、CDの音は従来とは見違えるほど良くなりました。昔から言われるような「冷たい音」「無機的な音」とは今は思っていませんが、一方レコードでは同じレベルの音が、楽々と、溢れるように前面に出てくる。ディテールが分かりやすく、音場に実在感がある・・まずこの辺りがLPの最大の長所と言っていいでしょう。特にヴァイオリンの音の自然さ、本当らしさにかけては、CDもSACDもLPに敵わない気がします。

人様にレコード・プレイヤーを買って聴けとは言えませんが、時々店に来る若いお客様には、YouTubeのスマホ再生などで音楽鑑賞するのは良くない、という話はします。飲食物と同じで、人は習慣的に多く接しているものに親しみを覚えるところがあるから、粒の粗い音を頭に刷り込んでいると、逆に正統な音を聴いた時に質の高さが分からなくなる。自分で演奏する人だと、平素聴いている粗い音をきっと模倣しようとする。だから好きな曲があるなら、せめてCDを買ってスピーカーの前で姿勢を正して聴くようにした方がいいですよ、と。
楽器の方も同様で、一般的には上ランクの製品ほどその人の感性を高めると言えるのですが、楽器店主が言うと売るための方便と取られかねないので、どうも強弁しにくいところがあります。しかし、オーディオでも楽器でも、早い段階で良いものを規範にしておくのは確かに大切な事でしょう。

1980年頃までは、この世界には生演奏とラジオとアナログ・レコードの音しか実在しなかった。そういう自然に近い音に囲まれて過ごしていた人と現代人では、音楽に対する感覚が変わってくるのは当然かも知れない。同時代の人工的で刺激の強い音に悪影響を受けないためには、これを避けるのも大事ですが、意識的に昔からの生活文化を活用してみるのも益ある事でしょう。