ハチャトゥリアン:バレエ組曲『スパルタクス』より。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:アラム・ハチャトゥリアン
録音:1962年 ウィーン、ゾフィエンザール

二つの組曲「スパルタクス」、「ガイーヌ」の自作自演を収めたCD。ハチャトゥリアンの即興的な閃きに満ちた指揮に応えて、ウィーン・フィルが持てる感性とテクニックを最大限に発揮した名盤です。
デッカの録音は今の水準に照らしても情報量が多く、完璧なアンサンブルから焰々と立ち上る熱気までを洩らさず届けてくれます。とにかく聴いていて嬉しい気分になる。ハチャトゥリアンの曲をこのような緊張感をもって演奏したら、ややもすると殺伐とした非情さが出て来るものですが、逆にいつにも増して、この楽団の強みであった柔らかい音色と香味が生きているのが当盤の魅力でしょう。また、歌劇場経験の豊富なVPOのバレエ音楽における巧緻さがよく分かる例でもあります。想像ですが、東側の芸術家を迎えてのセッションという事で、西の名門ウィーン・フィルとしては特別な意気込みを持って挑んだ仕事だったのかも知れません。
前にもお話しした通り、この録音も1980~90年代の初期CD(キングレコード盤)の方が、音が自然で臨場感があります。後年の24ビットリマスターのCDも持っていますが、音色の個性が抜け落ち、無国籍風な響きに変わっていて私はあまり楽しめない。往時の黄金期のウィーン・フィルに馴染みのない人には気にならない違いかも知れないですが・・。