年の締めくくりにも、新年の幕開けにもふさわしい曲、演奏だと思いますので、最後にこちらをご紹介させて頂きます。

カラヤン/ベルリン・フィルの初来日公演(1957年)のCDから。
ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。
※一部を工房で鳴らしました。⬇️⬇️
この記念すべき来日の時、若いカラヤンとベルリン・フィルによる生気溢れる実演に接して、すすり泣く人が多くいたという証言がありますが、私も当夜のマイスタージンガーとベートーヴェンの5番を聴くたび、その場のただならぬ熱気が伝わってきて目頭が熱くなります。ストイックで品格が高く、音楽するよろこびに溢れ、かつ平然と人を呑み込んでしまうような容積と音圧を持ったワーグナー。トスカニーニにもクレンペラーにも、またワルター、ベームにもこれほど自然な音の隆起と魂の発露を感じさせる録音があるかどうか。カラヤンとベルリン・フィルの仕事が、断じて人気先行型の大衆芸などではなかったことを証する記録と言えるでしょう。
ガット絃を使った弦楽器群が本当に美しい。こんな人肌の温もりの滲んだ管弦楽を聴ける時代は、もう一度やって来るのだろうか。少なくとも反動から来る流行程度では、この水準の芸術は生まれないと思う。
又、内幸町にあった旧NHKホールは73年に落成した今のNHKホールより音響が優れており、このCDでも抜けのよい爽やかなオーケストラの響きが堪能できます。
〇こちらは録音用テープに遺された記録とその時の映像を組み合わせたもの。⬇️
弾き方や棒の振り方を見るだけでも、相当に音楽性の高い演奏であることが想像できます。