(「ペテルブルグへの別れ」より)
エフレム・ジンバリスト(ヴァイオリン)
フランシス・ムーア(ピアノ)
録音1918年
これは2022年発売のCDですが、英ビダルフの素晴らしい復刻技術により、アコースティック録音の小品が生々しい音で蘇っています。
曲はロシア国民楽派の父と言われるグリンカの名作。巨匠ジンバリストのヴァイオリンは息を飲むほど清澄で、旋律に漂う深い憂いを聴き手の心に強く印象付けます。
この人ほど自然で美しい音程感覚を持ったヴァイオリニストは大家の中でもそう何人とはいないと思います。単に正確な音程というのとは違うし、美音という形容は大袈裟に感じられる。音色にも音程にも、音楽への愛惜と深く結び付いた慎ましやかな雰囲気があり、個人的には、同門のエルマン、ハイフェッツ以上に敬意を感じる奏者です。