八朔の雪ーみをつくし料理帖/高田 郁 | クロヤギ頭の読まず買い

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ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)/高田 郁
(2009.5)
¥580
Amazon.co.jp

ブログを更新するだけでもいっぱいいっぱいなのに、いくら流行ろうがmixiまではやらんぞ!と昨年の秋までは思っていたのですが、歌好きのお知り合いに誘われて今はひとつだけ歌関係のコミュに参加しています。


そのコミュのメンバーのおひとりが、日記のスペースでよく詩や小説を書かれる方で、お仕事はよく知りませんが和食の調理がプロ並みにお上手な様子。

しかも、この食材に含まれる成分は身体にこういう働きをするといったこともきっちりご存じで、まるでこの小説に登場する市井の名医・源斉先生のよう。


多分通じるモンがあるんじゃないかなーとイメージしながら、みなさんのブログで見かけた本書を読んでみたのですが…本当にイメージ通りでビックリしました。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


少女の頃水害で腕のよい漆職人だった父と母を亡くし、身分違いの親友の野江の生死も知れず、女将の芳(=ご寮さん)の情けから身を寄せることになった大坂の料亭・天満一兆庵。


やがて店が火事で焼け、暖簾分けした二代目を頼って主人の嘉兵衛と芳とともに江戸に来た澪だが、頼りの佐兵衛は行方知れず。


天満一兆庵の江戸店は今は形もなく、嘉兵衛亡き後、身体と気持ちの弱った芳を助け助けられながら、縁あって神田御台所町の蕎麦屋「つる家」で働くことになった澪。


十八の澪に亡くした娘を重ね、童女のように「お澪坊」と呼ぶ店主の種市をはじめ、身分の貴賎無く病人を診る医師の源斉、同じ長屋に住む大工の伊佐三とおりょう、火事で実の親を亡くした息子の太一、浪人風のつる家の常連客・小松原らに支えられ、やがては腰を痛めた種市に代わり店を切り盛りする澪。


しかし、創意工夫を重ねた料理が評判を呼ぶとともに、名のある料理屋「登龍楼」の嫌がらせが始まる…。


☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆


まるで朝の連続ドラマになりそうな一本気なヒロインの人情連作時代小説。


悪役以外の登場人物はみなホンマにええ人ばかりなんですが、澪を「下がり眉」と呼ぶ素性に謎のある浪人・小松原の存在が"薬味"のような感じで効いています。


薬膳のような澪の料理のお蔭で身体のいくらか回復した芳が、かつての有名料理屋のご寮さんとして商才を発揮するところも小気味よくて好き。


私は関西から出ることがほとんどないのですが、埼玉に嫁いだ友人が帰省した時に「あっちじゃおいしい白味噌が売ってないのよねぇ。」なんていっていたのを思い出しました。


当たり前のようですが万人の感じる「おいしい」はない、その中で庶民の貴重なお金をもらって料理することは難しいですね。


作中に登場する料理の作り方が巻末にあるのも料理好きには嬉しいのでは。