今日は暑かった、都内では今季初の真夏日になったとのこと。
昨日も暑かったが、映画『関心領域』はそんな暑さを感じなくなるほど、衝撃的で重いものでした。
アメリカ、イギリス、ポーランドの合作であり、昨年のカンヌ国際映画祭のグランプリ受賞作品。
ナチの親衛隊員であり、アウシュヴィッツ収容所長であるヘスとその家族は、収容所と塀を隔てた隣で暮らしている。
その家族の日常は豊かで、家はヘスの妻の手により調えられた美しい庭、菜園、温室にプールまであり、やっと手に入れた幸せな生活と言う。
確かに、戦争中なのにこんなに豊かなのかと思う反面、
ユダヤ人から取り上げた服を使用人に与えたり、妻は毛皮や宝飾品を手にして満足そうにしたり。
更に、塀の向こう側からは、昼夜を問わず不穏な物音、叫び声が。
アウシュヴィッツの内部は画面には一切出て来ないが、不協和音のような音響で不気味な感じが増幅される。
ヘスの仕事は、列車で運び込まれる荷物(ユダヤ人)をいかに効率良く処理をするかという任務であり、その手腕を買われて昇進していく。
ヘスの妻は、昇進して転属する夫に対し、やっと手に入れたこの家を離れたくないと主張し、子どもたちと共にアウシュヴィッツ収容所の隣に住み続ける。
収容所の煙突からは絶えず煙がたなびいているのに、臭いは感じないのか、
あの列車の音は気にならないのか。
親衛隊の人々が出入りしているのだから、無論ヘスの仕事を知らないわけではないだろう。
人間として、ここまで無関心を装うことが出来るものなのか、
この妻を演じるザンドラ・ヒュー、
『落下の解剖学』でも熱演していました。
昨年のカンヌ国際映画祭のパルムドール作品とグランプリ作品との両方で主演とは恐るべし。
戦時下の人間の異常さは計り知れないものとは思うが、
無関心を責めることも出来ない。
現在も世界各地で起きている戦闘に
私たちは見て見ぬふりをしているのではないか。
エンドロールが終わり、
明かりがついてからも、しばし席から立ち上がれなかったほど後味悪く、かつ重い作品でした。