月明かりのラブレター第三十一話『今夜は、送らない』 | たいママのきまぐれ日記

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小学2年の息子たいくんのママであり、シングルママのたいママによる、きまぐれ日記です。子育てあり、恋ばなあり。気楽にご覧下さい。

『月明かりのラブレター』

第三十一話 「今日は、送らない」
今夜も、
便箋を一枚取り出した。
ペンを持つ。
書きたいことは、
ちゃんとある。
今日はこんなことがあった。
それから、
こんなことを思った。
そうそう、
これも話したかった。
書き始めれば、
きっといくらでも書ける。
私は最初の一行を書いた。
そして、
二行目。
三行目。
気づけば、
便箋の半分くらいが埋まっていた。
私はそこで、
ペンを置いた。
「……今日は、ここまでにしよう。」
いつもなら、
最後まで書こうとする。
封筒に入れて、
箱にしまう。
でも今夜は、
なぜかそうしたくなかった。
私は書きかけの便箋を眺める。
言いたいことがなくなったわけではない。
むしろ、
まだたくさんある。
でも、
全部を今夜書き終えなくてもいい気がした。
私は便箋を折らず、
そのまま机の上に置いた。
「明日、続きを書こうかな。」
そう呟く。
けれど、
明日になったら、
続きを書きたくなくなるかもしれない。
それでもいい。
今夜の気持ちは、
今夜のまま置いておけばいい。
私は窓を開ける。
夜の空気が、
部屋の中へ静かに入ってくる。
月を見上げる。
「今日は、送らない。」
誰かに言うわけでもなく、
自分に確認するように呟いた。
送らない。
伝えない。
答えを求めない。
ただ、
ここに置いておく。
それだけ。
少し不思議だった。
手紙というものは、
書いたら届けたくなるものだと思っていた。
けれど、
そうでもないらしい。
書くことで、
自分の中にあった気持ちが、
ちゃんと形になった。
それだけで、
今夜は十分だった。
私は机の上の便箋に、
小さな月の絵を描いた。
その下に、
一言だけ。
「また書きたくなったら、続きを書こう。」
そして、
ペンを置いた。
封筒は使わない。
箱にも入れない。
今夜は、
机の上にそのまま置いておく。
明日の朝、
どんな気持ちでこの手紙を見るのか。
それは、
明日の私に任せよう。
私は灯りを落とす。
暗くなった部屋の中で、
月明かりだけが、
書きかけの便箋を照らしている。
まだ終わっていない。
でも、
終わっていなくていい。
言葉には、
書くタイミングもあれば、
待つタイミングもある。
今夜は、
その「待つ」ほうを選んだ。
私はもう一度だけ、
机の上を見る。
「おやすみ。」
小さく呟く。
手紙は、
返事をしない。
ただ静かに、
そこにある。
それでいい。
今夜は、
送らない。
💌 Love Letter Message
「伝えたい気持ちがあるからといって、今すぐ届けなくてもいい。書いた言葉を、自分のそばに置いておく時間も大切です。」