モディ政権6年目、複雑な税制の改革、外資導入、そして、Make a India(インドで作ろう)のスローガンのもと、製造業の誘致が積極的に行われています。

首都デリー郊外にも、何もなかった荒野や農業地帯を開発し、多くの工業団地が出来上がってきました。特にデリーから南西に下っていくハイウェイ沿いには、グルガオン、マネサル、バウル、ニムラナと自動車・二輪産業を中心にした工業団地や新興都市ができてきており、自動車部品や電気製品などの工場が並んでいます。

 

しかし、この一帯の交通機関は、NH(ナショナルハイウェイ)の道路があるだけで、国鉄の線路も私鉄やメトロもありません。ハイウェイという名の国道が全てです。

※  ナショナルハイウェイというと日本のような、歩行者自転車通行禁止の高速道路を思い浮かべるかと思いますが、実際は自動車専用道でもなく、歩行者も自転車も牛も歩いているので、地方国道のバイパスのようなものをイメージしていただくといいと思います。ただし、通行料金は取ります。

 

 

住宅事情

各工業団地の周辺に、人工的な街というか高層アパートが雨後のタケノコのように立っています。高層アパートはそれなりの家賃なので、工場の管理者レベルの人が住んでいます。また、日本人など外資系企業の駐在員も住んでいます。

一方、一般作業員はビレッジ(村)といわれる、長屋のようなところに住んでいたり、会社が一般住宅を借りて社宅にしているところも多いです。また、工業団地ができる前からの集落もあるので、いわゆる実家から通う人もいます。

 

 

 

通勤事情

幹部クラスは、会社でタクシー会社と契約して、毎朝ワゴン車やSUVを手配して何人かを拾っていくというパターンです。写真の白いミニバン(トヨタ・イノーバ)とSUV(マヒンドラ・スコーピオン)は乗り合いの通勤用タクシーによく使われています。

一般社員は、下の写真のように会社が手配したバスが住宅地を回って拾っていくという感じです。

まだまだ所得が低く、一般社員はもちろん、ある程度幹部社員にならないとマイカーを持てないインド、日本のように広大な従業員駐車場があり、みんな車で通ってくるという光景はまだありません。(バイクで通勤というのは多少見られます)

 

 

 

公共交通機関

ハイウェイには、写真のような非冷房・自由席の長距離バスが10分ごとくらいに走っており、これで主要都市間を結んでいます。また、バスと並行して民営の乗り合いタクシーも走っており、写真左の白いSUVも左のバスと同じ方向にいくもので、バスと客を取り合っています。ちなみに、私はグルガオンから50キロほど離れたところに住んでますが、バスの片道運賃40ルピー、乗り合いタクシー50ルピー、日本企業の駐在員が使うタクシーサービスだと3000ルピーくらいです。公共交通機関の安さがわかります。(1ルピーは約1.6円ほどです)

バスは日本のJRや私鉄の代わりといったところでしょうか。そして、ハイウェイ沿いの主要なバス停(主に立体交差で他の主要道路と交差するところ)には、写真のようなオートリクシャーという3輪車がが止まっています。

 シェアオートが沿線の高級アパートの前に止まって乗客を降ろしているところ。

 

オートリクシャー(オート)は2タイプあり、1人(1組)の客のために貸し切りで走るタクシーのようなものと、決まった区間を路線バスのように往復し、途中で乗り降りのある乗り合いオート(シェアオート)に分かれています。シェアオートは急速に開発が進む住宅街や高層アパートと幹線沿いのバス停を結ぶ貴重な足となっています。

逆に言えば、このような立派な住宅やモールができても、公共交通の充実が遅れているとも言えます(路線バス一つ走っていません)

 

上に紹介した場所は、首都デリーから南西へ50から100キロ程度、日本でいえば、東海道線の大船あたりから小田原くらいでしょうか。ちょうど、辻堂や平塚など工業地域も多いので、そのあたりをイメージしていただくといいかと思います。(土地勘のない関東以外の方すいません、他の地域だと私がよくわからなくて、、) 日本であれば、主要幹線である東海道本線があり、藤沢で小田急が合流し、また、途中の横浜までは京浜東北線や京急もあり、渋谷から降りてくる東横線もあり、平塚駅をはじめ沿線には神奈中(神奈川中央交通)のバスがきめ細かく走っています。

 

それが、1本の国道、上野東京ラインの代わりにやってくる非冷房バス、駅(幹線道路のバス停)と住宅街は神奈中や横浜市営バスではなくシェアオート、に変わったと思っていただければいいと思います。

 

インド政府は工業団地の誘致を積極的に行っており、また人口の平均年齢が若く(インド26歳、日本45歳)これから就業機会も住宅もどんどん供給が増えることが予想されます。しかし、人口が増えて、オフィス街や工業団地など就業場所が増え、家族でも住める中流住宅が大量に建設されていても、電車一本作る計画もない(メトロの構想はある)というのは、残念ながら政府機関の中で都市交通を軽視しているように思えます。今なら、空いた土地もいっぱいあるから国鉄の新線くらい作れると思うのですが、本当に見ていて残念に思えます。

 

また、仮に軌道系交通(鉄道など)を作るにしても、現状のメトロの延長では、利便性や将来のことを考えると、力不足に思えます。この辺は次回書いてみたいと思います。