デイサービスで、水曜日のレクリエーションはカラオケです。
歌うメンバーは決まっていて、その中に、お金持ちの気難しいおじいちゃんも一人います。90才で背の高い方で、プライド高く、時々怒鳴って怒ることもあります。でも、歌はお上手で、時々、ハーモニカを上手に吹いてくれたりもします。
その方が、細川たかしさんの「矢切の渡し」を歌い出しました。
このおじいちゃんだけは、カラオケボランティアで来てくださる方が十八番の歌を覚えていてくれて、リクエストしなくても曲を入れてくれます。なんせ、プライド高いおじいちゃんなので、自分から歌いたいなんて言わないので。
本当はめちゃくちゃ歌いたいのにね。
すると、1人のおばあちゃんが歌を聴きながら一緒に口ずさみ出しました。ふだん、このおばあちゃんはカラオケは歌わず、大音量の中、うたた寝していることが多いが、歌は嫌いじゃないらしい。
このおばあちゃん、98歳。耳が遠かったり、多少の認知症があったりするものの、身の回りのことはほとんどできて、歩行も自立。とにかく、明るい。トイレに行く時など「一升瓶おきに行ってくるでな」と言って自分でアハハ〜と豪快に笑ってスタスタ歩いて行く。どことなくコミカル。
そして、耳が遠い分、声が大きい。
気難しいおじいちゃんが怒り出す。
「俺の歌の邪魔をするな!」
マイク通しているので、みんなに響く。フロアに緊張が走る!
が、
98才の耳の遠いおばあちゃんにだけは聴こえない!
ますますおじいちゃんは怒り、「そんなに歌いたければ、お前が歌え!」とマイクをおばあちゃんに押し付け自分は席に戻る。
何が起こっているかわからないおばあちゃんはキョトンとしながらも「わしが歌うんかい⁈キャハ〜」というノリで歌い続ける。
席に戻ったおじいちゃんは相変わらず、「俺の歌をとったんだから、ちゃんと歌え!下手くそ!もっとちゃんと歌わんかぁ〜!」とヤジの応酬!!
このカオス、わかりますか⁈
ふだん、「もう人生終わった。はやく本当に終わりたい…」と力無くつぶやく方達…「欲しいものは何もない。まわりに迷惑かけないようにしたいのに…」と嘆く方達…
まだまだお元気です
職員も慣れたもので、ふだん、歌わないおばあちゃんがマイク持って歌ってるもんですから、後ろから小声で歌ってフォローする職員、おばあちゃんが歌ってる姿を写真におさめる職員。
最後までしっかり歌い納めるおばあちゃん。
歌が終わっても、怒鳴り続けるおじいちゃんに、「98才のおばあちゃんだから許してあげて」と言うと「年なんか関係あるか!」「おじいちゃんはおいくつでしたっけ?」間があり「俺がいくつか知ってのかぁ⁈」「知ってるよ90でしょ」「おお、そうだ」
自分の話になるとちょっと機嫌良くなる。
「俺は女性にはやさしいよ。だから譲ってやったんだ」
「さすがだね〜」とにこやかに終わる。
いやいや、
「譲る⁉️」そんなもんじゃなかったって!