久しぶりにフィクションを書こうと思います。


ちなみに、読みやすいギャグみたいな感じの話です。

(2分読めば、わかります)


自分で書いておきながら、わりと好きな話です。



他責思考な兄妹


ある年の5月26日の朝のことだった。


土屋護26歳は、「今日自○してしまうか、来年の今日まで生きるか」迷っていた。


ちなみに、今日5月26日は

「元カノのサエちゃんの誕生日」で、護はその1ヶ月前に、サエちゃんにフラれたばかりだった。


自分は、とてもねちっこい性分の人間だ。

どうせ、サエちゃんはもう新しい彼氏と付き合っていて、

自分が自○しても、俺のことなんて気にならないだろう。


自分にも非はある。そんなことも、言われなくてもわかっている。

でも、そういう問題でなく、今日という日と3年間の思い出が憎い。


なぜか、狂おしく憎い。自分を消してしまいたい気持ちが止まらない。


全ては自分の問題だ。でも、相手のせいにしたい。

でなきゃ「元カノの誕生日」に自○しようなんて考えるわけがない。


他責思考の極みだ。わかっているけど、辛い。


だからこそ、今日の日に「良からぬ考え」が思い付くのだ。


本当に自分は、ねちっこい性分の人間だ。

けど、人間って、そういうものではないだろうか…と思いながら。

護は、ボーッとしていた。


すると、朝9時20分に連絡があって、

「妹のキミコ」が、10時過ぎに家に来ることになった。


急なことだったのだが、護は断らずにキミコを家にあげた。


すると、キミコは少し深刻な顔をして、護にいった。

「ドーナツをおごるから、家電量販店に同行してほしい。頼むから。

私は今困っているの」という内容の話だった。


彼女にフラれて1ヶ月。

誰も自分を頼ってこない生活をしていたので、護はキミコと一緒に家電量販店へ行くことにした。


家電量販店に着いて、護は思った。


キミコは母から「俺が彼女にフラれたこと」をきいていて、

気分転換のために家電量販店に連れて行こうとしてくれたのかもしれない。


家電量販店は、護の自宅から歩いて10分の場所だった。

この1ヶ月、護は仕事以外の外出をする日が1日もなかった。


サエちゃんのことを恨んだり、自分の行動に後悔しているため、エネルギーも残っていない。


そんな自分にとって、徒歩10分は「ちょうど良い距離」に思えた。

それ以上は歩きたくない。

昔からキミコは変なところで気が利く。


「ああ、家族っていいな」と思った矢先に、キミコは言った。

「私の家さ、テレビがないんだ。新生活を始めて3ヶ月。

浪費してばっかり。私ってダメだよね。

そこで原因を考えてみたんだ。

やっぱり、

我慢はメンタルに良くないよね。それも浪費の原因だと思う。テレビがなくて、困ってる」


護は思った。

「キミコが自分の想定していたよりも、ストレートに高いものを買ってって言っている。

本文が短くて、正直過ぎてビビった」と。


そう思いながらも、護はキミコのためにテレビを買うことにした。


どのみち今、お金を持っていても使いたいことがない。

それに、自分を頼ってくる人が他にいない。


一度くらいキミコに高いものを買ってあげても良いだろうと、護は思った。


会計をするためにレジに向かって歩いているときに、キミコはまた言った

「私、この2ヶ月浪費しながら気付いたんだ。

きっと私、コーヒーメーカーが家にあれば、浪費しないと思う。


お菓子は自分で作れるから。」


護は思った。

さっきのテレビのときよりも、もっと本文が短くて、ためらいがないなと。

そして、「お菓子が作れるのなら、ドーナツは事前に作ってきたらいいのに」と心のなかで、キミコにつっこんでしまった。


けど、何か知らんけど。

護はキミコにコーヒーメーカーをプレゼントすることにした。


理由は、「最悪生きる気力がなくなったら、来月に死のう」と思っていたからだ。


護は1ヶ月、そう思いながら生きてきた。


そうして、護とキミコが一緒にレジに着いたら、キミコが言った。


「乾電池とケーブルを買うの忘れていた」

「もう勝手にしたら?他のも忘れてない?」


そういうわけで、護はキミコに乾電池とケーブルと米びつも、プレゼントすることになった。


「さすがに米びつは自分で買えよ」と、護は思ったのだが、キミコに言わなかった。


30分ほどの出来事だった。

想定外の展開に、護はビビったのだが、気がついたら、キミコと一緒にドーナツ店にいた。


キミコは事前に言ったとおり、護にドーナツをおごった。

まさか、ドーナツで全てをチャラにしようと思っているのだろうか?と護は思った。


生きる気力のなかった護にとって、半分どうでも良いことなのだけど、少し気になっていた。


するとドーナツを食べ始めて5分くらい経ったときに、キミコが言った。


「テレビや色んなものを買ってくれて、ありがとう。

私は今本当に金欠で。でも、今回の買い物の金額を分割払いで、兄さんに返そうと思っているんだ。


私の今年の10月の誕生日から始めて、年1で5000円ずつ。無利子で。それでいいかな?」


「え?返すつもりだったの?」


「うん。一応返すつもり。

そこで、ちょっとした話なんだけど」


「何?」


「私は今年の10月に、分割払いの5000円を払うでしょうか?払わないでしょうか?って賭けをしない?


私が払わない場合は、ドーナツ5個をまた奢るってことで。」


おいおい、全く払う気ないじゃねーか笑と、護は思った。


何だよ、この会話。いつ考えたんだ笑。


しかし、この無駄な会話をしながら護は思った。

「キミコは、俺が元カノの誕生日に自○しようと思っていたことを、やっぱり見抜いていた。

だから、何とか10月まで生かそうとしている。」


…という仮説に、ドーナツ3個だな。


なんてことを、護は思っていた。


「さあ、どうする?この賭けにのる?

場合によっては、10月にドーナツ5個なんだけど。

悪くない話だと思わない?」


返事をする前に、護は間をためながら


「そもそも、元カノとわかれる前からテレビを買わせるつもりでいた」


…に、ドーナツ50個だなと、護は思っていた。


「うーん。じゃあ、10月の結果を待つ感じで。」


「ファイナル・ドーナツ?」


「むっさうざいけど?ファイナル・ドーナツ」


護がそう言うと、キミコは満足そうに笑った。


ドーナツ屋を出て、護とキミコは解散した。


護は家に帰ろうか迷ったけど、徒歩25分の場所にある図書館に行こうかなと思った。


気分が少し変わった。


今年のキミコの誕生日に

「誕生日に自分の欲しいものを買ったので、来年5000円を返す。

無利子だから、来年でも構わないよね?」と言う、キミコの姿が想像できるのだが。


ひとまずドーナツの賭けもあるし、10月まで生きてみようと思った。


そして、久しぶりに今日思い出したが。

「キミコは、自分よりも他責思考」だった。


自分の他責思考を背負えなくて、そのせいで自○を考えたのに。


「自分よりも、ひどい他責思考のキミコ」の他責思考を背負えるって、どういうことなのだろう…?


久しぶりに興味深いテーマができたので、護は図書館に行くことにした。


「それにしても、キミコは変なところで気が利く。

そこは長所だな」と、護は思った。


あの気の効き方を、ほかの分野でも発揮してくれないだろうか。


ドーナツもいいのだが、気の利いたタルトでも作ってくれないだろうか。


あれだけの金額を出したのだから、タルトの1つくらい作ってほしい。


そう思うと、「何のタルトがいいか決めなきゃな」と、護は思った。


10月だと、栗のタルトだろうか。

それとも、栗だと手間がかかるのだろうか?


せっかくだから、図書館で「タルトの本」も読んでみようと思った。


そう思うと、図書館に行く足取りが軽くなってきた。


「ひとまず、10月まで生きて、ドーナツを5個手にいれよう」と、護は考えていた。


タルトのことは本を読みながら、10月までに考えておけばいいかな…

と思っているうちに、護は図書館に到着した。



他責思考兄妹  終



付け加え


「もう、自分はこの世に用はない人間だ」と、本気で思ってしまったときに、

案外「人に頼られると生きる気力を取り戻す」のが人間なのかもしれません。


キミコの「図々しい」は、完全にわざとなのです。

護もそれに、薄々気付いているのです。


護は、「人に頼ること」が苦手な人なのです。


なので、キミコはわざと口実を作って、護に頼ろうとしているのです。


無利子だと言っているのに、わざわざドーナツの賭けをするの笑?って話です。


そんな、「へんちくりんな人間の色々」を書いてみました。