日本の軍事費拡大や、憲法改正など、
国民不在の中、政治家だけで、
重要な法案を採決する、
不穏な世の中。
これこそ、今の日本人が見るべき映画。
『関心領域』
第2次世界大戦下で、
アウシュビッツ強制収容所に隣接する、
一枚の壁を隔てた屋敷で暮らす、
家族の平和な日常生活を描く。
第2次世界大戦下のポーランドの、
オシフィエンチム郊外。
アウシュヴィッツ強制収容所を囲む、
周囲40平方キロメートルは、
ナチス親衛隊から”関心領域”と呼ばれた。
収容所と壁を1枚隔てた屋敷に住む、
ルドルフ・ヘス所長と、
その家族の暮らしは、
美しい庭と食に恵まれた、
平和そのものだった。
ただ一つ、壁の向こう側から聞こえる、
銃声と悲鳴を除けば・・。
広大な敷地には、滑り台つきのプールと、
花畑や野菜を栽培する美しい庭が。
その豪奢な館に住む家族たち。
妻のヘートヴィヒは、
ガーデニングに精を出し、
幼い子供達も可愛く幸せそうな一家。
何ら変哲もない、穏やかな日常、
家族たちの交わす他愛のない語らいを、
淡々と描きながら、
時折、塀の向こう側から聞こえてくる、
銃声や、怒号、叫び声、黒煙などから、
アウシュビッツ収容所の不気味な存在が、
観客にも見え隠れします。
夫、ヘスの仕事が何であるかを、
塀の向こうには、多くのユダヤ人がいて、
毎日、何人も惨殺されている事を、
妻は知っているにも関わらず、
彼女は、何の関心も示さない。
それどころか、ユダヤ人から奪った、
毛皮のコートを、戦利品のように着飾ったり、
この理想的な暮らしを、謳歌している。
ところが、夫が昇進し、
転勤すると知った妻は、
この豊かな環境での生活から、
離れる事を拒み、
「私はここに居たい」と主張する。
いや いや いや・・。
フツーの神経してたら、
毎日列車で送られてくるユダヤ人を、
大量殺戮する、ホロコーストの、
隣に住もうとは思わない!。
不気味な気配や匂いとか、
無関心でいられないでしょう!。
麻痺しちゃってるんですね。
でも、親子が川遊び中に、
大量の灰が流れてきて、
流石にその時は大騒ぎ。
それ以外は、定点カメラの、
ドキュメンタリーを見ている様に、
日常を淡々と、何も説明なく、
凄いものを観せら続けます。
この何も描かないという、無関心の演技は、
一歩間違うとコメディーにも成り兼ねない。
この役者さん達、凄い!。
しかも、一切ホロコーストで、
行われている酷い事には触れず、
ラストの、夥しいユダヤ人犠牲者が残した、
履物や、障害者の松葉杖が衝撃的でした!。
アウシュビッツでは、遺体を処理し易くする為、
一人一人に石鹸を持たせ、シャワーを浴びせると、
嘘をつき、毒ガス室へ閉じ込めて、殺害します。
映画では、徹底して描く事はありませんが、
想像すると、目を背けたくなり、
観ていられない・・。
他人事じゃない、戦時中日本も、
「731部隊」や、「石井機関」で、
同じ様に酷い事している。
日本人として、知らないでは済まされない。
『オッペンハイマー』で描いた、
ヒロシマ、ナガサキの原爆投下で、
そのシーンは無かったものの、
大勢の犠牲者を出し、現在でも、
苦しんでいると言うのに、
無関心ではいられない。
アウシュビッツで起こった事も、
風化させてはいけないし、
無関心でいてはいけない。
若い世代に、伝えなくてはならない。
80年近くも経つと、アメリカや、
イギリスと戦争していた事を、
知らない若者も多いとか・・。
過去から学ばないと、
ロシアとウクライナ、
イスラエルとガザなどの、
紛争を繰り返す事になる。
若い世代こそ、観るべき映画です!。