私が3歳の頃、父親を癌で亡くし、
物心ついた頃から母子家庭でした。
もともと九州の宮崎に、住んで居たそうですが、
父が亡くなってから、母親の姉の住んで居た、
四国・香川県の母子寮に移り住みました。
その母子寮は、瀬戸内海の海沿いにあり、
周りは墓地に囲まれていました。
四国は、戦時中、多くの特攻パイロットを、
出兵した土地だそうで、
立派な慰霊碑が祀ってあり、
公園みたいに広かった記憶があります。
何しろ子供の頃だったので、
墓地を怖いと思ったことはなく、
恰好の遊び場でした。
ところが、ある時を境に、
墓地では、あまり遊ばなくなりました。
その理由は、テレビで、
『ゲゲゲの鬼太郎』が放映されたからです。
地方に住んで居たので、
鬼太郎は再放送で、夕方の5時から放映していて、
娯楽に飢えていた田舎でしたので、
ほとんどの子供達が観ていました。
当時は白黒で、あんなオドロオドロしい絵で、
「ム〜」という気味悪い音で、
ストーリーも怖かった。
1キロ離れた銭湯から寮に帰る際、
どうしても、街灯のない、
その墓地を通らなくてはならないので、
ても怖い思いをしれいました。
でも、怖いもの見たさで、
毎回食い入るようにアニメを見ていました。
何故か、子供たちは鬼太郎が大好き!。
しかも、10年ぐらいのサイクルで、
ブームの波が押し寄せる。
作者の水木しげるさんも、
「鬼太郎は、福の神だ!」
と言うくらい、お金に困った時に、
妖怪ブームがやってきて、
TVアニメが始まると、
グッズが飛ぶように売れる!。
後に実写映画化までされて、
その後の『呪術廻戦』や、『鬼滅の刃』、
『妖怪ウォッチ』などの作品に繋がる『ゲゲゲの鬼太郎』。
子供達にとって、
妖怪は怖いけど憎めない友達、
みたいなものかもしれませんですね。
さて、本作は、水木しげる生誕100周年記念の、
プロジェクトとして製作された、
記念すべき劇場版!。
当時のアニメにはいなかった、
今ではおなじみの、
可愛くなった”猫娘”を加え、
鬼太郎誕生へとつながる物語が
明らかにされる、悲しいストーリー。
あらすじは、
鬼太郎と目玉おやじは、
廃墟と化した哭倉村(なぐらむら)を訪れる。
70年前の昭和31年、
村は日本の政財界を牛耳る
龍賀(りゅうが)一族が支配していた。
東京の血液銀行に努める水木は、
亡くなった当主・時貞の弔いを建前に、
ある秘密の調査のために村に向かう。
一方、鬼太郎の父(名前は無かったなぁ)は、
行方不明に鳴った、妻を探しに村に潜入し、水木と出逢う。
その村では、永きに渡って、
悍ましい禁じられた行為がなされ、
水木は引き返せない地獄に、足を踏み入れる!。
鬼太郎誕生へとつながる物語が
今あきらかにされる!。
同年代の鬼太郎も見ていた世代や、
ご老人、R−15指定だと言うのに、
チビッ子達も観に来ていましたよ。
映像も綺麗で、音楽も良い。
コンプライアンスも、当時の原作に比べ、
かなりオブラートに包んでありますが、
確かに子供に観せるのには抵抗がありますね。
『犬鳴村』や、『八つ墓村』の要素もあり、
人里離れた寒村で、私利私欲のため、
理不尽で身勝手な禁じ手を行うと言う行為は、
血液製剤とか、水俣病とか、現代の日本でも、
今だに延々と続けられているような気がします。
声優陣も豪華で、気合が入ってました!。
まず、故・田の中ゆうさんに代わって、
さすが大御所、野沢さんの”目玉おやじ”は、
味があってグッド!。
『鬼滅の刃』、鬼舞辻無惨の”関俊彦”さん。
鬼太郎の父を、落ち着いた渋い声で演じ、
ミステリアスな感じが良い。
そして、同じ『鬼滅』で、
”無惨”にいじめられていた、
猗窩座(あかざ)を演じた、石田彰さん。
『エヴァンゲリヲン』で、謎に包まれた美少年、
”渚カヲルくん”とは違い、上司である、
”無惨”との鬱憤を晴らす、
突き抜けた壮絶なバトルに興奮!。
そして、日本の声優さんの実力、
技術力の高さに舌を巻いたのが、
令嬢・龍賀沙代を演じた、種崎敦美さん!。
あの、『スパイファミリー』の”アーニャ”や、
『Drストーン』のパワフル乙女”ニッキー”などを演じ、
いくつかのキャラクターを使い分け、どれも別人の声!。
山寺宏一さんも凄いけど、この人の技術は群を抜いてる!。
100周年作品とあって、気合入ってる!。
そして、結末が悲しい!。
実はこの映画、2回観ましたけど、
今思い出しても泣けるほど悲しい・・。
弱いもの、貧しい者だけが虐げられツケを払わされ、
権力を持つものだけが私腹を肥やす。
時代が進んで、21世紀にもなっても、
人の成功を妬み、弱いものを叩き、
顔を隠し、安全な場所からネットで誹謗中して、
相手を容赦なく攻撃し、精神的に追い込む。
人は陰陽師の時代から、全然進化していない!。
鬼太郎は妖怪を倒すのではなく、
妖怪たちの積年の呪縛を解き放ち、魂を浄化している。
まさか、鬼太郎に涙するとは・・。
お馴染みのエンディングの曲も、どこかもの悲しい・・。
でもこの涙は、悲しくない・・・。