今日は「電気記念日」。
1878(明治11)年に、中央電信局が、
東京・銀座木挽町に開設され、
その開局祝賀会が3月25日に、
虎ノ門の工部大学校講堂で、
開催された事を記念して、
日本電気協会が、1927(昭和2)年に、
制定されたそうです。
当時、式場には、50個のアーク灯が点灯され、
初めて日本で灯った電灯だったそうです。
「ごんぎつね」、「花のき村と盗人たち」、
などで知られる童話作家の、
新美南吉の作品に、「おぢいさんのランプ」
というお話があります。
両親も、親戚や兄弟もなく、
天涯孤独なみなしご少年、巳之助(みのすけ)は、
子守りや使いっ走りのお駄賃で、
糊口を凌ぐ生活を強いられていた。
学校へ通う事はおろか、宿もなく、
その日食べてゆくのがやっとの中、
ある日、村をはずれ、
峠の向こう町まで使いに出たところ。
煌煌と、花のように明るい、
ガラスのランプを、目にする。
巳之助の村では、
明かりのない家が多かった。
農家は日が暮れると、まっくらな家の中を、
手でさぐりながら生活していた。
その町の呉服屋さんでは、番頭さんが、
反物を、ランプの光の下にひろげて客に見せ、
穀屋では、小僧さんがランプの下で、
小豆を一粒ずつ品定めし、
また或る家では、女の子が、
ランプの光の下で、白くひかる貝殻で、
おはじき遊びをしていた。
まるで竜宮城の様な、
おとぎ話の世界であった。
ランプの輝きに魅せられた巳之助は、
様々なランプをたくさん吊してある、
ランプ店の前にたどり着く。
巳之助は、全財産の十五銭を握りしめ、
店の主人にランプをひとつ、
売ってくれと所望するが、
十五銭では買えなかった。
だが、巳之助の真剣なようすに動かされた、
ランプ屋の主人は、ランプで商売するなら、
卸値でこいつを売ってやろう。
そのかわり、しっかり商売をやれよ!、
と破格の値段で、巳之助にランプを譲った。
喜んで村に戻った巳之助。
しかし、村の百姓たちは、
巳之助の持ち帰った新しいものを、
うさん臭がり、信用しなかった。
困った巳之助は、いろいろ思案したあげく、
村で一軒きりの雑貨屋の婆さんを説得し、
店の天井にランプを吊ることを承諾させた。
その晩からランプを灯したところ、
日が暮れても村人が珍しがって、
買いに来てくれるし、
釣銭を間違えることがないと大評判!。
村人からも、ランプの注文が殺到し、
巳之助は、儲かる事も嬉しかったが、
それ以上に、今まで暗かった村に、
ランプの灯がともって行くのが嬉しかった。
ところが、ある日、
その村にも電気が通うようになって、
煤で汚れ、手間のかかる石油ランプの、
需要も減り、ランプはもはや、
古い道具になってしまった。
巳之助にとってランプは、
自身を輝かせた人生そのものであったのに・・。
人気のない夜ふけ、大きな池の畔木に生えた木々に、
大小さまざまなランプを五十個吊るし灯をともす。
風のない夜に、昼のように明るい灯がともり、
水面を銀色に映す、荘厳な風景であった。
ランプ、ランプ、なつかしいランプ。
永い年月、磨いてなじんだ、
思い出のランプ。
「わしの、しょうばいのやめ方はこれだ」と、
足もとの石ころを拾い、
ランプ目がけ、力いっぱい投げた。
パリーンと音がして、大きい火がひとつ消えた。
すかさず、また一つ石を拾い投げ、
二番目のランプを破壊し、
三番目のランプを割った時、
巳之助の目が涙で霞み、
もう、眩いランプを狙う事ができなかった・・。
その電灯も、省エネの蛍光灯や、
高輝度のLEDに取って代わり、
2010年、東芝ライテックは、
一般白熱電球の製造を、
中止する方向へ表明したそうです。
裸電球の暖かさも好きなンですけどね。
なンか寂しい・・。
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