改めまして。

皆様,

先日はカフェ・セナクルにお運びくださいまして、誠にありがとうございました。

 

その勢いに乗って、23年間教室の書庫と棚に収まっていたたくさんの書籍と資料を分別し、教室の引越しを行いました。

運び入れるスペースも限られているので、そこを整理するところから始まって、

きっちり細々したものが新しい収納場所に収まるまで約3週間。

怒涛のような日々でしたが、

これまたみなさんのご協力のもとになんとか先週末に片付き、土曜日は流石に動くことができず床に臥していました。

 

でも、昨日の日曜日は春うららのお天気に誘われて

パリから帰国している友人と目黒の東京都庭園美術館に出かける余裕まで出てきました。ホっ。

 

まずは、この建物が建てられた経緯を少し〜

かつて日本の皇室の方々は慣習に則ってフランス・パリ郊外の陸軍士官学校サン・シールに留学しました。

東京都庭園美術館こと旧朝香宮邸を建てた鳩彦王もその一人でした。

ある日、鳩彦王は、運転好きであるものの大変な運転下手だった(らしい)

北白川宮成久王の車に乗って(当時は道路に穴が空いていたり、

田舎の道はだいぶ荒れていたせいもあるようです)大事故に遭います。

この事故で北白川成久王は亡くなりました。

 

また、この時、最初に誘われた東久邇宮稔彦王は、車に同乗したくないあまり、

わざわざロンドン行きの用事を入れてこの事故を間逃れたそうです。

でも、事故に遭ったことが不幸中の幸で、

その看病にパリを訪れた王妃允子様と一緒に1925年のパリ万博を訪れ、その様式美に魅せたれたことが

日仏の美が融合したこの邸宅の着工へと繋がるのです。

 

というわけで今回の展覧会について〜

今回の展覧会は、40年を経過したこの建物の現在と朝香宮様ご家族が暮らした時代の双方の「姿」にスポットを当てた

「素顔」の旧朝香宮邸の建築、装飾ディテールにフォーカスした展覧会です。

キュレーターさんたちが知恵を絞ったのは、この建物に鏤められたキーワードをAからZまでに落とし込んだこと。

(端的で美しい英語のワードに置き換える努力が見て取れます)

そして、それぞれのキーワードを探っていくと、建物のこだわりは勿論、ご家族の人となりがわかるような仕組みになっています。

 

また、各部屋にそのキーワードにまつわる可愛いいイラストのカードが置かれていて、それを集めて

最後にはそれを自分で綴じて一冊のガイドブックにできるという

「参加型」の展覧会にして楽しませてくれました。

鑑賞者として何度も訪れ、取材のためにくまなく観たはずの建物を、

改めてゆっくり眺めると、感じられるのは竣工してお引越しを済まされて、

わずか5ヶ月後になくなった允子様の女性的な趣味が随所に反映されている女性的な邸宅であること。

さすが、アール・デコの時代が女性の時代であるということを改めて感じられました。

 

また今回だけ観せてもらえる絨毯下の寄木細工の素晴らしさ、また、招聘アーティスト須田悦弘の花(よーく目を凝らさないと何気なさすぎて見落とします)や伊藤公象の陶器の襞もアクセントを加えてくれていました。じっくり鑑賞してくださいね。

 

旧朝香宮邸を読み解くA to Z

~2024年5月12日まで

東京都庭園美術館

www.teien-art-museum.ne.jp