今から30年前、青山通りのペットショップ「青山ケンネル」の向かいあたりに

青山ダイナースというおしゃれな場所がありました。

そしてその辺りに、キース・ヘリングのポップショップなるものがあって、

私は卓上時計を購入しました。30年間時計は動き続け、ついこの間、その命を全うしました。

 

というわけで、若い時代の個人的な思い出とも絡み合う

ストリート・アーアーティスト、キース・ヘリング。

当時はまだストリート・アートというのが一般的でなく、

アートはスノッブなものという印象が強かった。

でも、それを創る側と同じ目線に下げたのが

アンディ・ウォーホルでありバスキアでありキース・ヘリングであったのです。

 

彼が10年間の短い活動の中で言いたかったのは

核問題や差別、未来への不安や子どもを希望ある未来へ導くこと。

それを独特の明るくポップで楽しい絵画を介して訴えかけることでした。

それは30年経った今でも解消されていません。

同じ不安を私たちは持ち続けているのです。

 

街中の人々の言葉を聞くと、

みんなまともなことを言っている。

「戦争反対」「世界の違いとともに共存を」「人種や性の壁を乗り越えて」と。

おかしいのは社会のトップクラスの政治家たち。

その人たちがいるおかげで、戦いがあり、いつまで経っても安心がないのではと思ってしまう。

 

平和で楽しい展覧会のお隣では未来に恐怖感を与えて問題定義している展覧会が開催されていたけど。

私はキースの方法が好き。

希望は捨ててはいけない。希望と強さを持って今の問題と闘っていく。そんな寛大な優しさをキースの作品から感じました。

 

キース・ヘリング展〜アートをストリートへ

2月25日まで

森アーツセンター