先週の水曜日からズームで開始したアンスティチュ・フランセ東京アトリエの秋季授業。

 

テーマは、フランス・ルネサンス後期、アンリ4世の時代です。

 

このテーマを思いついたのは、コロナの自粛明けの7月。

自粛が明けても年老いた父に移さないようにと、電車に乗らないし、外食も控えているし、

生徒さんとも直接授業もできずにいた頃の話。

 

これまで収録してきた隅田川の花火をテレビで見ていたら、やたらに涙が溢れてきた。

その時、思ったことが

「人間は起きて寝て、食事をするだけではダメなんだ。

美しいものに触れたり、楽しく会話をしたり、オシャレしたり、感動で心を震わしたり、

そんな日々の潤いがなくなってしまったら生きていく意味がない。

明日から、気をつけながら前に進んでいこう!」と。

 

それからの私は、すでに気持ちはルネサンス!なのです。

 

ルネサンスの言葉の意味は、まさしく再生。

時代は14世紀のイタリア。ヴェネチアから流れてきたペストのおかげで人がバタバタ死んでいく(まさしく、今のよう)。

だからみんな神様に祈るのですが、祈っても祈っても事態は変わらない。

そこでみんなが何したかというと、「こんなにキリスト様に祈ってもダメなら、

人間らしく、紀元前の神様のように人生を謳歌しよう!」と反旗を翻し、古代に救いを求めるようになるのです。

ヨーロッパの古典は常にギリシア・ローマにありましたから。

みんな気分は紀元前の「基本のき」に戻ったのです。

 

ルネサンスの時代は、神の力が弱まり、人生謳歌の気分が戻ってきた。

その中心になったのが、もともと木こりで、森の草花の効能に詳しく、

ペストの薬を作って一代を築き上げたメディチ家なのです。

だから、メディチ家の紋章は薬玉。ちなみに、今、フィレンツエにある薬局サンタ・マリア・ノッベーラは、

その時代と同じレシピでカトリーヌ・ド・メディシスの香水を作っています。

また香水やハーブ以外にも、当時のレシピで消化を助けるリキュールなども製造しています。

そして、その後、銀行家となったメディチ家は文化、芸術、音楽などの芸能のパトロンとなっていくのです。

 

ちなみに、ルネサンスは大航海時代で、スペイン・ポルトガルの貿易船が新大陸やインドからたくさんの宝石がもたらされた時代です。だからジュエリーの水準も上がりました。宝石大好きのフランソワ1世やヘンリー8世だけでなく、男性も女性もたくさんのジュエリーを身につけた。その中でも最も愛されたのが古代ギリシア・ローマ時代に技術が完成し、素晴らしいものが作られたカメオなのです。ルネサンスの王様は、古代のカメオのコレクターでした。

そして、自分の肖像画を時代の(特にミラノに良い彫り師がいました)カメオ職人に作らせるのが常でした。

 

1525年にパヴィアの戦争に敗戦してスペインに幽閉されていたフランソワ1世は、このイタリアのルネサンスに大きく傾倒した王様です。晩年の天才芸術家レオナルド・ダヴィンチや彫金細工師ベンベニュート・チェッリーニを連れてきて、

フランスにルネサンスの花咲かせた王様として知られています。

 

第一回目のテーマの「アンリ4世の周りのアンリ達」は、フランソワ1世の孫や孫婿などのお話し。

みんなカトリーヌ・ド・メディシスに育てられた幼馴染でした。

 

ちなみに、フランソワ1世の姉のマルグリット・ド・ヴァロア(プロテスタント)は、ルネサンスのアーティストのパトロンで、教養に溢れ、自らのも『エプタメロン』という小説を書いています。

ちなみに彼女の1番目の夫でフランソワ1世とともにイタリアに参戦したシャルル4世は、王が幽閉されたという罪で処刑されてしまいます。

そんなことには動じず、シャルル4世のが持っていたほとんどの領地を手にして

ブルボン家当主アントワーヌ・ド・ブルボンとさっさと再婚したマルグリットさん。

さすが人生を謳歌することをモットーにした、

なかなかイカしたルネサンスのマドンナだと思いました。

 

たくさんのアンリがいてわかりにくい部分もあったと思います。

次回の授業は復習を兼ねて王妃マルゴからみたアンリ達についてから入りたいと思います。