長期投資でリスクは縮小しない 補講 その2 | インデックス投資家からの脱却(アンチインデックス)

インデックス投資家からの脱却(アンチインデックス)

インデックス投資について疑問に感じたこと、インデックス投資に代わる投資法を書いていきます。

長期投資でリスクは縮小しないシリーズ 補講の第2回目です。
このシリーズの前回までの記事は以下の3本です。

「マルキールは標準偏差と標準誤差の区別もついていない大馬鹿者」
「最終結論 長期投資でリスクは縮小しない!(縮小すると主張する奴は統計音痴か詐欺師か馬鹿)」
「長期投資でリスクは縮小しない 補講」


さて、前回記事についた読者アクさんのコメントから、ようやく論点が絞れてきました。
・マルキールがリスクとして算出した「平均値の標準偏差」とは一体何を意味するか
ということが論点になりす。

私は
「平均値の標準偏差とは平均値の推定精度を表す標準誤差という統計量であり、リスクを表す標準偏差とは異なる概念の統計量である」
と主張しました。

一方、読者のアクさんは
「平均値の標準偏差の意味をお前は勘違いしている。そんな勘違いしている馬鹿はお前だけだ。」
との主張でした。(主張じゃねーよ、こんなもん)

議論では埒が明かないので、今回私は統計学の専門書から「平均値の標準偏差」の意味を引っ張ってきました。

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1:標準誤差の定義

まずは 「東京大学出版会 統計学入門(基礎統計学) 」の202ページから「平均値の標準偏差」の定義を引用します。

インデックス投資家からの脱却(アンチインデックス)-標準誤差の定義1

この専門書では、
~引用
「X(Xの上に棒でエックスバー)の標準偏差 s/√nを、標本平均の標準誤差 standard errorという。」
~引用終わり~
と定義されています。

いきなり記号が出てきて分かりにくいと思うので少し説明します。
まず、「X(Xの上に棒でエックスバー)」とは、データ(標本)から求めた平均値を表しています。
つぎに「s」ですがこれはデータ(標本)から求めた標準偏差を表しています。
標準偏差をσという記号で表すことも多いのですが、この本のこの項では未知の母標準偏差σと区別するために、
「s」という記号を使用しています。
「n」とはデータの数(標本数)です。
要するに、平均値の標準偏差のことを「標本平均の標準誤差」として定義しているのです。
マルキールが計算していた「平均値のブレ(標準偏差)」とは、まさに「標準誤差」という統計量であることが分かりました。


2:標準誤差の意味
つぎに標準誤差の意味を解説した専門書から引用を行います。
引用文献は サイエンティスト社 「医学研究による実用統計学」の第8章 8.4.1の一部です。


インデックス投資家からの脱却(アンチインデックス)-標準誤差の定義2

前半では「平均値の標準偏差」を「標準誤差」と定義すると書かれております。
また、
~引用~
「平均値の標準偏差は標準誤差と省略されることがよくあり・・・」
~引用終わり~
と書かれているので、私は特に断りが無ければ今まで「標準誤差」とは「平均値の標準偏差」という意味で使用していました。

さらにこの専門書では標準誤差の意味を次のように解説しています。
~引用~
「標準誤差という名前は解釈の指標となる。なぜなら平均値の推定値が未知母平均にどれくらい近いかを何らかの方法で定量化することに関心があるからである-どれくらい大きな誤りをしているか」
~引用終わり~
ちょっと翻訳がおかしいので、私がもう一度日本語を翻訳してみましょう。
「標準誤差という統計量は、平均値の推定値が未知の母平均にどれくらい近いのかを定量化するのに役立つ統計量である」
ということです。
つまり、「標準誤差」とは、データから算出した平均値が、本当の平均値(母平均)からどれぐらい離れているのかを定量的に示す統計量だということです。


3:標準誤差の使い方
これが最後です。
次に引用する文献は
サイエンティスト社 信頼性の統計学-信頼区間および統計ガイドライン」の109ページです。

インデックス投資家からの脱却(アンチインデックス)-標準誤差の使い方

~引用~
「変動あるいは精度に関する何らかの測度なしに平均値について述べるべきではない。個体の変動を示す場合には標準偏差(SD)を、標本平均の精度を示す場合には標準誤差(SE)を用いるべきである。また、いずれを提示しているかを明らかにしなければならない」
~引用終わり~
この本の通り、標準誤差とは「標本平均の精度」を表すときに用いる統計量なのです。
また、平均値を示す時はどちらの統計量を示しているのか明示せよと書いてあります。

ちなみにマルキールの著書では標準偏差なのか標準誤差なのかをグラフタイトル等に明示してあるのですが、
チャールズ・エリスの本のグラフには標準偏差なのか標準誤差なのか何も示されておらず、グラフからは何の解釈もできない、ひどい内容になっています。


以上を踏まえて、マルキールが示しているような、「長期投資でリスクが縮小する」との根拠となっているグラフの解説を行います。
「長期投資でリスク(平均値のぶれ)が縮小する」というグラフは結局、
「長期間の標本を取ったら、平均値の推定精度が良くなった」
という事を述べているのに過ぎないのです。

これは私がこのシリーズのブログ記事で述べた
「さいころを何回も振ると、また、振る回数が大きくなるほどさいころの出た目の平均値は3.5付近で安定する(標準誤差が小さくなる)」
という意味のことです。

結局マルキールが述べている事は
「リスク資産に真の平均値というものが存在するとして、それを推定するために長期間データを取って、平均値を計算したならば、真の平均値の推定精度は良くなった」ということです。
当たり前のことです。
さらにその当たり前のことを以って「リスクが小さくなった」と主張しているのです。
「平均値の推定精度=リスク?馬鹿じゃねーの。高校からやり直せ」
というのが私の正直な感想です。

次回はいつになるか分かりませんが、マルキールの著書を引用し、
「マルキールはインデックスファンドの営業マンである」という結論を導きたいと思います。
また、マルキールの本を読んで「長期投資でリスクが縮小する」を信じている人達は馬鹿だという証拠も示したいと思います。

本記事で挙げた参考書については前回記事 のAmazonリンクを参照してください。