故人の意で忌明けまで

永眠の事実を伏せて欲しいを実行

 

逝去を知った時点で

自分は周囲からいなくなってしまう

知らないほうが知るまで

自分は生きていると思われている

だから・・・と

 

肉体は消えても

人の心の中では生きたい

一日でも長く・・・

 

田舎ですから地方紙に訃報蘭がある

だけど 葬儀告知も終了報告も

「できれば忌明けまで」

「知れずにいさせて」と故人の意

 

生前懇意をいただいた方々もいる

マナー違反かもしれないが

ルール違反ではない

 

まだ生きていると思われる方が

穏やかな死を迎えられる・・と

 

肺水腫になって苦しい状況でも

救急車の要請を拒み

後の

下血症状でも頑なに拒んだ

 

故人の意の強さを通すのが 

残された者の供養なのだろうと 思う

 

 

忌明けまで 苦しかったのは遺族です

 

92 お疲れさまだった おふくろ

 

ペースメーカー植込みは 2004年

乳癌で右乳房摘出は 2008年

癌組織の甲状腺転移・顎下部腫瘍は 2017年

この時から癌は進行していたらしい

小腸腫瘍告知と入院は 2023年

徐々に時間をかけ 癌細胞は肝臓にまで至り

内蔵機能は極端に低下していたら

肺水腫で慢性心不全増悪

ヘモグロビン低下も輸血で安定し

3週間余りで退院

退院後1ケ月は 体調に問題もなく

独りでバスに乗って出掛けてもいた

歳が明け 初下血で入院

ヘモグロビン数値5.4は回復せず

40余日の入院は輸血と絶食の

繰り返し 病院食は僅か数回

面会の度に 空腹を訴えるが

医師からは水以外は慎み 飴も無理の指示

 

入院から4週間

浮腫みと腹水の徴候

「昭和天皇と同じだよ」と言っても笑みはなし

余命1~2週間と医師説明があったが

最後は5日目だった

前日は喉の渇きを訴えたが 会話は普通

面会から10時間の間に急変したことになる

NHK ヒューマンによると

死への進行はBMI値の減で予見されるそうだ

特に 腎臓・肝臓・脾臓の質量低下が著しくなる

そうなると

幹細胞・体細胞は不活発になり機能低下を増進する

 

頭は記憶力も良く 昔のことを昨日のように話す

心臓はペースメーカー矯正稼働補助

なのに 肉体だけが病魔に蝕まれる

さぞや 無念だろう

エンドルフィンの分泌で

死に向かう覚悟を口にする

貪るように飲んでいた水も要らないという

 

 

あの 肺水腫退院後に出歩ける元気はなんだったのか

なんらかの精神的強さだったのだろう

癌に侵されながらポジティブ思考に走った

おふくろに 感謝 感謝に尽きる

 

乳癌発症から10数年

苦痛を表情にださなかった おふくろ

それに気づかず独り暮らしをさせていた

頭はしっかりしていて

認知症 介護保険 無用

でも癌組織は内蔵をも蝕んで・・・

世界一親不孝な息子で スマン

二重の苦しみに耐えさせて済まない 

きちんと謝ります

 

 

病室で ゼイゼイの音と半開きの口

呼びかけに反応はない

この状態で2時間あまり

子や孫が揃うまで

手を握り「頑張れ」 連呼する

 

肩が動き 大きく息を吸い 途切れる

 

さぞ無念だろうと思っていたが

NHKスペシャル ヒューマンによると

この血中酸素低下で

エンドルフィンが大量に分泌しているらしい

エンドルフィンは

神経伝達機能を遮断する脳内麻薬だと知る

機能していない呼吸は 穏やかなんだそうな

 

 

 

90余年の人生で

これ以上 何を「頑張れ」というのか

酷過ぎる

 

「お疲れさま」「安らかに」

というのが正解なのだと

 

おふくろ 92年

いや68年をありがとう

 

いといせいこう氏の言葉

「吐いて生まれて吸って死ぬ」

もっと早くに知りたかった・・・