「 母想う 愛の存在を 掌の中に
ぐしゅりと 葬りさるなり 」
私と母の間には、溝がある。
溝といっても、性格が合わないとか、
その類ではなく、ある事件が
関係しているのだ。
そして、或る愛の存在も。
年数を経て、核心から遠い話を
する術を 身につけ、
ようやく ようやく 溝が少し
埋まってきた。
私も 母の幸せや成功を 心から喜び、
母も 私が短歌作家デビューしたことを
喜んでくれ、電話の向こうで
泣いていた。
そして、母はこう言った。
「あなたは、私の自慢の娘です。」と。
生まれて初めてのことばだった。
だけど、まだ 私の あなたへの愛は、
まっすぐではなく、斜めなんです。
いつ まっすぐになるのかは、
わかりませんから、
気長に 待っていてください。
いつだったか、娘が 私に言いました。
「私ね、ママを選んで生まれてきたのよ」
と。
そうだ、
私も 母を 選んで生まれてきたのです。
「母と呼ぶ あなたのほかに 母はなし」
