「初恋はダイアモンドダストの如くなり」
ありすの初恋は、たしか6ヵ月位の頃
だったと思う。

ボルゾイのフェ○くん。
走る姿は、サラブレッドのような
白い貴公子。
フェ○くんのママは、往年の女優さんで
パパは作曲家だ。
フェ○くん自身のパパママも、
名犬で、フェ○くんは、
チャンピオンになるべく育てられていた。
ある日の朝のお散歩で、
ありすとフェ○くんは、
恋に落ちた。
「フェ○は、ありすちゃんのこと
大好きになったのね。
こんなに 女の子に夢中になる
フェ○を 見るのは、初めて 」
そう、フェ○ママは、言った。

その2人にも、別れの時が
訪れた。
「ごめんね、ありす。」
と言って 私は引っ越しを決めた。
恋は、かけらになり、やがて
粉々になり、蒼く澄んだ空気のなかを
煌めきながら、泳ぎ、
やがて 消えていった。
それは、いくばくかの哀しみと
美しい記憶を 刻んだ。
きっと、ありすが いま
麗しく時を重ねていられるのは、
白い貴公子への初恋の煌めきを
今も 胸の奥に しまっているからだろう。
その後、フェ○くんは、
パパママとともに
ありすに逢いに来てくれたことがある。

ありす、ごめんなさい。
あなたの恋を ママが
ひきさいてしまった。

「あたち、今も フェ○くんが、好き。」

「今晩、夢で
フェ○くんに、逢うわ 」
初恋は、夢のなかで
また 新たに煌めく。
ダイアモンドダストのように。