「 夏の月 アベマリアの 調べかな 」

遠い日の夏、
私は、教会の日曜学校のお姉さん
として、子どもたちと
夏休みに、軽井沢の別荘に
来ていた。
子どもたちは、親御さんからお預かり
している淑女ばかり。
あの夏休みの月も、白く輝いていた。
楽しい楽しいキャンプファイアが
終わり、後片付けを終えたあと、
コーヒーを飲んでいたら、
隣に 日曜学校のお兄さんが
並んで座った。
澄んだ空気の中を、
どこからか、アベマリアが
流れてきた。
「キャンプから 戻ったら、
うちの父に 会ってもらえませんか 」
当時、おつきあいしていた
このお兄さんからの突然の言葉。
某国立大で、水産学を修め、露語も
1年でマスターするくらい真面目だった
お兄さんは、私には 不釣り合い。
「考えさせて…… 」と私は、
返事をした。
その日、7月29日。
別荘に戻ると、英セントポール大聖堂の
ダイアナ妃とチャールズ皇太子の
結婚式の生中継が、テレビから
流れていた。
子どもたちのキラキラした瞳は、
若く美しいプリンセスに
釘付けだった。
「 魂を 縫い込み まとう 白薔薇 」
結婚は ギャンブルよりも
おそろしい((((;゜Д゜)))😨