「パンとスープとネコ日和」 | 物語の庭

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カフェと図書室、わたしの人生。

最近読んだ本。

photo:01


「パンとスープとネコ日和」
群ようこ 著
ハルキ文庫


「かもめ食堂」という映画が昔、流行りましたね。

ナチュラル系の走りという感じで、
けっこう衝撃があって、憧れたなぁラブラブ!

同じ作者によるこの作品は、
主人公のアキコが、母の死をきっかけに、
永年勤めた出版社を辞めて
母がやっていた食堂を自分らしく新装開店するお話。


お母さんの食堂は、いかにも昭和の商店街の食堂で、
常連のおじさんたちがたむろしてお酒を呑むようなお店。

そんなお店が嫌いだったアキコが目指したのは、
パンとスープの2種類のメニューしかないけれど、
素材にこだわったシンプルな修道院の食堂のようなお店。
(かもめ食堂を彷彿とさせますね。)


当然、かつての常連さんたちからは
そっぽを向かれたり、
こんなんじゃダメ!もっとああしろ、こうしろと言われますが、
アキコは折れない。

自分のやりたいことを信じてやるアキコのお店は、
ナチュラル系が好きな若い女性の間で話題になり、
お客さんでいっぱいになります。

普通はそこでめでたしめでたしなのだと思うのですが、

このお話は
そこからのことも書かれた物語。


小さなお店ならではの苦労、
客のほぼ全員が無言で写真を撮る不思議な光景や、(笑)
ネットに批判めいたことを書かれたり、
嫌なことを言われたり。
アキコが感じる複雑な心情は、
個人的にとても、共感して読みました。

そして、そんなアキコにとても悲しい出来事が起こってしまって…!





けっこう淡々とした語り口だけに、
アキコの悲しみが痛く刺さるのですが、
女性が仕事を持ちながら1人で生きていくということが全体的なテーマとしてあるのかなと思いました。


わたしが感じたのは、

「かもめ食堂」が流行って、
ちょっと前のナチュラル系カフェの大流行があって、
同じ作者が、
今、この作品を書いたことは
何か意味があるような気がします。

この本のアキコのように、
本当にやりたいという信念があってお店を始めた人は、
それが流行りだから始めたわけではないですよね。

それがたまたま、流行に合っていて、ブームの波にのまれてしまって、
ファッションの延長のような感じで来るお客が増えて。

そうなると、
一番最初の、本当にやりたかったこと、
信念の部分が、
お客さんにきちんと伝わらなくなってしまうんじゃないか、と。

ネットやメディアに紹介されると、
わっとブームが起きて、
飽きたら去っていく、
そんな一次的な波ではなく、
もっと長い目で、
やりたいことを始めた人の中にある信念を見てくれないかなぁと思うのです。

賛否両論あるかもしれないけれど、
全ての客の要望に合わせるのではなく、
きちんと自分の信念をわかってくれる客だけ来てくれたらいい、
という、
アキコのような姿勢を貫くことは、
小さなお店を続けて行く上では
正解なのかもしれません。


作者の中にこのようなジレンマがあったかどうかは定かではないですが
(きっとあったんではないかと思います)
興味を持たれた方は読んでみてくださいねニコニコ

それでは、また音譜